二夜~可愛い子には旅をさせとけ~
ここに来て三日がたった。最初は馴れない事の連続だったが、なんとか暮らせている。といっても、三日で全ての事が理解できるわけでもなく…
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俺は今、神社の石段を竹箒で掃除しているところだ。
神社に置いてもらっているんだしこのぐらい当たり前だろう。
それにしても長い石段だ。上から下まで掃除し終わるまで時間がかかる。昨日なんて掃除だけで筋肉痛になってしまった程だ。
「やっと半分来たか」
振り返ると眼前に遮るものは何もなく幻想郷を一望できる。階段の両側にある木々が風の通り道を作り階段下から草花のにおいを運ぶ。春先の穏やかな雲の流れに心地よい風がとても心落ち着かせる。
まるでここだけ時間の流れが止まっているかのような感覚さえ覚える。
休憩のため石段に座り込み空を見上げる。青い空に一点の黒点が見えた。
「へぇ~幻想郷にも飛行機ってあるんだ」
勿論ネタだからね?
黒点が次第に大きくなる。こちらに近付いてくる影が…
「あややや?あなた、もしや?」
やっぱりブン屋だったか…
「どうもはじめまして、博麗神社にお世話になっているシキです。」
「ドーモ。シキ=サン。文です
『射命丸 文』っていいますよろしく。お近づきの印にどうぞ」
「ドーモ。文=サン。シキです
これはご丁寧にどうも…」
受け取ったのは勿論
『文久。新聞』今日の見出しはどうやら俺についてらしい。
「良いようには書いてないか…」
「そうね。でも情報不足だったんだからしょうがないのよね」
「で、今日は何用が?霊夢ならお茶してるけど…」
「今日はあなた用があるんです」
「え?俺に?」
嫌な予感がするんだが…
「ええ、シキさん。あなた幻想郷の人達の秘密を知っているとかいないとか…」
(やっぱりか…ブン屋のことだからいつかはくると思っていたがこんなに早いとは…)
「そんなこと誰が言ったの?」
「霊夢さんが」
あんのクソ巫女があああぁぁぁ!!!!!!
「悪いが答えることは出来ないよ」
「そこを何とか!」
「いやだから無理だって…」
確かに答えることは出来る。しかし、ここで答えた場合。完全に死亡フラグになるだろう。この幻想郷で生き残るためには言わない方がいいはずだ、いいやいわない。
「なら、これでどうですか?」
差し出される『焼酎』
「いや、いらないから」
「そうですか…巫女ならこれで一発なのに…」
俺の権利は焼酎以下ですか。霊夢さん
「これでも私は『伝統の幻想ブン屋』ここで引くわけにはいきません!」
いつの間にか文のプロ魂に火をつけてしまったらしい。これだから増すごみは・・・
「教えてもらうまで帰しませんよ」
「え~掃除も終わってないのに…」
帰さないらしいです。というか、こんなに可愛い子から《帰さないよ》的なことを言われると少しテンション上がるな。
「やっぱり答えることは出来ないよ。じゃあこれで…」
そう言ってまた石段掃除に戻ろうとすると…
「ちょっと待ちなさいよ…」
彼女の声はさっきと違いかなり低くなっていた。この声を聞いた瞬間。俺は蛇に睨まれた蛙のような気持ちになった。先ほどとは違い彼女からは殺気を感じたのだ。
「私はあなたにお願いしたんだよ!秘密を教えてくださいと!二度も頼んだ!この『ブン屋の文』に『二度』とも『NO』つぅーんだな!」
「俺は自分の意志でそう言っている…自分で考えている…やめた方がいいです…………秘密を言うなておれには とてもそんな事はできない………」
「てめーはもう………~~~
てめーはもう~~~~」
「やめろなにもしないただの人間だ」
「てめえはもうおしまいだぁあーーーっ!!」
ドボオォ
「やめろっ言ったんだ……俺は ただ自分の権利を守ってるだけで俺には 俺の『権利』がある………」
「カッコつけてるところ悪いんだけど…大丈夫?」
「大丈夫!助かったよ、萃香」
俺が石段の上を見るとちょうど萃香が見えたので、ジェスチャーして助けを求めたわけだ。人間ごときが天狗にかなうわけがない。しかも、こんなところでジョジョネタかましてくるとは…恐ろしい話だ。
「いやはや、今頃の天狗はこんなに積極的なのか…」
「いや、こいつだけだろ…たぶん」
萃香の言葉についツッコミを入れてしまった。
\うぜぇ丸/
といっても、やはり女の子をこんなところに寝かせとくわけにもいかないので、シキは彼女を背負い石段を登りはじめた。
お姫様抱っこのまま石段登るなんて頭がフットーしそうだよおっっ
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「ハッ!!ここは…」
「神社よ」
首を横にむけるとそこには霊夢がいた。先ほどまで突撃取材をしていたはずなのに・・・そして後頭部が痛い。頭をさすりながら起き上る。
「あれっ?私…?」
「シキを襲ったところを萃香にドロップキックで撃退されたのよ」
「確か断られたところでプッツンして…気絶したんだ…」
「シキから聞き出そうとするの止めたら?」
霊夢の言ったことに反応するかのように文の体がビクンと揺れた。霊夢の言葉に少しとげを感じたのだ。
「そう…確かにこのやり方は良くないですね」
「そうよ。そんなことしなくても、あなたの新聞くらい皆見てるわよ。私も便利に使わせてもらってるし」
「ありがとうございます。私何だか目が覚めました」
そう言った彼女の顔はとても生き生きとしたものだった。これを見た霊夢も満足そうな顔をしていた。100%お世辞ではあるがこんなことでまたおかしな噂を立てられたくない霊夢でった。と言うより、霊夢さん最後新聞読まずに使う方向の話しちゃってますよ。
「先ほどは本当にすいませんでした…なんと言ったらよいのやら…」
頭を下げては来るがいまいち信用できない。しかし、誤っていることもあるので無下にできず、とりあえずはフォローにまわることにした。
「いやいや別にそんなかしこまらなくても…」
先ほどの無礼を詫びるとかなんとかで、現在進行形で謝られてるわけだ。そこまで深々と頭を下げられると逆に申し訳なくなってくる。正直裏があるようにも感じちゃうんだよな。
「なんだなんだ?なんかやらかしたのか?」
今喋ったのは夕食を食べにやって来た、普通の魔法使いこと
『霧雨 魔理沙』だ。
「なにもないよ、文ももういいよ。済んだことだし。俺はあんまり気にして無いしさ」
「そうですか。いや、でも…」
このままではいつまで引きずるかわからない。しかも今は楽しい夕食の時間だ。暗い話を続けるわけにもいかない。
「だぁ~もう!本当に気にしてないから!もうこの話は終わり!ハイ、さい!さっ、冷める前にたべよう」
「わかりました!いや~それにしても悪いですね。私まで夕食をいただいちゃって」
その変わり身の早さにやはり不安を覚えるシキであった。
霊夢の作った料理に魔理沙の差し入れと今日は割と豪華な夕食である。しかしその分出費もかさむわけで・・・
「そう思うなら銭か食材持ってきなさいよ!」
少し怒らせてしまったようだ。何たって5人もいるのだ。使う食材も必然的に多くなる。
「食材はないですが…これなら!」
「おっ!焼酎か!こりゃ~飲むしかないな!」
「なんであんたがいの一番でてを出すのよ!」
「私も飲もうかな~」
「いや萃香は十分飲んでるだろ」
先ほどと変わり楽しい雰囲気で時間が過ぎていく。夕食を食べ終えて落ち着き始めたころ。シキは文に妖怪の山について質問をしていた。いろいろと興味深いことを聞けたのだが、ひっかかるところがあったのだ。
「やっぱり人間は入れないのか?」
すると彼女は困ったような顔をした。どうやら答えにくい質問をしてしまったようだ。
「入れない…とは少し違いますかね?入れることには入れますけど…」
「けど?何か?」
「入っても追い出されるだけなんですよ。もしくは食べられるか」
「そりゃ入れないな…」
「山に興味が有るんですか?なら、私が連れていきましょうか?」
「良いのか!?」
「ええ、迷惑をかけたお詫びもかねて(そこなら邪魔もないですし・・・)」
不安もあるがとても有り難い申し出だった。行ってみたいところもちょうど途中にあるわけだし…
「ありがとう!実は紅魔館にいってみたくてな…」
答えると同時に話を聞いていなかった巫女と魔法使いが焼酎を吹き出した。
「止めときなさい!!」
「そこは、駄目だろ」
まさか後ろの二人に駄目だしされるとは思ってもいなかった。
「なっ!でも…」
「シキさん…言いにくいんですが、そこはちょっと…しかも私関係なry
「へぇ~私の館にいったいなんの用かしら?」
そこに最悪(?)のタイミングで現れた紅魔館の主。穏やかな団らんの中に入り込んだ異物によりシキの寿命がマッハである。ゾクリと背筋が凍るような感覚がした。
「やはり、運命ね」
まるでシキがここで紅魔館にいきたいと言うのを知っていたかのような発言。
振り向いた俺の目の前には絶対的なカリスマオーラをはなつ
『レミリア・スカーレット』が立っていた。
「最悪のタイミングだぜ」
「あら、最高の間違いじゃないのかしら?」
「悪いけどこのバカはあげれないわよ。あんた達の紅茶になるのが目に見えてるから」
「あらあら、随分この人間を気に入ってるみたいね?霊夢」
「あややや、大変なことになってしまいました~メモメモ」
今、文がメモ帳に書き込んでいく音がやけに大きく聞こえるよ。
「本人が行きたいと言ってるのよ?行かせてあげるべきよね?」
「あなたのところだと“いく”の意味が違ってくるのよ」
そういえば主人がいるのに従者がいないような…
「なぁ、レミリア」
皆がいっせいに俺を見る。美少女ばかりなんで少し興奮してきた。しかし、一人はまるでゴミでも見るような冷たい眼差しをむけてくる。
「なにかしら?人間」
「俺の名前はシキだ。それと咲夜はどこだ?お留守番てことは無いだろ?」
そう言った瞬間俺は神社の外に弾き飛ばされていた。正直この表現は正しくはない。まさに、気が付いたら外にいたのだ。
「なっ!!!」
(あ…ありのまま 今起こった事を思うぜ!『おれは レミリアのまえで座布団に座っていた思ったら いつの間にか外にいた』な…何を思っているのかわからねーと思うがおれも 何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……)
ちなみにこの間僅か0.05である
「よくやったわ!咲夜!」
やはり俺を外に連れ出したのはメイド長こと
『十六夜 咲夜』のようだ。
「お嬢様!目的は果たしました」
「逃がさないぜ!」
逃げ出そうとする咲夜の前を高速で弾幕が駆け抜ける。しかし、シキという荷物を抱えているにも関わらず、軽やかなバックステップで全てかわしていく。ここで、お返しとばかりにナイフが魔理沙に飛んで行く。彼女も体を捻るだけでナイフを華麗によけていく。誰かこの状況から俺を助けてくれないかと辺りを見てみると…
むこうの方では霊夢とレミリアが弾幕ごっこを始めたようだ。
文はメモを止めようとしないみたいだ。
萃香は爆睡しているようだし。
どうやら俺はこのまま紅茶の材料になるしかないらしい。
実は、結論から言うと俺はこの後奇跡的に助かり紅茶にならずに済んだわけだ。
さて、ここで問題だ。
俺はいったいどうやって助かったでしょうか?
次の四つから選び答えなさい。
①弾幕はパワーだぜ
マスタースパークで殲滅
②俺の封印されし右腕が!まずい!邪気眼の封印までとけてしまう!
中二病的能力開眼
③香しい少女臭
思わぬ助っ人が来る
④服だけ解けてしまう水が永遠亭にて発売中!
雨が降る
ど~れだ?
答えはCMの前!
睨み合う咲夜と魔理沙+(シキ)ここで咲夜が気付く。
「お嬢様!引いて下さい!」
いきなり耳元で叫ぶんだからそりゃ俺はびっくり。皆も驚いたようだ。なにせ、こちらは皆が酔っていてまともに戦えないのに逃げるというのだから。
「何を言ってるの咲夜!今がチャンスなの…なっ!」
ここでレミリアも気が付いた。いつの間にか空に輝く星が姿を隠してしまったのだ。
「つまり答えは④だな…」
俺が呟くと同時に、我慢出来なくなった空が雨を降らし始めた。
これには流石のカリスマもどうすることも出来ず…
「水はらめええええぇぇぇ!!」
「お嬢様アアアアァ!!」
どうやら助かったようだ。このまま帰ってもらうと助かるのだが…