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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第一章 白い珍獣と悪魔の樹
3/113

Ep3 PK職になっちまった

 何が悪かったんだろうか

 

 考えなしに斧を投げたこと?

 男が急に振り向いたこと?

 いつもはノーコンなオレの投げ技能が本番はやたら強かったこと?


 とりあえず、オレが投げた石斧は、振り向いた男の顔面に突き刺さった

 弱点というか、場所が場所だけにクリティカル

 レベルも低かったのも相まって、PKをしようとしていた男をオレがPKしてしまった

 しかも、音に気付いた女性プレーヤーは、俺を見てびっくりして逃げていった


 なんだろう、別に感謝の言葉を要求してたわけじゃないが、すっごい凹むな

 一応助けたんだよ、オレは君を

 まぁ、でも仕方がないか


 どーするかな

 とりあえず、男の所持品を回収しながら今後のことを考える

 所持品といっても、金とオレと同じ様なアイテムが少しだけだ

 しょぼいな


 いやいや、そっちじゃなくて

 このままじゃ迂闊に街に入れないな


 このまま出て行ったら、まず正義感溢れるプレイヤーに殺される

 なんとか街にたどり着いても、今度はNPCの兵士に追っかけられる

 いても、店じゃ売買できないからな

 死に戻りしてもいいんだが、黒いままだったら復活地点で襲われかねない

 ホームポイント登録してないからスタートの街の中だし


 死んだら、今のアイテム失っちまうし、金も手に入んない

 しかも、デスペナルティーでスキル効果半減が半日続くからな

 よし、森に篭ろう

 ログアウトしたら、ネットで対策を探せばいいだろ

 あいつには、あとでメールで謝っとくしかないか

 めっちゃキレてるだろうけど、仕方ない


 一応潜伏先にあてもあるし、南に戻るか

 そこまで、思考して動き始める


「……お前は、面白いな、私の力を貸してやろう……」


 っ、何の声だ

 突然、頭の中に響くように女性の声がする

 しかし、周囲を見回しても誰かいるようには見えなかった

 気のせいか?

 まぁ、なんかあればそのうちわかるだろ


 そういえば、上を見て確認したら名前が黒くなっていた

 はぁ

 オレの気分に追い討ちをかけやがって


 


 南に向かいながら、ステータスを開く

 森に篭るなら、スキルもさらに必要だからな

 

 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv5

 2J:生産廃人Lv4

 3J:鬼薬師きやくしLv1(New)


 スキル:採取Lv4、生産入門Lv2、斧術ふじゅつLv4、石工Lv2、鑑定Lv2、解体Lv2、調合Lv1(New)、製薬Lv1(New)


 EXスキル:メディーナ式薬学


 スキルポイント:10



 とりあえず、一回深呼吸だ

 もう一度改めてステータスを確認する

 うん、見間違えじゃないみたいだな


 一体何が起きたんだ

 1Jと2Jのレベルが上がってることはいい、スキルが増えてるのもまぁ許容範囲だ

 が、3Jってなんだ、それとEXスキル


 とりあえずヘルプを開いてみる


 3J:3つめのジョブ


 鬼薬師:よくわからないが、すごい薬が作れるらしい


 EXスキル:よくわからないけど、すごいスキル


 メディーナ式薬学:名前的にメディーナの薬の知識が分かるんじゃないかな


 ヘルプが全く仕事してないな

 さっぱり説明になってないぞ


 まぁでも、ボーナスポイントももらえるみたいだし、スキルも増えたし、いっか

 あとでネットで調べればいいだろ 




 

 一時間ほど再び南下して、さっきまで狩りをしていたとこまで戻ってきた

 もうすぐ、集合時間だなぁ

 一回ログアウトして、メール送っとくか

 

 んっ?

 あれっ?

 ログアウトどうやるんだ

 どうやらβの時と、システムが変更になったっぽいな

 まぁ最悪24時間で強制終了だし、後で謝っておけばいいだろ


 っ、なんだ

 突然、目の前が真っ白になった

 さっきまでいた、森とは変わって、完全な白の空間

 ログインしたときに似ているが、他のプレーヤーの姿は見えな


「プレーヤーの皆さん聞いてください、私はこの世界の地の神アスドール、時間がないので手短に話しますが、あなた達は今ゲームとは違う世界に来ています。その証拠にログアウトできないはずです」


 頭の中に直接響くように声が聞こえる

 これもイベントなのか?


「この世界は、ゲームではありません。皆さんは魂だけですが、我々の世界に来ています。強く生きてください、悪魔たちはあなた達を狙っています。今は私の力で抑えていますが、長くは持たないでしょう。それまでに、悪魔たちに勝てるだけの力を手に入れるのです」


 随分壮大だな

 だが、オレは生産系だから悪魔と戦うことはないだろ

 生産系イベントは来ないのか?


「地の神アスドールは、いつもあなた達のことを見守っています」


 地の神の言葉が終わると、さっきまでいた森に戻っていた

 何だったんだ、今の

 しかし、ログアウトできないのはたち悪くないか、運営

 オレは休みで予定ないから別に困らんけど

 どうせ、限界ギリギリまで遊びつくす予定だったし


 それに、イベントより身を隠す方が先だ




 少し歩くと、森が薄くなってくる

 今までは、びっしりとあった木が、少しまばらになってきた

 そして、目的のものを見つける

 さっきスキルポイントを消費して取得した『識別』を使うと


 ベビービギナートレント

 ランク1


 木の魔物である、ベビービギナートレントである

 βの時は多くのプレーヤーに嫌われたビギナートレントの、子供だ

 高さは5m位で不自然に長い2本の枝が特徴的な木である


 ビギナートレントは、木としてはここら辺じゃあほぼ最高峰の木材なんだが、硬くて武器の消耗が早いのにも関わらず、体力があるため倒すのが面倒くさい

 そして、木を使う道具はそこら辺の木でも十分な上、金属のモノにすぐに移行してしまうため、旨みがほとんどないモンスターだ

 経験値も、低くはないが、それほど高いわけではない

 

 逆に言えば、このトレントの群生地はオレにはもってこいの隠れ場所というわけだ

 武器の修理は自前でできるし、街で買い物ができないオレにとって、加工がしやすい木材は非常にありがたい

 しかも、ただの木材よりもレベルが高い素材のため、加工で入る経験値がおいしい


 それじゃあ、オレの素材になってもらおうか

 

 オレは思いっきり幹に石斧を振り下ろす

 

 ゲシッ

 

 ベビービギナートレントはそこそこ硬いらしく、外の樹皮に切れ込みが入った程度だ 

 上のHPバーを見ても余り減ってはいなかった

 最低ランクの武器だから仕方ない


 ベビービギナートレントも負けじと枝を振りかぶってくる

 しかし、他の魔物の攻撃スピードよりも遥かに遅い上、大振りなので素人のオレでも、難なくかわせる

 まぁ、くらったら相当なダメージは覚悟しないといけないけどな


 何度となく、幹に石斧を打ち付ける

 焦る必要はない

 どうせ、こいつはほとんど移動できないからな

 

 武器の耐久値もまだまだ問題ない

 薬草だって300本位予備がある





 そして、急に枝の動きが止まる

 少し距離をとって、HPバーを見ると、完全にゼロになっていた

 ふぅ、やっと終わったか


 ベビービギナートレントは何度もオレが同じ所を攻撃したため、幹が半分ほどえぐれていた

 一度、石斧を修理して、切り倒す

 抵抗がなくなったベビービギナートレントは難なく切り倒すことができた


 切った木はアイテムボックスに収納した

 かなりの大きさがあったので、入らないとも思っていたのだが、たぶんレベルが上がったことと、3Jがアイテムボックスを拡張したんだな  

 

 同じようにだいぶ日が傾くまで、ベビービギナートレント狩りを続けた





 目の前には7本のベビービギナートレントが転がしてある

 そして、今からこれで家を作ろうと思う


 家というのは、TFOにおいて非常に便利なシステムの一つである

 

 通常ログアウトはフィールドでは、1分ほど全く動けない時間が必要である

 その後、ログインするまで、自分のアバターは消滅する

 

 街や砦などのログアウトポイントでログアウトした場合は、一瞬でログアウト出来る

 強制終了は場所にかかわらず、棒立ち状態でアバターがその場に残り、次にインするまでに襲われた場合はめでたく死に戻り、復活地点で棒立ちになる


 話は戻るが、家というのは、フィールドにログアウトポイントを作ることになる

 そして、家はレベルに応じて、魔物を寄せ付けなくもする

 わかりやすい例で言うと、テントなどが家に相当する


 残念ながら、初期アイテムにテントは入っていない

 なので、木を切って作ることになる

 一度ステータスを開き必要スキルを有効化する



 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv7

 2J:生産廃人Lv4

 3J:鬼薬師きやくしLv1


 スキル:採取Lv5、生産入門Lv2、斧術ふじゅつLv6、石工Lv2、鑑定Lv2、解体Lv2、調合Lv1、製薬Lv1、識別Lv1(New)、木工Lv1(New)、切断Lv1(New)、研磨Lv1(New)


 EXスキル:メディーナ式薬学


 スキルポイント:2



 識別:相手の状態を見ることができる


 木工:木材の扱いにボーナス


 切断:加工中に使用可能

    対象を切断可能、但し素材に対応するスキルとレベルが満たない場合は発動しない


 研磨:加工中に使用可能

    対象を研磨可能、但し素材に対応するスキルとレベルが満たない場合は発動しない



 やっと、切断と研磨が有効化できた

 これで、いろいろ作れる幅が広がる


 リアルだと、木や石の切断や研磨は道具を使ってやるが、こっちでは魔力で道具を使った時と同じ効果が出せる

 スキルポイントはそれぞれ4消費したが、現状街に行けないオレはこれがなかったら生産活動詰んでたからな、早くスキルポイントを貯めて他の加工スキルも開放したいぜ


 さっそく切断と研磨を使って、木材を加工していく

 丸太7本を角材にする頃には、生産廃人のレベルが上がっていた

 なので、全てのポイントを消費して接着を有効化する



 接着:加工中に使用可能

    対象を接着可能、但し素材に対応するスキルとレベルが満たない場合は発動しない



 接着のスキルを利用し、柱とはりを組み上げ、落とした枝と葉を何層にも組み上げて屋根を作る

 接着も他の生産スキルもレベルが低いため耐久度はないが、雨風程度はしのげる家ができた

 全てベビービギナートレント製なので、ベビービギナートレント以下のランクの魔物であれば寄せ付けることなく、安心して作業できるスペースが確保できた


 適当に余った端材と、そこらへんに落ちていた木に火をつける頃にはあたりはすっかり暗くなってきていた

 MPにはまだまだ余裕があるので、ラビットベスの肉を木に刺して焼きながら、昼間残した解体作業を進めていく

 アイテムボックスから出して、ナイフを突き立てるだけなので、肉が焼ける前には全て終了させることができた


 塩も胡椒もないので、あまり味はついていないが、新鮮だからなのか、うまい

 そういや、昼は何にも食べてなかったからな

 

 TFOでは空腹があり、一定間隔で食事を取らないとお腹がすく

 別に我慢しようと思えば、できなくはないが、いいものを作るには空腹状態は集中力にを欠きよろしくないので、近くの店で買った携帯食ばっか食ってた

 

 アイテムボックス内は生肉などの食材を入れると、そのままで保管が可能になるのだが、万能ではない

 乾燥肉など一部の携帯食と言われる食べ物を除き、いわゆる料理の保管はできない

 料理には一定時間力を上げたり、状態異常を防いだりする効果があるらしいが、βでは短すぎて検証できなかった事項だ

 体感できるほどの変化はオレが調べた限りは載っていなかった


 だから、空腹状態をごまかすためだけに、片手でつまめて、アイテムボックスにも保管できる携帯食を食っていた

 だが、実際調理してみて食うのもいいなぁ

 そのうち調理器材でも作ってみるか




 食事が終わった後、今度は研磨で石を削る

 レベルが上がったおかげなのか、魔力はまだ半分以上残ってるのでスキルを多用する


 そして、乳鉢と乳棒を作って、薬草をり潰す

 それを石と木で作った鍋に移し煮たてていく

 焦げ付かないようにかき回しながら、さらに薬草をすりつぶして投入していく

 周囲には青臭い匂いが立ち込めてくる


 さて、ここでいよいよ調合と調薬のスキルが役に立ってくる

 本当はもっと後に取得する予定だったんだが、3Jのおかげで手に入ってラッキーだった


 調合:加工中に使用可能

    物質同士を混ぜ合わせ、特殊効果を発生させることができる

    但し素材に対応するスキルとレベルが満たない場合は発動しない


 調薬:アイテム(薬品)を生成可能になる


 


 だいたい薬草20本分を投入した鍋の中は凄まじくドロドロしている

 そろそろ完成かな

 今まで、茶色いドロドロだったのが、光を帯びて5個のビー玉くらいにまとまっていく



 回復の丸薬10級(薬品)

 品質2 レア度1

 薬草を使って作った丸薬、HPが回復する

 連続使用はできず、一定期間間をおく必要がある



 携帯可能な回復薬である

 薬草を直に擦りつけたり、食ったりするよりも効果が高い

 しかも、薬草4本分を鍋で煮るだけで作れて、非常に経済的な一品だ

 ただし、作るのに時間がかかるのが少し難点といえば難点かな


 ちなみに、水を加えて作ると


 回復の水薬10級(薬品)

 品質2 レア度1

 薬草を使って作った水薬、HPが回復する

 連続使用はできず、一定期間おく必要がある


 分量は薬草4本分で、多すぎても効果は上がらず、少ないと効果がなくなるので、分量を量るのが難しい

 そのかわり、普通の水に入れて攪拌するだけでいいので、作るのは簡単


 また、材料を倍使い、ひたすら練ることで


 回復の軟膏10級(薬品)

 品質2 レア度1

 薬草を使って作った軟膏、HPが持続的に回復する

 患部に直接塗りこむ必要がある


 こいつは、時間あたりの回復量は低いものの、他の回復薬と重複せず、一定時間回復し続ける

 ただ、作るのがメチャメチャ疲れる上、結構大量に素材を使うのにできる量が少ない


 一通り、回復薬を作って試したあと、丸薬を量産する

 軟膏は10級だとほとんど効果がないのと、ソロだと戦いながら塗る機会など限られているので、今は出来ることだけを確認した

 実際めんどい

 水薬は、容器が木で一回一回作るのがだるいので、諦めた

 容器量産できるなら、水薬が一番簡単なんだがな


 一応、スキルなしでも回復薬は作れるが、非常にめんどい

 一回スキル習得と実験のために丸薬を作ってみたが、何時間もかかった上、品質が1とかだったので二度とやろうとは思わない


 とりあえず、今日拾った薬草は残り全て丸薬に変えるか

 そう言うと、ヒロは作業モードになり辺りは薬草をゴリゴリ磨り潰す音が響き、青臭い匂いが漂うのであった 


    


主人公のステータス

 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv7

 2J:生産廃人Lv5

 3J:鬼薬師きやくしLv1(New)


 スキル:採取Lv5、生産入門Lv3、斧術ふじゅつLv6、石工Lv3、鑑定Lv2、解体Lv3(New)、調合Lv2(New)、製薬Lv2、識別Lv1(New)、木工Lv2(New)、切断Lv2(New)、研磨Lv2(New)、接着Lv2(New)


 EXスキル:メディーナ式薬学


 スキルポイント:0



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