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俺が眷属になったら何故か弱くなりました。  作者: リザイン
第一章 吸血鬼と婚約者
14/25

出発の時

 次の日。

 気持ちよく目覚めた俺は、まだ負傷している腕に触れてみる。鈍い痛みは継続して続いているものの、悶え苦しむほどではない。ソフィアさんの手当の仕方が良かったのだろう。自分でも驚く程の回復力だった。

 ベッドの横には、俺が魔界にいた時に来ていた服が折りたたまれていた。これもソフィアさんが洗って置いてくれたのだろう。本当に手際がいい。

 自分の服に着替え、部屋から出ると俺は食堂へと向かう。既にレミリー達は座っていた。

 挨拶を交わすと俺は席へと着く。今朝の食事は白パンにベーコンのソテー、シーザーサラダ、そしてコーンスープだ。俺は朝はあまり食べる方ではないが、このぐらいの量なら大丈夫だ。

 ジェームスは朝から肉を山盛り食べていた。見ているだけで胸焼けしそうだ。

 俺はレミリーにいつ出るのかを尋ねた。


「食べたらすぐに出るつもりよ」

「そうか。

 ・・・と言っても何処か行くあてでもあるのか?」


 すると、レミリーは頷いた。


「本当に何処へ行っても良かったんだけどね。でも寝る前にね私、会いたい人がいるのを思い出したの」

「会いたい人?」

「そう。私が小さい頃からずっとお世話になってた女の人よ。今はお店を経営しているって言っていたわ」

「ほう」

「お店を開店した時に、私にも招待状が届いたのだけれど、その時の私はね・・・」

「ああ・・・病気で外へ出ることがほとんど無理だったから行けなかったのか。でも今はもう治ったから行けると」

「そういうことよ」


 事情は大体把握した。まあ、俺自身別に行くあてなどないから何処でもいいのだが・・・。3人さえ見つかれば。

 そしてレミリーは懐から地図を取り出すと、テーブルの上に広げた。

魔界の地図とは全く違うのでよくはわからないが、書き方などは一緒だった。


「大体ここから北へ約30km程離れた大きな都市、エクセラルードっていう街に彼女・・・エレニアが経営しているお店があるの。そこへ向かいましょう」

「了解」


 レミリーは地図を懐へとしまう。続いて、ポケットから2枚の紙を取り出した。

何を書いているのかたずねると、レミリーはこう言った。


「婚約が嫌なので、旅に出るとだけ書いておいたの」

「そうか」


 そうしてレミリーはメイドに手紙を渡した。

 その後朝食を終えた俺達はエントランスへと向かう。

 歩きながら、ソフィアさんは俺に茶色い布の袋を俺に渡してくる。反射的に受け取ると、金属が擦れるような音がした。


「これは・・・?」

「お金です。もし何かあった際にはこれを使ってください」

「いいんですか?これで逃げるかもしれませんよ?」

「その時は探し出して葬るだけです。あ、葬ったらお嬢様も死んでしまうのでした。なので、半殺しで」

「・・・」


 ソフィアさんにだけは逆らわないでおこう・・・。

 続いて俺はジェームスのもとへ向かう。 


「いよいよだな。って言っても昨日決めたばっかなんだが」

「ああ」

「ユウトの探している人、見つかるといいな」

「全くだ」


 ユキ、シズク、リリカ・・・。お前たちは一体今何処で何をしている?

俺が鍛えているはずだからそう簡単に死なないとは思うが・・・。いかんせんリリカは戦闘大好きだしシズクは口悪いしユキは面倒くさがりやだからな。もう何か問題を起こしているような気もするが・・・。


「ところでさ、ユウトの探している人って女か?」

「ああ。3人とも女だな」

「年齢は?」

「年齢?

 んー・・・。3人とも俺よりは下なはずだが、一人はまだ幼い」


 するとジェームスの目の色が変わった。


「その幼い子ってどんな子だ!?」

「え?どんな子か・・・。ぐーたらで寝坊助って感じかな。俺が厳しく言わなかったらすぐにゲームして夜ふかしするぐらいのダメな子だ。

 だが頭はかなりいいぞ」

「ほほう・・・」


 ジェームスは何か考え込むようにして黙ってしまった。

 突然そんなこと聞き出すなんて変だとは思ったが、ソフィアさんの声によってそのことを考えることはなくなった。


「じゃあお嬢様の後に続いて皆さん乗ってください」


 そうしてレミリーが馬車に乗ったあと、俺とジェームスも馬車へ乗り込む。


「あれ?ソフィアさんは乗らないんですか?」

「私は馬に乗って運転しますので」


 馬の騎手でもあるのか・・・。ホント万能だなソフィアさんは。

そうして扉を閉めると間もなく馬車は出発した。

 段々と小さくなっていくレミリーの屋敷を眺めながら、俺達は目的地のエクセラルードへと向かっていく・・・。

 これが、俺達の長い冒険の始まりだった。



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