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お父さんみたい

「やっぱり、乃菊ちゃんが一番可愛いわね」

雲江が腕組みしながら言う。

「うん!」

珍しく否定しない国也。

「あら、素直に言うねえ。気持ちは、ちゃんと伝えなよ」

平然と言う雲江。

「そんなんじゃない!もう終わったからトイレに行って来る!」

国也は立ち上がって、トイレに行く。

「国也!また乃菊ちゃんが出てるよ!」

バタバタと慌てて走って来る国也。

「どこどこ?」

テレビを覗き込む。

「終わっちゃったよ。せっかく水着で歌ってるエンディングのビデオが流れてたのに・・・」

もうCMになっていた。

「嘘だあ!聞いてないよお!」

国也の様子を見て、雲江が横を向いて笑う。


挿絵(By みてみん)


「お疲れさま!」

パッシー銀座たちが立ち上がって言う。

「お疲れさまです!」

アナウンサーたちも頭を下げる。

「また来週お願いします!」

乃菊たちも頭を下げ、出演者を見送る。

「お疲れさまでした!」

出演者たちが、スタッフにも挨拶をしながら、スタジオを出て行く。

「羽流希さん、お疲れさまでした!」

スタジオにやって来た田沢に声をかけるみおん。

「緊張したか?」

田沢が聞く。

「少しね。でも楽しかった!」

みおんは、充実した顔をしている。

「乃菊ちゃんは?」

横にいる乃菊に聞く。

「何だか恥ずかしかったなあ・・・」

乃菊でもそうなんだ・・・。

「堂々としてたよ。まずは無事に済んで良かった」

田沢も上々のスタートにホッとする。

「先に行くね、みおん」

田沢と話をしたそうだったみおんを見て、乃菊が言った。

「うん、すぐに行くから」

乃菊だけ先にスタジオを出て行く。

「菊野ちゃん、お疲れー!」

廊下でパッシー銀砂に声をかけられた乃菊。

「お疲れさまです・・・」

頭を下げる乃菊。

「どうだった、初仕事は?」

嬉しそうに聞くパッシー銀座。

「これがテレビなんだなあって感じです」

乃菊の正直な感想。

「すぐに慣れるさ。ところでこれから暇?」

いきなり来たか、と思う乃菊。

「パッシーさんは、これから東京へ行くんじゃないんですか?」

乃菊は、パッシー銀座の情報を仕入れていた。

「そうだけど、まだ時間があるんだ。どう、お茶でも?」

ウインクをして見せるパッシー銀座。

「すみません。帰って仕事があるんです。私、二股かけてるんです。へへ」

舌を出し、可愛く断る乃菊。

「じゃあ、次の機会にしよう。何かあったら相談に乗るからね」

残念そうに言うパッシー銀座。

「ありがとうございます」

頭を下げて別れる乃菊。上手くかわせたのかどうか、まだ先が気になるパッシー銀座の動向である。


「お先に。亜美、行くよ」

ふう美は、亜美を引き連れて、さっさと楽屋を出て行く。

「ふう美さん、もう帰ったんだ」

遅れて楽屋に戻って来た乃菊が、ジュリアに聞いてみた。

「うん、帰っちゃたよ」

金髪のジュリアが答える。

「ねえ、用事がなかったら、お茶しない?」

乃菊が二人を誘う。

「OK!」

ジュリアが即答。

「行く、行く!」

ジュリアも真阿子も同い年の乃菊を慕ってくれている。

「じゃ、みおんが来たら、4人で行こう」

こうして4人のメンバーが、場所を喫茶店移し、夕方までガールズトークを繰り広げることとなった。


「雲ネエ、どうだった?」

国也の迎えで帰って来た乃菊が、居間にいた雲江にさっそく聞いた。

「綺麗に映ってたよ。他の子より10倍は可愛かったし」

雲江にとっては、お世辞ではない。

「言い過ぎだよ、みおんもジュリアも実物は私より素敵だよ!」

そうだそうだと、心の中で思う国也。

「ううん、こいつだって、乃菊ちゃんが一番可愛いって言ってたよ」

余計なことを言う雲江。

「ホント?おじさんがそんなこと言うかしら?」

乃菊は、テーブルの菓子を食べる。

「そんなことは言ってない」

国也は、否定した。

「だよね・・・」

少し残念そうな顔をする乃菊。

「ところで、水着のビデオも撮ったんだね」

国也が聞く。

「いろいろなバージョンで曲に合わせて撮ったから、その中に水着の撮影もあったんだよ」

乃菊が撮影秘話を伝える。

「国也ったら、トイレに行ってて、見逃しちゃったんだよ」

乃菊が眼を細くして、国也を睨む。


挿絵(By みてみん)


「どうして最後まで座って見れないのよ・・・」

不満を言う乃菊。

「それより、水着になるなんて聞いてなかったぞ!」

見たこともないし・・・。

「別に水着になったっていいじゃない・・・」

普段は、下着姿を見せてるし・・・。

「まだデビューしたばかりなのに、そんなことまでさせるのかテレビってやつは!田沢さんに文句言ってやる!」

一人で興奮している国也。

「嫌なんだ、私が水着になったりするの・・・」

国也の顔を覗き込む。

「まだ早いって言ってるだけだよ!」

腕を組んで言い放つ。

「何だかお父さんみたいだね、雲ネエ・・・」

乃菊が笑う。

「結構、考えが古いんだよ、国也は」

またまた、腹が立ってくる国也だ。

「じゃ、こんなこと話したら、もっと怒られるかな?」

乃菊が意味深なことを言い出す。

「何だよ?」

不安になる国也。

「実は、ビデオの撮影の時、カメラマンにヘアヌード撮らないかって、聞かれちゃったんだ!」

乃菊の発表です。

「馬鹿やろう!そんなの駄目に決まってるじゃないか!」

頭に血が上ってきた国也。

「私は、今のうちに撮ってもらってもいいかなって・・・」

調子に乗る乃菊。

「それで、何て答えたんだ!」

貧乏ゆすりをしながら聞く。

「もう少し仕事したらお願いします・・・って言っちゃった!」

舌を出して答える乃菊。

「駄目だ、駄目だ!何を考えてるんだ、そんなことのために仕事させたんじゃないぞ!」

完全に、昔の頑固親父である。

「落ち着きなさいよ、乃菊ちゃんは、まだ若いからいろんなことしたいんだよ」

雲江が乃菊のサポートをする。

「若くたって、ヘアヌードなんて駄目に決まってるだろ!」

鼻息を荒くして、本気で怒る国也。

「もういい!疲れたから寝る!」

乃菊も腹を立てる。まるで親子喧嘩のようだ。

「そうしなさい。こんなのにつき合わなくたっていいよ」

雲江が呆れたように言う。

「はーい!」

乃菊は、居間を出て行く。

「こら!まだ話は終わってないぞ!」

国也は、テーブルを叩く。

「おじさん!」

乃菊が扉のところから顔を出す。

「嘘だよおおおん!そんな話があるわけないじゃない、ばーか!」

乃菊があかんべえをして、二階へ上がって行く。

「あいつううう!」

国也は、頭をかきむしる。

「残念だったね」

雲江が妙な笑顔で言う。

「何が?」

国也が雲江を見て聞く。

「ヘアヌード」

雲江が答える。

「・・・」

閉口する国也。

「見たかったな、乃菊ちゃんのヘアヌード・・・」

雲江が天井を見ながら想像する。

「・・・」

お前は、エロ親父か!母親が女に見えなくなった国也である・・・。

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