青年期3
思えば俺は昔から大人たちが嫌いだった。中学野球のころ寄せ集めの野球チームに入っていた天はそこでの生活を楽しめてはいなかった。卑怯で邪悪、そして自己保身的な態度をとる大人たちを見下していた。もとより天は自ら口を開くような人ではなかったので、それは彼の心の中にしか見つかってはいなかった。だか、今こうしてここに再来してしまった。野球の帰り道に自転車をこいでいた天はある一人の男とぶつかりそうになってしまった。しかしそれはスマホを手に下を向いていた酔っ払いが勝手につっこんできただけだったのだが、思いのほか厄介なおっさんで、とうとう警察まで連れて行かれる始末だ。
「全部こいつが悪いんだ!俺をひき殺そうとしやがった!」
おっさんはさっきからずっと繰り返しているが、その様子から判断しても、誰が悪いかは一目瞭然だった。しかしながら当の警察官ときたら
「あのおじさん、どうも引き下がりそうにないから
また明日来てくれないかな?」
絶望した。この世界の正義という名の職業は酔っ払ったおっさん一人倒せない。もはや天に声は聞こえていなかった。天は警察の操り人形と化し、次の日とうとう親まで呼ばれる始末だった。
当然、そのせいで二度と野球でも試合に出る機会を与えてもくれなかったのは徳武先生だ。面倒につきあいたくもないのだろう。まあ、わからなくもない。天は地獄の中にいた。
[○○年 謎の間]
「おいおい、行ってやんねーのか?なんども呼ばれてたんだろ?」
「…なんで俺様が人間なんかの所に行かなきゃなんねーんだよ。めんどくせ。」
「でも、そいつ闇の中にいるようで、光を抱えているよね?」
「確かにそうだな…。おい、その光気にならねーのか?」
「興味ない。」
「けっ…だったらこれはどうだ?あのガキ蒼空の子供らしいぜ?」
「…!どういうことだ?」
「興味持ったみたいじゃねーか。どうせ暇なんだろ?行ってこいや。誤って殺すなよ笑」
「だりぃな。」
そういって一人の男は羽を広げ姿を消した。