悪役令嬢に転生したけど、推しカプを成立させたい
「見ろ」
私の隣に立つ銀髪の美青年、この国の王太子エリック殿下がある一方を指差して言う。彼は私の婚約者で、毎朝時間を合わせて学校に登校していた。
婚約は先日決まったばかりで、一緒の登下校はそのアピールも兼ねている。でもまあ、私たちの婚約はわかりきっていたことだっただろう。
私はミレイラ・グレイシー。
グレイシー公爵家の娘で、容姿端麗、語学堪能、帝王学も履修済み。綺麗な黒髪が目を引く美人だけど、悪役顔でちょっとキツめな顔立ちなことだけがコンプレックスだ。
でもまあ、殿下が俺様系のイケメンなおかげで、ある意味調和はしているので良しとする。二人並ぶとラスボス感がすごいんだ、これが。
「あれが今年首位で入学した生徒だ。平民の出で、特待生らしいぞ」
「まあ……。貴族が平民に負けるだなんて情けないこと。精進が足りませんわね……。はっ!?」
「どうしたんだミレイラ」
「な、なんでもありませんわ……」
嘘だ。ある。めっちゃある。
私の目に映ったのは、誰かのお下がりだろうか。小柄な彼女の身体には大きすぎる制服に身を包んだピンク髪の少女だ。大きな瞳が可愛らしい美少女である。
彼女を見た瞬間、私の脳内にとある記憶が蘇った。
科学が発展した現代の日本。そこで、私はとある漫画にはまっていた成人女性だった。その漫画とは『明日はシンデレラ』というタイトルの少女漫画。魔法が存在するファンタジーな世界線が舞台になっていて、この世界のことだ。
そして、私ことミレイラ・グレイシー。
ミレイラは先ほどのピンク髪の少女、……主人公の『ハル』を事あるごとに虐めまくる悪役ポジションのキャラクターだ。
発端は平民のくせに殿下に目をかけられているのが気に入らないということだったが、もうノルマでとあるのかってくらい毎話ごとにハルをいびり倒していた。
私はそんな彼女に生まれ変わっていたのだ。
前世の私はこの漫画が大好きで、ハルとエリックの公式カップリングを激推ししていた。
これは生で推しカプ成立の瞬間を見るチャンス!
それにはこのミレイラ・グレイシーの嫌がらせという恋のスパイスが必要不可欠。
しかし、私は思い出していないにせよ、前世で常識ある一般市民として生きた経験が魂に刷り込まれていたのだろう。記憶を取り戻す前も原作のミレイラと比べるといささか品行方正に生き過ぎていた。
下位貴族や使用人への当たりも優しく、孤児院や救護院への慰問にも積極的に行なってきた善良なる貴族令嬢ミレイラ。どう考えても平民イビリをするような人間ではない。
原作ではプライドが高く周りの人間を見下してばかりのミレイラにうんざり気味の殿下だったけど、現状の私たちの仲は悪くないものだ。
でも、これではいけない。いけないのだ!
このままだと私と殿下が無事にゴールインしてしまう!殿下のことは嫌いじゃないけど、それより推しカプが私は見たい!!
「俺は少し声をかけてこよう。ミレイラはどうする?」
「私は後から参りますわ。殿下は先にお話していらして」
私は殿下と一端別れると、箱詰めされた瓶入りの水らしいものを運んでいた男子生徒に声をかける。
この学校は半ば専門学校のようなところがあり、自分のなりたい職業やなる予定の職業に合わせてコースを選んで学んでいく。あの男子生徒はおそらく神官コースの学生で、中身は聖水か聖水になる前の水だろう。
「あなた、これを一本くださらない?対価は後からきちんと払うわ」
「えっ、ミレイラ様!?どうぞ!こんなものでよければ持っていってください!」
「ありがとう。助かるわ」
私は男子生徒から譲り受けた水を片手に殿下と主人公、……ハルの元へ向かう。彼らはちょうど会話を始めようとしているところだった。
「首位で入学試験を突破とは、中々に素晴らしい。君、名前は?」
「……」
「どうしたんだ?名前は、と聞いているんだが」
ハルは雲の上の存在である殿下に声をかけられたせいか、緊張で声も出ないらしい。まごつきながら口をパクパクさせる彼女の近くへ、私も早足で近づいた。
「まあ!殿下がお声がけくださっているというのに、返事も出来ないの?」
私はスパイス!そう、ガルダモン!ターメリック!コリアンダー!
私が嫌なヤツであればあるほどに、二人の恋は盛り上がるのだ。
出来るだけ嫌味ったらしく言って、私はハルの上で蓋を空けた瓶をひっくり返した。頭からだばだばと水を受けて、上半身をぐっしょりと濡らした彼女に私は笑顔で言う。
「これで口が利けるようになったかしら。私は平民だからって特別扱いしなくてよ」
小さいッ!これは器が小さい!!
この程度で平民相手に嫉妬とは貴族の風上におけぬ振る舞い。これはさすがの殿下も幻滅することだろう。
内心でほくそ笑みながらハルの反応を待っていると、彼女は肩を震わせている。泣くのかもしれかい。泣いてくれたら嬉しい。
「ありがとうございます!」
しかし、顔を上げた彼女は満面の笑みでお礼を言った。……笑顔でお礼?
聞き間違いかつ見間違いだろうか。
首を傾げる私に、彼女はこれまた深く頭を下げて「本当にありがとうございます!」重ねてお礼を言う。聞き間違いでも見間違いでもなかったらしい。
「平民のくせに生意気だって言われて、喋れなくなる呪いをかけられていたんです!」
「えっ」
「この後の入学式で新入生代表の挨拶もあったのですごく困っていて……。聖水をかけてもらえて本当に助かりました!あなたは平民を差別しないんですね……!尊敬します!」
なんと、ハルは他の新入生からのやっかみを受けて呪いをかけられていたという。そして、それを私が聖水をかけたことで解呪したんだとか。
殿下が私の肩を掴んで興奮したように言う。
「ミレイラ!呪いを見抜いた上に、その解呪までするとは素晴らしいぞ!」
「そ、それほどでもありませんわぁ……」
▼エリックからミレイラへの好感度が上がった!
くそっ、失敗した!
あれからというもの、ハルには慕われ、殿下からの絡みが増えてしまった。
こうなったら、上がった好感度を下げるために私のイメージダウン作戦を決行するしかない。
しかし、とはいっても何をしたら……。
そう頭を悩ませていたところ、私の目に入ったのは、街角に置かれた箱の中に入ったぶち模様の仔犬。隣には城下を視察なされている最中の殿下。
ちなみに私はいつも視察に一緒に参加していたので、今回も当然のようにセット扱いだった。
「捨て犬か。可哀想に」
殿下はたいそうな愛犬家で、既に五頭の犬を飼っている。
そのうち三頭は劣悪な環境で飼われていたところを保護された保護犬で、その飼い主に対する殿下の怒りっぷりときたら凄まじいものがあった。
そんな殿下の前で哀れな捨て犬に冷たい態度をとったらどうなるか。
当然、愛想を尽かされるだろう。
「まあ、汚い犬ですこと。殿下、触ってはいけませんわよ」
「おい……!」
「まったく。犬ならなんでも殿下に近づけるとでも?勘違いもはなはだしいわ」
「ミレイラ!!」
小さい!犬相手にこれとはまた器が小さいッ!
私は殿下の前に割り込んで、つま先で仔犬が入った箱を蹴る。もちろんそっと、そっとね。箱が少し動いたくらいで、犬にはなんの影響もない。
本当にごめん!後で公爵家の方で保護するからどうか許して……!
推しカプのため心を鬼にして酷い振る舞いをすると、殿下が私を押し退けて犬を助けようとする。しかし、それも途中で止まった。
一瞬の光の後、犬が見知らぬおじさんになっていたからだ。なんでやねん。
「なぜ俺が犬に変身しているとわかった……!」
「えっ」
「仕方ない。貴様もろとも王子を殺す!」
おじさんが懐から取り出したナイフを振り被る。
ダメだ、刺される!
思わず目を瞑ってしまったけれど、いくら待っても何もない。おそるおそる目を開けると、おじさんがびっくりした表情のまま氷漬けになっていた。私もびっくり。
「……少しでも疑ってすまなかった。ミレイラがいなかったら、俺は危なかった」
背後で魔法を使ったのだろう。振り返れば、手のひらをおじさんに向けている殿下がいる。
殿下はおじさんが動かないこと、潜んでいた護衛たちが集まってくるのを確認してようやく警戒をといた。
それから、私の方に向き直って言う。
「よく暗殺者の変身を見破ってくれた。ありがとう。お前は本当に素晴らしいな」
「そ、それほどでもありませんわぁ……」
▼エリックからミレイラへの好感度が上がった!
くそっ!まただ!また失敗した!
だが私は諦めない。すべては推しカプ成立のため、いくらでも立ち上がってみせる!
「今日はお招きありがとう」
週末、私はとある大きなお屋敷に足を運んでいた。
「こちらこそありがとう。来てくれて嬉しいよ」
今回のターゲットはこちら、レナード・ティティー。ティティー侯爵家の長男で、現宰相の息子でもある彼は、殿下の親友で右腕と呼べる存在である。
レナードはハシバミ色のふわふわな髪と中性的な顔立ちをしていて、線の細い青年だ。一見優しげに見えるが、中身は腹黒く食えない性格をしている。
しかし、そんな彼にも弱点があった。
「きっとマルタも喜ぶと思う」
それは妹。レナードは重度のシスコンなのだ。
妹のマルタは兄にかけて線が細く華奢な女の子で、かなりの病弱。年齢はハルと同じで学校にも在籍はしているが、ろくに通えていない。
そんなマルタだったけれど、最近は幾分体調がいいらしい。何事にも意欲的で、外出やお茶会、買い物をしたいとしきりに言うのだとか。
そこで友達のいない妹のためにお兄ちゃんがひと肌脱いで、私が呼ばれたというわけ。ミレイラとマルタは何度か面識があるし、年齢や家格の釣り合いもとれる。ちょうどよかったのだろう。
「……で、こちらの二人はどうしたのかな?」
マルタの待つ庭園に向かう道中、レナードの視線が私の背後に向けられた。それに居心地悪そうに小さくなるのがハル。ふんぞり返って偉そうなのが殿下だ。
「ハルは私が連れてきましたの。マルタ様とは年が同じだし、いろいろとちょうどいいかと思って」
「……殿下は?」
「どうしても行くと言って聞かなくて」
ハルにはあの一件から懐かれてしまって、誘うとひとつ返事で了承してくれた。
殿下の方はそれを聞いていていきなり自分も行くと言い出したのだ。何が琴線に触れたのかはわからなかったけど、私にとっては都合がよかったのでそのまま連れてきた。
推しカプだし、これからする悪役令嬢ムーブを殿下に直接見せられるのだからむしろありがたい。
「マルタ、ミレイラ嬢をお連れしたよ」
「ありがとうお兄様。こんにちは、ミレイラ様」
やがて着いた庭の東屋にいたマルタは兄のレナードとそっくりな色合いの髪と目をしていて、ガラス細工のように華奢な美少女だった。目をきらきらと輝かせて、私たちの来訪を喜んでいる。
そんな純真無垢な少女に私は、
「ごきげんよう、マルタ様。お久しぶりにお顔を拝見したけれど……、なんって醜いのかしら!貴女みたいなブス、初めて見たわ!」
もうめちゃくちゃに罵った。
これにはお兄ちゃんは怒髪天のはず。
しめしめ、今後殿下は『あんな女やめとけ!』と親友に口うるさく言われることになる。これぞ逆外堀埋め。
きっと残りの二人もドン引きのはずだ。けれど。
「そうよそうよ!あんたみたいな醜悪なヤツ、私だって見たことない!」
参戦してきた、だと……?
なんとハルが指を差しながらマルタを罵り始めたのだ。
やめろ、主人公が悪役令嬢の取り巻きAみたいなことすんな!
ここは『そんな事言うなんて酷いです!』ってマルタ側に立つとこだろうが主人公。心優しい少女の公式設定どこ行った?お願いだから帰ってきて。
けれども、そんな願いむなしくハルは止まらない。
「ブス、ブス、ブース!!」
なんかもう私も怖いんだけど。
男性二人は呆気にとられて呆然としていたが、マルタがふっと俯いたのを見てレナードが我に返った。
「おい!なんてことを……」
「オマエ!アタシをブスだと言ったのカア!!」
庇おうとしてくれたお兄ちゃんを遮ってマルタが吠える。
しかし、その声には先ほどまでの鈴を転がしたような愛らしさはなく、しわがれた老女のような声に。顔もまた憎悪に歪んで、まるで別人かと思うほど。
マルタはふわりと浮かび上がって、空中から髪を逆立てながら私たちを睨んだ。それにハルがまた睨み返す。
「尻尾を出したわね、悪霊令嬢トレイシア!」
「えっ」
「さすがお姉様!なぜ平民の私なんかを貴族のお嬢様の話し相手にしようとするのかは謎だったのですが、こういうわけだったのですね!!」
いや、知らん……。どういうわけ……?
というか悪霊令嬢トレイシアって誰……?
「悪霊令嬢トレイシアだと……?百年前、婚約破棄されたことを苦に自ら命を絶ち、亡霊になってからは見目麗しい貴族令嬢に取り憑いてその家を破滅させているという……!?」
「確か、婚約者が美人な貴族令嬢になびいたのが破棄の原因だったか?まさか、逆怨みでこんなことを……?」
解説ありがとう殿下とレナード!でも本当に知らんかった!全ッ然、知らんかった!!
ただか弱いマルタ嬢を罵ろうと思っただけなのに、呼んでもない大物が出てきてしまった。これが藪をつついて蛇が出るってやつ?しかし、これって討伐出来るやつなの!?大丈夫!?
「君、下がりなさい!危ないぞ!」
レナードがハルを下がらせようとする。しかし、ハルは、マルタもといトレイシアと対峙したまま動こうとしない。
「安心してください!私は悪魔祓い一級の認定を受けています。あの程度なら五分も貰えれば消滅させられます!」
ひゃ、百年物の悪霊を五分で……?
私に呪いを解呪されたことに感銘を受けたハルが学校で神官になるためのコース選択をしたことは聞いていた。
だけど、まさかこんなことになってるとは思わないでしょ。
だってまだ入学してから半年も経ってない。悪魔祓い一級といえば、ベテランの神官でも一握りしか持っていない資格のはずだ。
さすがは不屈の主人公。ここまで来るともはやチートだ。
ハルはブツブツと呪文を唱えながら、シュバシュバと手で謎の印を切っていた。悪霊は悶え苦しんでいる。
「ギャアアアーーー!!」
やがて、爆発四散する悪霊をバックにハルは不敵に微笑んだ。
「これでもう安心です。けれど、妹さんはこういったものに取り憑かれやすいようです。もしかしたら、身体が弱いのもそのせいかもしれません。試しに私が作った護符を持っていてください」
「ありがとう、マルタを助けられたのは君のおかげだ!」
「とんでもありません。これはミレイラお姉様の完璧な手回しがあってこそ。すべてはミレイラお姉様のおかげです」
「ありがとうミレイラ嬢!」
「え、ええ……。」
気を失っているマルタを抱きかかえ、レナードが涙ながらにお礼を言ってくる。
ただ妹君を罵倒するだけのつもりだった私はなんだか居心地が悪い。引きつる口元を扇子で隠しながら後ずさると、何かにぶつかった。殿下だ。
彼は私の肩を抱き寄せて、満足げに笑ってみせた。
「ここまで見通していたとは素晴らしいぞミレイラ。さすがは俺の婚約者だ」
「そ、それほどでもありませんわぁ……」
▼エリックからミレイラへの好感度が上がった!
全然上手くいかない!
殿下との仲は至って良好だし、ハルは霊の類に好かれやすい妹のことで相談に乗ってる内にレナードといい感じになってしまっている。
早急に私と殿下の婚約破棄をしないといけない。殿下さえフリーになってしまえば、レナードよりかっこいいのだからハルもすぐ殿下が気になりだすはず。公式カプなんだし、きっとくっつく!
急がないと!
「ミレイラ?具合が悪いと聞いていたが、よくなったの、か……、……は?」
体調が悪いと国王の誕生パーティーへの参加を辞退していた私が現れたことに殿下は驚いてたようだったが、私の手元を見てもっと驚いていた。
私はそんな彼を無視をして、殿下と話していた男性に話しかける。
「あなたの子どもです」
私はまだ乳離れも出来ていない赤子を抱いてそのとある男性に突きつけていた。
とある男性とは隣国の王配だ。
実は私、こちらの王配さんと噂になったことがある。私がコルセットの締め過ぎで気分が悪くなったところを休憩室に連れて行ってもらったのを、人に見られてしまったのだ。あの時は各家の力で握りつぶしたけれど、まだ記憶に残っている人も多い出来事だ。
そんな中でコレ。
赤ちゃんはグレイシー家が支援している孤児院から王配さんと似た髪色の子を適当に見繕ってきた。
コレは婚約関係どころか国際関係をぶち壊す奥の手だ。出来ればこの手は使いたくなかった。
王配との間に子どもが出来ていたと信じられても破滅、嘘だとバレてもそれはそれで破滅。どう転んでも破滅すぎて、社交界どころか家からも追放されそうな気がする。絶対やめた方がいい。
でもそうやって冷静な自分が言うのに、推しカプを求める自分が止められなかった。
全てはそう、推しカプ成立のため!
「僕の、子ども……?」
「そうです。顔をよく見てあげてください」
「……リ、リシェル!リシェル、来てくれ!」
リシェルというのは隣国の女王陛下の名前だ。
こわごわと近寄って来た王配さんが赤ちゃんの顔を覗き込んで、はっとした顔をすると大声でその名前を呼んだ。
すると、紺色のドレスを身に着けた女性がこちらにやってきた。女王陛下だ。
なんだか、前に見た時よりも痩せたような気がする。
「見てくれリシェル。僕たちの可愛い子だよ。ようやく見つかったんだ!ミレイラ嬢が見つけてきてくれた!」
ん……?
「信じられない……!本当にキャシーなの!?」
「この右手首の三つ並んだ黒子に、王族特有の紫の瞳。そして、僕譲りのこの髪の色!間違いない、僕たちの可愛いキャサリンだ!」
「ああ、神様!」
隣国の国王夫妻が盛り上がってるところ悪いけど、私たちはついていけてない。
涙混じりに赤子を抱きしめている彼らに、「すまない……」殿下が割って入った。
「少し状況についていけていない。どなたか説明をいただけないだろうか?」
さ、さすが殿下!それは私が今一番聞きたかったことだ。
やはり出来る男は違う。殿下こそ主人公とくっつくに相応しい!
私が内心で沸き立っていると、殿下の質問に王配さんが答えてくれた。
「お恥ずかしい話ではあるのですが、我が国ではいまだ女性の王位継承に反対の声がありまして……。それで、その反対派にこの子を攫われてしまったのです」
「それはなんと……」
「首謀者は捕らえましたが、この子の行方だけは分からず……。途方に暮れていたところをミレイラ様が見つけ出してくださった次第です。本当にありがとうございました……!」
「このご恩は忘れません。わが国は今後貴国へのどんな助力や協力も惜しみませんわ」
女王陛下も私の手を取ってお礼を言い出す始末。
いや、知らんかった!!そんな事全ッ然知らんかったけど!!
だって適当に条件の合う子どもの中から選んできただけだし、それがまさか隣の国のお姫様とか夢にも思わないでしょ……。
というか、このパターンってまさか……。
そう、嫌な予感というのは当たるもの。隣にいた殿下が私の肩をがっしりと抱き寄せた。
「お前は本当に面白い。次々と俺の予測のつかないことをやってのける」
「そ、それほどでもありませんわぁ……」
「お前と国を治める日が来るのが楽しみだ。愛しているぞミレイラ」
▼エリックからミレイラへの好感度が限界突破した!
こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかったのに!
あっ、なんかレナードとハルが仲良さそうに寄り添ってこっちを見てる。
ぐぎぎと、彼らを見ていると殿下。
「またあいつらばっかり見て……。おい、俺は絶対に負けないからな」
と。
え、殿下まじ……?まじで私のこと好きなの……?
元々殿下のことは嫌いじゃない。それなのにそんなことをされたら、満更でもなくなってしまう。
推しカプか最優先だったはずなのに、私の心は揺れ動き始めてしまっていた。




