情事?
幸い怪我もたいしたことがなかった国也は、翌日の撮影のため、乃菊と名古屋に残った。
「おじさん、無理しちゃ駄目だよ。私も一緒に帰るから」
そう、大丈夫だからと言う国也に対して、無理だ無理だと言い、一緒に帰ると主張した乃菊。
「大丈夫だって言ってるだろ、それに、また明日朝早くから出掛けて来るより、ここに残った方が楽だろ・・・」
乃菊は、渋々納得する。・・・ふりかもしれない。
「そりゃ、またホテルで一緒にいられるのは、嬉しいけど・・・」
と言うのも、もうすでに、二人はホテルにいて、また一緒に泊まるからだ。
「でもあれだよ、怪我してるから、一緒の部屋にしたんだよ」
フロントで手続きしたのは、また乃菊だった。
「それ以外に、どんな理由があるんだよ」
またいつもの乃菊に戻っている。
「ありません・・・」
とりあえず、大人しくしておこうと思う乃菊である。
「じゃあ、そこのコンビニで夜食買ってくるから、こっちのベッドで休んでて」
乃菊は、ツインのベッドの一つを整え、国也を寝かせる。
「気をつけて行って来るんだぞ」
国也にとっては、乃菊を一人にすることが心配だ。
「はーい!」
乃菊は、元気よく部屋を出て行く。
「いらっしゃいませ!」
元気のいい店員に迎えられた乃菊。買い物カゴを持って、コンビニの中を回る。
「ビールは、5本でいいかな。おつまみとおにぎりと・・・」
カゴいっぱいにして、レジに来た乃菊。
「この焼き鳥、4本ください!」
レジの横にあった暖かい焼き鳥を追加して、にっこり笑う乃菊。
「準備、OK!」
カゴの中身を確認し、満足しながらレジの店員の前に出す。
「あのお、もしかして、菊野、乃菊さんじゃないですか?」
店員がカゴを受け取りながら聞いた。
「!!」
油断していた。サングラスも帽子も被っていない。
「そうですよね!僕、ファンなんです!」
ファンと言う店員に遭遇してしまった乃菊。
「あ、ありがとう・・・」
乃菊のっ言葉を聞いて、嬉しそうにレジを打つ店員。
「ビール好きなんですか?」
レジ打ちしながら聞く店員。
「少ししか飲めませんけど・・・。あ、これは、友達の分もあるから・・・」
必死に誤魔化す乃菊。
「友達って、メンバーですか?みおんちゃん、それとも真阿子ちゃん?」
本当に知っている店員。
「はは、そんなとこかな・・・」
他の客がいなかっただけでも、良かったと思う乃菊。
「ちょっと待ってください!」
店員が、マジックを持って来る。
「ここにサインしてください!」
マジックを渡される乃菊。
「これって、お店のユニホームじゃ・・・」
出来れば遠慮したいが、店員は、サインを貰う気満々である。
「いいんです、他のみんなに自慢しますから!」
乃菊は、上着の胸のところにサインをする。
「また来てください!ありがとうございました!」
乃菊は、落ち着いているようなふりをして、ゆっくりコンビニを出て行く。
そして外へ出ると、走って隣のビジネスホテルへ入る。
「ただいまー・・・」
乃菊が袋いっぱい食料を買い、重そうに持って部屋に戻って来た。
「返事がないなあ・・・」
部屋が静かなので、抜き足差し足、忍者のように音を立てずに中へ入る。
「寝たのかな・・・」
乃菊は、ベッドの国也を確認する。背中を怪我した国也は、腹ばいになって寝ている。
「よし、寝てる」
乃菊は、急いで着替えを済ませ、自分のベッドに買って来たものを広げ、まず、缶ビールを開けた。
「酔った勢いで一緒に寝ちゃえ!」
乃菊は、まだ懲りていないようだ。
つまみ、ビール、おにぎり、ビール、つまみ、2本目ビール、焼き鳥、ビール・・・。飲みすぎ、食べ過ぎではないか?
「ういっ、ちょっと飲みすぎたかな・・・」
乃菊は、少しふらつきながら国也のベッドへ移動する。
「あっ!」
乃菊がベッドの端に足が当たって前に倒れてしまった。
「あ、痛っ!」
あろうことか、怪我をしている国也の背中の上に倒れたのだ。
起き上った国也は、倒れた乃菊をベッドへ寝かせる。
「何があったんだ、乃菊ちゃん?」
驚いて起き上がった国也が聞く。
「何だか気持ちが悪い・・・」
事実だった。
「そりゃ大変だ。そのまま寝てなさい・・・」
と言った国也だが、部屋中、気になる臭いがする。
「!!」
国也が、もう一つのベッドを見ると、ビールの缶やつまみの袋、焼き鳥の食べかけや、おにぎりや開けた袋などが散らかっている。
「何やってるんだ、この子は・・・」
国也は、口を開けて寝ている乃菊の顔を見る。
「こんなところ、他の人には見せられないな・・・」
国也は、乃菊のところへ行き、乃菊の顎を指先で押し、口を閉める。
「こんな姿は、僕にしかみせないよね、乃菊ちゃん・・・」
国也は、確認のため、部屋を見回す。
「心配掛けてごめんね・・・」
国也は、乃菊の唇にキスをする。
「むむん・・」
乃菊が横を向いて、唇を舐める。
「良かった、起きたかと思った」
国也は、ベッドの横に座る。
「残り物、食べて寝ようかな・・・」
国也も、もう一つのベッドへ行き、座って食事を始めた。
明日は、何も起こらないようにと、心から願う国也だった・・・。




