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PKになった俺は孤立するしかなかった  作者: 北神悠
第一章 白い珍獣と悪魔の樹
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Ep2 TFOというゲーム

 強烈な光が収まり、視界が元に戻ると、オレは草原に立っていた

 周囲にはまばらにプレーヤーが散らばっている

 ここは、、、見たことがある

 ああ、スタートの街の近くの草原か

 

 なぜオレが知ってたかといえば、βの時は開始時、遠目に見えるスタートの街の中からだったからである

 ここの草原は何度も通った

 一番最初の魔物モンスターのポップ場所でもあり、広く見通しがいいため最初に素材を集めるときはとても役に立った

 

 最初の町の名がスタートと言うのは、運営の手抜き具合を感じるが、設備も道具も十分にあるため文句はない

 スタートの街は北大陸と呼ばれるところの左下、つまり南西の方角に有り、南に突き出た半島の中心にある

 街の東側には大きな湾があり、南は森、西が今オレがいる平原、北には街道があり次の街に向かっている

 次の街はネクストではなく、ミネスという

 何故か手抜きに感じる名前だ


 多くのプレーヤーが大きく戸惑ってる中、俺は脇目もふらず、ひたすら南に疾走している

 ラッキーなことにオレはかなり南の方にいたらしく、すぐに森の入口が見えてきた

 走りながら、メニューを開いて、ステータスを見る



 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv1

 2J:生産廃人Lv1


 スキル:採取Lv1、生産入門Lv1


 スキルポイント:2



 TFOにおいて数値でわかるのは、ジョブレベルとスキルレベルしかない

 筋力値とか敏捷値みたいなものは存在していない

 正確に言うと、プレーヤーは見ることができない

 

 一応、頭上に名前とHPにあたるものが表示される

 自分やパーティメンバーは、自分の視界内に名前、HPの他に特殊行動をするために必要な魔力値を表示させることもできる

 しかし数字は表示されないため、おおよその状態しかわからない


 ジョブレベルが上がると、それに応じてステータスが強化されていく

 走ったり、勉強することでも強化は可能らしい

 βの時は生産ばっかしてたんで、別のプレーヤーに聞いた話だが

 オレ自身は、スキルレベルが上がったからだと思っていた


 そして、ジョブに並んで重要なのがスキル

 スキルはさまざまな方法で取得することができる

 ただ、スキルポイントを使って有効化しないと効果は発揮されない

 スキルを持つことによって、様々な事に補正を受けることができる


 例えば、木刀でも剣術スキルが高レベルなら鉄板も斬れる

 とあいつは言っていた

 物理法則よりも、スキルが優先されるらしい


 オレは2ポイントを使って、スキルを有効化する



 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv1

 2J:生産廃人Lv1


 スキル:採取Lv1、生産入門Lv1、斧術ふじゅつLv1(New)


 スキルポイント:0



 改めて、それぞれのヘルプを見る


 人間:猿から進化した種族、頭がいいが、戦闘力が低い


 採取士:ものを採取する人

     植物に関して強い


 生産廃人:もの造りバカ


 採取:採取行動に関してボーナス

    価値があるもの(採取に該当するもの限定)を発見しやすくなる


 生産入門:あらゆる生産活動にボーナス

      生産物の品質が上昇しやすくなる


 斧術:斧の扱いにボーナス


 あんまり良くわからんが、まぁいいだろう

 だが人間の扱いがそうきたか、βの時は『一般的なこの世界の住人』とかだったのに

 そして、生産廃人、なんていい響きだ、わかってるじゃないか運営


 それじゃあ、いよいよ素材集めに走りますか

 初期支給武器の石斧をしっかり握り締め、森の中に入る




 「ぅうー」


 いきなり魔物か

 目の前には、一匹の兎みたいな動物がいる

 やつの名前はラビットべス

 森に住む最弱の魔物だ

 そこそこすばしっこいが、好戦的で、声をひそめるとかしてこないので


 げしっ

 うきゅー


 蹴りでとりあえず対処して


 バシッ


 ひっくり返ったとこに、斧をぶつければ終了だ

 集団で囲まれでもしない限り、最低レベルでも難なく倒せる

 見た目が可愛いため、一部のプレーヤーには忌避きひされているらしいが


 別にオレは可愛さとかどうでもいいので、そのままアイテムボックスに放り込む

 解体は後でまとめてやったほうが効率がいい


 まだ森の入口なので大した魔物は出てこないが、今日がサービス初日なだけあって薬草とかもいたるところに生えている

 とりあえず、片っ端から引き抜きアイテムボックスのなかに突っ込んでいく

 単品ではほとんど価値がない薬草であるが、売れば金に変えることもできるし、調薬スキルの練習にも役に立つ


 



 ラビットベスを適当に蹴散らし、薬草を乱獲しながらどんどんと森の奥に進んでいく

 マップ表示機能はないが、方角はわかるので、道に迷うことはない

 基本的にスタートの街の南にしか森林地帯はないので、北上すればスタート地点の草原に戻ることができる


 だんだんとラビットベスの出現頻度が増えてきたな

 今倒したのは、3匹一緒に出てきた

 少し時間はかかったが、問題なく倒せた

 3箇所ほど引っ掻かれたが、薬草は死ぬほど拾ってあるので、既にHPはマックスまで回復している

 リアルな雑草の味がして、運営のどうでもいいところに対する力の入れようにイラっとした


 


 

 一時間ほど歩いたところで、川を見つけたので休憩がてらステータスを確認する



 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv3

 2J:生産廃人Lv1


 スキル:採取Lv3、生産入門Lv1、斧術ふじゅつLv2


 スキルポイント:4



 気付いたらレベルが上がっていた

 インフォとかない不親切設計だな


 生産廃人が上昇してないのは生産をしていないからだろう

 戦って1すらレベルが上がらないのか

 なんとなく納得だが、VRMMORPGとしてそれでいいのだろうか

 まぁいいか、どうせオレはそのうち引き込もりだからな


 しかし、残りのスキルポイントをどうするかな

 まずはあれか


 オレはそこら辺の石で、持ってる石斧を研ぐ

 そして再びステータスを開くと、石工が習得できていた

 すぐに有効化する



 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv3

 2J:生産廃人Lv1


 スキル:採取Lv3、生産入門Lv1、斧術ふじゅつLv2、石工Lv1(New)、鑑定Lv1(New)


 スキルポイント:0


  

 このシステムはβの時と一緒だな

 それっぽい行動をとると、スキルが習得できる

 ただし、相性やステータスによって習得スピードに差があるらしい

 石工は基本的なスキルなため、一回で習得できたみたいだ

 ついでに便利スキルである鑑定も合わせて有効化した


 石工せっこう:石を加工することに対して補正がかかる、又石の扱いが上手くなる


 TFOではスキルがなくとも、モノを作ったり、魔物と戦うことも可能ではあるが、縛り以外の何物でもない

 いずれネタプレイとかでやるやつは出そうだが、何のメリットもない


 石工スキルを手に入れたのは、武器の手入れをするためと、当面の武器のためである

 この世界の武器や道具にはそれぞれパラメーターが存在する

 丁度いいので、手にある石斧を鑑定してみる


 石斧(武器)

 切れ味:0.3 破壊力:2.5 耐久力:100 

 品質:4 レア度:1

 一般的な石でできた斧


 とまぁ、こんな感じになる

 因みに、耐久力が0になると完全に壊れて、『○○の残滓ざんし(アイテム)』というものに変化してしまう

 防ぐためには、街で修理に出すか、自分でメンテナンスするしかない

 そこで必要なのが、石工というわけだ


 もちろん、金属なら鍛冶のスキルが必要になるし、設備も用意しないとならない

 その点石は威力は劣るが、そこら辺に落ちてるし、研ぐのも石で済むので簡単だ

 

 MPは消費するものの、全て天然でまかなえるので、金が掛からず経済的だ

 早く自分の工房を立てるためにも、出費は抑えたいからな

 それじゃあ、もういっちょ暴れるか


 



 それから1時間ほど、オレは暴れまくった

 耐久を気にしなくていいので、斧を存分にふるって

 HPも、薬草があるので、そうそう危機に陥ることもない


 森の中では、ラビットベスに加え、いくつかの魔物も出てくる

 例えば、まんま見た目鹿の『フォレストディアー』(角が薬になり、骨は加工しやすい)、幼稚園児くらいの大きさがあるきのこ『ビッグマッシュルーム』(食える)、好戦的な鳥『暴れ雀』(羽が素材として優秀だが、小さい)など様々な魔物が出る


 しかし、最初の街から近い上、まだそんなに奥に入っていないので出てくるのは雑魚ばかり

 ソロでも十分に狩ることができる

 解体は後回しにして、入れられる限りアイテムボックスに入れていく

 レベルは低いものの、アイテム自体ほとんど持っていない状況だったため、まだ収納可能だ

 できる限り集めて、街で売るつもりだからな


 



 周囲を移動して、更に魔物を狩っていく

 そして、いよいよアイテムボックスの限界が来た

 薬草とかも拾っていたのがきつかったのか、アイテムボックスに入れられなくなった


 それじゃあ、休憩がてら解体作業をするか

 再び、川の近くにやってきて、まず武器の整備を行う

 だいぶ傷んできたな

 耐久度は固定値ではないため、例えば持ち手や接続部が劣化してくれば、いくら刃の部分を磨いても耐久値はどんどん減っていってしまう

 

 オレの石斧は持ち手の部分はまだいけそうだか、接続部の紐が少し心もとなくなっている

 とりあえず、紐を森で拾っ木の根っこ交換する

 紐よりは耐久は劣るが、それでも今のよりはいい


 いっそ作り直すか

 ここは川原のためそこそこの大きさの石ならある

 石を割って、斧の形に近いものを木の柄に取り付ける

 原始人みたいな感じだが、石工のスキルもあって、石はある程度思ったように割れたり、削れたりする

 そのおかげか、こんな感じの斧ができた


 石の斧(武器)

 切れ味:0.4 破壊力:2.8 耐久:90

 品質:5 レア度:1

 石で作られた斧。接続部に木の根が使われている


 品質が上がったな

 というよりは、品質:1とか作るのかなり難しいぞ

 なんたって、ギリギリ石斧を作んないといけないからな

 形悪いと『失敗作』になるし、完成品は2か3にはなる

 だから、レベルも環境も悪い状況で作ったオレの石斧でさえ、品質が5もあるんだ


 まぁ仮に運営の嫌がらせで品質1なんか渡そうものなら

 あいつだったら、5分でへし折ってるぞ

 

 さて、魔物はいないな

 解体すると、だいぶ血の匂いがするからな、それで集団に囲まれて死んだらシャレにならん

 アイテムボックスの中と金は全てその場にぶちまけだし

 装備品と携行品だけ持って街に帰ることになるからな


 

 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv4

 2J:生産廃人Lv3


 スキル:採取Lv4、生産入門Lv2、斧術ふじゅつLv4、石工Lv2、鑑定Lv2


 スキルポイント:6


  

 レベルが3つも上がってるな

 さてスキルはどうしたもんかな

 とりあえず解体して、スキルを習得しよう

 

 ラビットベスをアイテムボックスから取り出す

 それを初期から持っている、ナイフで裁く

 結構グロイな

 流石はリアル志向だな

 

 正直食欲がなくなるが、これやらんと解体スキル手に入らんからなぁ

 女性プレイヤーとかって、どうやって手に入れてんだ

 みんなこんな感じにやってんのか

 まぁどうでもいいか


 よしっ、かなり下手くそだがいくつかのパーツに分けることができた

 それじゃあ、改めて解体スキルを有効化するか

 解体スキルは基本スキルなので、懐に優しい必要スキルポイント2のスキルだからな

 

 それじゃあ、解体スキルをガンガン使っていきますか

 アイテムボックスに入っていたラビットベスを数体まとめて外に出し、その一匹に軽くナイフを突き立てる


 『解体』


 ポンっと小気味良い音を立ててラビットベスの死体が消える

 再びアイテムボックスを確認すると


 ラビットベスの肉×1

 ラビットベスの毛皮×1


 というのが増えていた


 解体:生物を解体することができる

    オートとマニュアルがあり、オートの場合は一瞬で終わるが、一部の部位しか取得できない

    取得部位はそのままアイテムボックスへ、それ以外は消滅する

    マニュアルの場合は、手際に補正がかかる

    時間はかかるが、すべての部位が手に入る


 説明はこんな感じだ

 ラビットベスはレアなモンスターではないので、時間を優先してオートを使う

 ラビットべス以外の魔物も同時に解体していく

 

 魔力を結構使うな、すべて解体し終わる前に限界が来た

 戦闘では魔力を消費することもないので、ほぼ限界まで消費できる

 ほっとけばそのうち回復するだろ


 アイテムボックスは、アイテムの数ではなく重量で持てる量が決まるため、解体したおかげでかなり余裕が出来た

 少し腹は減ったが、そろそろ戻らないと、集合時間に間に合わんからな

 オレは北に向かって歩みを進めた


 



 帰り道も、順調に魔物狩りと薬草の採取は進んだ

 たまに武器を修理しつつ、歩いていると前方に人影が見えた

 相手は背を低くして隠れているようだ、手には石のハンマーが握られている


 こっちからは全身丸見えなんだが、何か魔物でも狙っているんだろうか

 相手はオレに気付いてない様なので、迂回しようとしたら、向こうの方に女性プレーヤーが歩いている

 ハンマーを持った男のすぐ近くを無警戒に歩いている

 顔まではよく見えないが、装備を見るに初心者だろ


 あいつ、PKか

 PKプレーヤーキラー、魔物ではなくプレーヤーを狙うプレーヤーのことだ

 TFOにおいてはPKはできるが、収益を得るのは難しい

 アイテムボックスの中身や所持金は周囲に散らばるので、回収は大変、地形悪いとこでは回収すらできないこともあるし、装備と携行品は戦闘中に強奪しない限り奪うのは不可能

 そもそも、死んだ場合のペナルティを知っていれば、大抵は街のギルドにアイテムやお金はほとんど預けているし、βの時は持ってる袋にボスドロップ入れてわざと死んで街まで運ぶとかやってる奴もいた

 

 さらには、PKにはデメリットがあって、名前表示が真っ黒になる

 通常のプレーヤーは白、NPCは青、魔物は赤く名前が頭上にHPバーと共に表示されている

 隠す方法はあるらしいが、完璧には無理らしい

 

 しかも、プレーヤーだけでなくNPCも大半は交流してくれなくなる

 運営のサイトにも、PKはデメリットしかないと書いてあるらしい

 じゃあPK禁止にしろよって話なんだが

 

 一応街や村などは禁止区間になってる

 そうでなきゃ安心して生産活動ができないからな

 生産組の戦闘力の低さ舐めんなよ


 女性プレーヤーは男の近くへどんどん近づいている

 男は、ハンマーを握りじっと射程圏内に入るのを待ち構えている

 顔は向こうを見てるのでわからんが、相当醜悪なツラをしてるに違いない


 オレは争いごとが嫌いなんだけどな

 あいつの病気が感染うつったか

 

 とりあえず見逃せなかったオレは、持っていた石斧を思いっきり振りかぶって男に投げる

 多分当たんないだろうが、牽制にはなるだろうし、女性プレーヤーも気づくだろう

 あまり、斬りかかるとかしたくなかったし


 あーでも、メインウエポン投げたらオレどうやって戦えばいいんだ

 投げたあとに、そんなことを思うが既に後の祭り

 戦闘にならんことだけ祈ろう


 石斧は回転しながら男に向かっていく

 そして、突然何かを感じたのか男が振りかえった 


主人公のステータス


 名前:ヒロ

 種族:人間


 1J:採取士Lv4

 2J:生産廃人Lv3


 スキル:採取Lv4、生産入門Lv2、斧術ふじゅつLV4、石工LV2、鑑定LV2、解体LV2


 スキルポイント:4



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