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ダブルデート

国也、乃菊、田沢、みおんの4人は、国也の運転の車に乗り、出発した。

蒲橋市内を抜け、県道を甲田町から西緒市へ向かう。

「みおんは、お城へ行ったりする?」

乃菊がみおんに聞いた。

「うーん、遠足で名古屋城は行ったけど、他は、どうだったかな・・・?」

あまり興味は無いようだ。

「歴女なんて言うけど、周りにいないよね・・・」

歴女ではない乃菊。

「そうね。じゃ、のぎちゃんは、どうしてお城へ行くの?」

そこが気になるみおん。

「おじさんに付き合うだけだよ」

そっけない乃菊。

「無理して付き合わなくてもいいんじゃないの?」

みおんは、乃菊の反応を見る。

「誰にも相手にされないんじゃ、可哀そうだから、私が付き合ってあげてるだけだよ」

ボランティアだと言いたい。

「ホントに、それだけ・・・?」

乃菊の顔色を見る。

「それだけだよ・・・」

窓の外を眺める乃菊。

「好きなら、好きって言えばいいのに」

直球勝負のみおん。

「だ、誰が、誰に好きって言うのよ!」

みおんの顔を見る乃菊。

「私だったら、羽流希さんかな・・・」

田沢に聞こえる様に、みおんが言う。

「勝手に言えばいいじゃない!私は、そんな相手いないから・・・」

後部座席で乃菊とみおんのやり取りがある。

「この辺りにもお城ってあるんですか?」

助手席の田沢が、運転している国也に聞く。

「名古屋城みたいなのはないんだけど、お城って言われてるところは、結構あるんですよ」

国也の出番だ。

「石垣だけの所もあるんですよね」

男は、多少なりとも城を知っている。

「マニアから見ると、石垣や堀跡もない城址碑だけの所や、記録上この辺りに存在していたと言うだけのものまで、いろいろあるんですよ」

国也の説明を聞く田沢。

「そうなんだ・・・」

山の間を抜け、コンビニのある信号を右折し、市道を走る。しばらくすると向かって左手に小山が見える。国也は、その手前の整備されていない駐車場に車を停める。

「ここもお城です!」

案内板があり、進んで行くと、史跡であるとの表示がある。

「しゃちほこ見えないよ」

小山を見上げて、乃菊の天然が始まる。

「ここは、大きな天守閣みたいな櫓はないんだ」

それでも城跡だと言いたい。

「それでもお城なの?」

乃菊は、そうでなかった。

「そお!」

駐車場から道路へ出て、少し歩くと小山へ上る坂道がある。

「おじさん、引っ張ってって、しんどいから・・・」

全快ではないから仕方ないかと、国也も諦めて、乃菊の手を握り引っ張って行く。

「羽流希さん、やっぱりあの二人デキてるね」

当然二人は、お見通しだった。

「これは、シークレットだよ」

耳打ちする田沢。

「わかりました、ディレクター様」

乃菊たちの後ろを歩いて行く、田沢とみおんもいい関係である。

木枠だけの門があり、それを抜けて行くと小さな神社があった。

「あ、何かある!」

その場所からまた少し上に、木造の建物がある。

「古いタイプの門と物見櫓だよ」

乃菊にも親切に説明する国也。

「そうなんだ、こんなお城もあるんだ!」

乃菊が立ち止まる。

「二人で見て来てください」

乃菊が上るには、段差が多いため、田沢とみおんだけ行かせた。

「あの二人が結ばれるといいのにね・・・」

乃菊が階段を上る二人を見て言う。

「そうだね、いろいろあっても一緒にいるんだからね。だけどまだ障害があるんだろうな、いろんな意味で・・・」

腕組みしながら、田沢とみおんを見ている二人。

「もう疲れちゃったから、何か一緒に食べて、それから二人を丘崎駅まで送って行こうよ」

乃菊が国也に頼む。

「じゃあ、戻って来たらそうしよう」

乃菊と国也、みおんと田沢のダブルデートは、忙しさの中でのホンの僅かな息抜きとなった・・・。


挿絵(By みてみん)


その夜、遅い食事をする乃菊と国也と雲江の3人。

「乃菊ちゃん、少しは気晴らし出来たかい?」

雲江が聞いた。

「うん、4人で話が出来たから、楽しかったよ。今度は、雲ネエも一緒に行こうね!」

乃菊の機嫌は、すこぶる良かった。

「お城は?」

雲江が聞く。

「どこ行ったっけ?」

乃菊が国也の顔を見る。

「そんなに興味ないんだ・・・」

国也は、憮然とする。

「そんなことないよ。また行ってあげるから、行先考えておいて!」

君が行きたいって言ったんだぞ!・・・心の中で叫んだ国也である。


食事も風呂も済ませ、居間でテレビを見ている乃菊たち。

「そうだ母さん、“あくえんき”って知ってる?」

国也が雲江に聞いた。

「何でそんなこと聞くんだい?」

雲江が不思議そうな顔をする。

「前に、あの赤ずくめの最上さんが言ってたんだ」

二人の会話を、お茶を飲みながら聞く乃菊。

「そうかい、私もずいぶん昔に聞いた話だけど、ある宗派の僧の教えで邪悪な心を持つ人間に乗り移り、悪縁をもたらす実態のない鬼がいるそうで、そんな人間にならないように心を浄化する修行をしなさいと伝わっていて、その鬼が、〝悪縁鬼”だったと思うよ」

物知りの雲江だ。

「じゃあ、悪い、縁の鬼で“悪縁鬼”だね。それじゃ、僕らにとっては、敵みたいなものだね」

国也が、そう言ってお茶を飲む。

「そうだね。でも、実体はないって言っても、元は、龍のような大蛇のような姿だったらしいよ」

ガチャン。乃菊がテーブルの上に、持っていた湯のみを落としてしまった。

「どうしたんだい、乃菊ちゃん。国也、さっさと拭いてあげなさい」

雲江に命令されて、布巾を持ってきてテーブルを拭く国也。

「君は、濡れてないかい?」

乃菊に聞く。

「・・・」

返事がない。

「どうした、具合が悪いのか?」

乃菊の額に手を当てる国也。

「乃菊ちゃん、そうだったら早く寝なさい」

雲江も心配する。

「う、ん・・・」

か細い声で答える乃菊。

「早く連れて行って、布団敷いてあげなさい」

こき使われる国也。

「ああ」

国也は、乃菊を二階に連れて行き、布団に寝かせる。

「ちょっと無理したのかな」

国也が、横になっている乃菊を見ながら言う。

「・・・」

また返事がない。

「じゃあ、何か用があったら、大声出して呼んでいいから」

国也が去ろうとすると、乃菊が手を引っ張った。

「寝るまでここにいて・・・」

いつもの乃菊と違う。

「どうしたんだよ、子供じゃあるまいし」

そう言いながらも、布団の横に座る。

「子供でいいから、ここにいて・・・」

どこか変だ・・・。

「ねえ、横になって、子守唄、歌って・・・」

子供の様に甘える乃菊。

「ホントにかよ・・・」

国也は、子供をあやしたこともなければ、子守唄を歌ったこともない。それでも乃菊の頼みを断らなかった。

「しかたがないな・・・」

そう言いながら、添い寝をして、乃菊の肩を叩きながら、下手な子守歌を歌う。

「泣いてるのか?それに手が震えてる。いったいどうしたんだよ・・・」

確かに、乃菊の眼から涙が流れていて、手も身体も震えている。

「私、邪悪なのかな?」

急に可笑しなことを言い出す乃菊。

「そんなわけないだろ、君は誰よりも正義感が強いじゃないか」

その通りである。

「違うよ、ホントは、すごく邪悪な心を持ってるのよ、きっと・・・」

涙を零す乃菊。

「何でそんなこと言うんだよ、君の心は、誰よりも綺麗に決まってるじゃないか」

国也が、乃菊の手をしっかりと握る。

「・・・」

また返事がない。

「おい、どうしたんだよ?」

国也が聞く。

「・・・」

またまた返事がない。

「寝たのか?」

もう一度聞く。

「怖いの・・・」

乃菊が答えた。

「何が?」

その答えの真意が分からない。

「自分が・・・」

閉じた目から、涙が溢れる。

「だから、君には、邪悪な心なんて絶対にないよ!」

どうしたんだ乃菊。国也は、乃菊の顔をじっと見た。

「おじさんの敵になっちゃう・・・」

涙が止まらない。

「まだ言うか・・・」

国也は、乃菊の手を握る。

「キスして・・・」

涙を流しながら言った。

「・・・」

国也は、乃菊の唇にキスをした。

「おじさん・・・」

乃菊は、国也の腕を枕に寄り添うように眠った・・・。

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