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回想

「おーい、せんせーい」

「ん・・・」

「せんせーい、おいこら」

「・・・」


 誰かが俺を呼ぶ声がする。だが、俺はそれよりも睡眠を最優先した。それでも声は止むことはなかった。それどころかだんだん大きくなって・・・


「シズク、ダメだよこりゃ。せんせい完全に爆睡しちゃってる」

「・・・そう。なら力づくで起こせばいい」

「え、でもそんなことして大丈夫かなぁ。まぁでもせんせいだし大丈夫か!

 じゃあ行くよせーの・・・」


 突如爆発音が響いたかと思うと俺はベッドから吹き飛ばされ、そのまま部屋の隅の壁にぶち当たった。


「ぐぁっ!!い、っ・・!!」


 声にならない声を上げ、激痛で目を覚ます。


「あー・・・失敗失敗。ごめんね?せんせい」

「リリカ・・・なんて起こし方をしてくれるんだ・・・」


 背中をさすりながらゆっくりと立ち上がる。間もなく、爆発音につられて、兵士たちがやってきた。

 俺はいつものことだと言うと兵士達は間もなく去っていく。

 騒ぎが収まると俺は爆発の元凶であるリリカに近づき、デコピンを喰らわした。


「あいたっ!」

「お前は何回言ったら気が済むんだ。魔法は使うなといっただろう?」

「にゃはは、ごめんね~。新作が出来たからつい試したくなって」


 ついって・・・。

 こいつまるで反省していないな。全く困ったものだ。

 リリカは自分が爆発させた場所をじっとみては何かをつぶやいている。

 出会った当初の暗さはいつのやら、今じゃすっかりお転婆な女の子になってしまった。

 リリカ。俺が魔族の幹部として働き始めてから最初に保護した女の子。聖族と人間のハーフであるという理由から両方から板挟みにあい行き場をなくし、処分されかけていたところを俺が保護した。当初は話しかけられるだけで体を縮みこませて怯えていたリリカ。そんな彼女に、俺は生きる術として武術と剣術、加えて魔術を教えてやった。上達するには時間を要したが、今ではすっかり強くなりもはや俺よりも強いと言っても過言ではない。だが最近のリリカは自分の力を過信しすぎて、他の魔族に喧嘩を売りすぎなのが心配の種だ。リリカ曰く、弱い奴しかいなくてつまらないということらしいのだが。


「ちっ・・・そのまま死んだらよかったのに」

「待て待て、聞こえてるからな?シズク」

「うん。だって聞こえるように言ったから」

「いい根性してるな。ぶん殴ってもいいか」

「シズク。せんせいにそんなこと言ったらだめだよ」

「・・・さーせん」


 全く気持ちのこもってない声で謝るシズク。シズクの毒舌にはもう慣れたが、出会った当初は毒舌というレベルではなかった。何回も殺されかけた思い出は今となってはいい思い出・・・には当然ならないが、今はまだだいぶましになったのでよしとしたい。

 シズクと出会ったのはリリカと出会ってからおよそ半年後だったか。魔族と聖族のハーフのシズクもまたどちらからも受け入れてもらえず、殺し屋として働いていた。で、暗殺の標的が俺になり、失敗した彼女は捉えられて殺されるところを俺が保護した。魔王やほかの魔族幹部たちからは頭がおかしいなどと言われたが。

 確かに、自分を殺そうとしていた人物を傍に置いておくなんていうのは正気の沙汰ではないかもしれない。だが、シズクはまだ完全に悪に染まっていないと判断した俺は自ら教育係を志願した。何回寝首をかかれそうになったのかはわからないが。

 リリカに守ってもらわなければ死んでいたかもしれない。

 っと、こんな昔話に浸っている場合じゃないんだった。


「おい、こんなに朝早く俺を起こして一体どう言うつもりだ?」


 俺が本題に触れると、リリカはおお、そうだったと手を打つ。


「なんか、もう少ししたら魔王と幹部だけで会議があるんだって。せんせいって確か幹部だよね?なら早くいかないとまずいんじゃないかなーって」

「確かじゃなくて普通に幹部な。あと幹部の中でも割と上のほうだからな俺?

序列3位だぞ3位。100人いる中の」

「それでも武力は私より下」




 シズクが本を読みながらそう言った。

 俺は無視して着替えの準備を始める。

 それにしてもこんな朝早くに会議だなんて何かあったのだろうか。俺は胸騒ぎがした。

 

「お、おー・・・やっぱせんせいの体は引き締まっていていいね!かっこいいよ!」

「うん。それだけは同意する」

 

 あ、そういえばこいつらまだいたんだった。

 シズクとリリカを追い出して着替えると、俺は会議が行われているであろう魔王の玉座のもとへ向かう。道中、鍛錬の場所についたので一旦止まった。

 

「これは今日のノルマ分な。まあ多分すぐ終わるだろうが・・・」


 リリカとシズクに鍛錬のメニューを渡す。リリカは嬉しそうに、シズクは気だるそうに受け取った。

 ・・・ほんと、二人の反応の差が面白いよ。


「ところでユキは?」


 二人に尋ねると二人共首を横に振った。


「ユッキーは多分まだ寝てるんじゃないかなー・・・」

「ちょい待ち。私がサーチする」


 シズクはそう言うと、顔を俯かせ、目を閉じる。

 暫くして再び顔を上げた。


「まだ寝ていた。ゲームも、お菓子も散らかしっぱなし。テレビも付けたまんま。恐らく徹夜でゲームしていたんだと思う」

「あいつはまたか・・・。後で起こしに行ってくれ。それと、次夜更かししたらポテチとじゃが○こ1ヶ月禁止と言っておいてくれ」

「はいはーい。じゃあ先生、また後で」


 そうして二人は去っていった。全くユキのやつ・・・あとでお説教だな。

 一番年齢が幼いユキはとにかく我侭だ。

 まあ言ってしまえば子供なんだよな。だけれどもユキの頭の回転の良さは俺も舌を巻くものがある。

 そうこうしているうちに玉座の近くまで来た。入口の兵士に言い、中に入る。既に俺以外はほとんど揃っている状態だった。


「ユウトか。やっと来たな」


 魔王がこちらに来るよう、促したので俺はそれに続く。幹部達からの敵意に満ちた目が突き刺さった。俺は気にすることなく魔王の隣へと腰掛ける。


「あとはイレアが来たら全員か・・・。おい、イレアは何処にいる」

「それが・・・なんども念話を心がけようとしているのですが、全く返事がなくて・・・」


 幹部の一人がそう言うと、皆が一斉にため息をついた。


「イレア様は最近少しハメを外しすぎでは・・・?この間もむしゃくしゃした腹いせに兵士を攻撃したとか」


 イレア。序列1位の最強の女。直接会ったことはほとんどないが、とにかく危ない人だと聞いている。気に入らない奴はすぐに殺されるという噂まであるぐらいだ。それを聞いてリリカは戦ってみたいとか言い出すもんだから抑えるのに大変だった。ユキは大変怯えていたが。

 騒がしくなっていた室内を魔王が手をたたいて黙らせる。


「まあイレアのことは置いておこう。それに、あいつがいたとして、まともに話を聞くとも思えないしな。よし、とりあえず本日の緊急会議をはじめるぞ____」



 





 



 






 

 

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