大人少女23
一週間後・・・。
乃菊と保護者国也は、IMEテレビの本社ビルの前に立った。
「これがテレビ局か・・・。緊張するなあ」
国也がビルを見上げて言う。
「おじさんが、ここで仕事するわけじゃないでしょ!」
その通りだが、初めて来たテレビ局に興奮気味の国也である。
とにかくビルの中に入り、受付で会議室へと案内される二人。
田沢には、電話でメンバーの一員になることを了承していた乃菊。保護者を含めた説明会の開催で、ここを訪れたのだ。
会議室には、すでに他のメンバーとそれぞれの保護者らしき人物たちが座っていた。
「みんな来てるね・・・」
乃菊が国也の耳元で言う。
「僕と同じ保護者付きだね・・・」
国也も小声で話す。
「可愛い子ばかりだね」
国也がそう言うと、乃菊が腿をつねった。
「痛い!」
思わず声が出て、慌てて口を押える国也。
「い、痛いじゃないか!」
乃菊の耳元で言う国也。
「他の女の子を気にしないで!エロ親父!」
小声ではあるが、キツイお言葉だ。
しばらくして、田沢や番組製作関係者数人が部屋へ入って来た。
「来た来た!」
国也が姿勢を正して座った。
番組制作関係者たちは、正面の席の座り、挨拶をしてから説明を始める。
「それでは、二ヶ月後の6日、土曜日の午前10時スタートの情報番組“ど曜っと情報カップ”の主題歌及びコーナーのリポートを担当するグループ“大人少女23”のメンバーとしてここに集まって頂いた皆さんの自己紹介から始めます」
田沢は、場慣れしている人間だから、こんな場でもスラスラ話せるが、国也は、人前ではあがってしまい、何を話しているのか途中でわからなくなってしまうことがよくある。
「同じ人間なのに、こうも違うのか・・・」
国也は、話を聞きながら、こんなことを考えていた。
「じゃ、鈴木さんから」
前列右側に座っていた鈴木真阿子を差して、自己紹介が始まった。
「鈴木真阿子です。緒張市出身です。歌もダンスも頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします!」
みんなの方を見て頭を下げる鈴木真阿子。
ショートヘアで眼が大きく可愛い系の女性です。・・・国也の感想です。
「左島ジュリアです。横浜出身ですが、今は、都代田に住んでます。母は、日本人ですが、父は、アメリカ人です。歌が好きなので頑張りたいと思います」
続いて佐島ジュリアが自己紹介をした。
前列の真ん中に座っている母親は、どう見ても日本人です。立ち上がった彼女の姿を見ると、確かにハーフでしょう。ただ髪は金髪だけど染めているのかも。でも顔もスタイルも抜群です。・・・これも国也の感想だ。
「皆賀みおんです。藤海市の出身です。よろしくお願いします」
これまた美形でスタイルの良い女性。すでに女優かアイドルのようである。
簡単に自己紹介を済ませた皆賀みおんは、前列左側に一人で座っていた。
髪は長くて、綺麗だし、可愛くて、理想のタイプ。・・・あえて申し上げますが、もちろん国也の感想です。
「見浪ふう美です。春日居市から来ました。歌も踊りもみんなに負けないように頑張ります」
後列右側の彼女。母親も同じで、綺麗なんだけど、ちょっと気が強そうで、派手な洋服を着ているところが苦手かな。・・・国也ならそう思うでしょう。
「今堂亜美です。大柿市出身です。リポートでいろいろなところへ行ってみたいです」
今堂亜美は、メンバーそれぞれの方を見て頭を下げた。
後列真ん中にいた今堂亜美は、両親が来てます。お嬢様なのかな?でも可愛いけど、この中では一番普通かな。・・・国也の感想であります。
・・・そして乃菊の番です。
「菊野、乃菊です。蒲橋で着物を洗っています。用事があったらご依頼ください」
みんなが笑う。
「僕が仕事を教えています!」
立ち上がって、そう言いたい国也だが、後で乃菊にブッ飛ばされそうなのでやめた。
「ちなみに、隣にいるのは、おじさんです。私は、両親が亡くなっているので、今の保護者です。特に取り柄のない人ですが、しみ抜きは得意なので、私が仲介します」
今度は、クスクスと笑い、みんなが国也の方を見る。・・・何で余計なことまでペラペラと話すんだ。・・・先に言ってしまえば良かったと後悔する国也である。
スタッフの話を聞いていると、「みんな23才の大人だけれど、少女のような可愛らしさも併せ持つ女の子」というコンセプトなんだろう。
それにしても乃菊という女は、髪が自分の理想に近い、肩の下までの長さがあり、、綺麗で、可愛くて、他の女の子にはないミステリアスなところを持つ不思議な魅力があるけれど、とにかく性格が、性格が・・・。
国也の悩みの種である。