先祖返りの吸血鬼領主は、気ままに研究がしたい
それから半年が経過した。この半年でカルンスタイン領は、大きく発展した。
港街及び造船所の完成。住人用の建物も完成しており、港もしっかりと完成している。造船所にて、大型の漁船の製造を進んでおり、一気に何十人も作業ができる大型船が完成しようとしていた。
それとは別に小型の漁船も購入して配置されている。ここで漁業をする漁師に購入して貰うという形で置いている。実際既に購入を申し出る声が出ているので、その契約を進めているところだった。
港街が機能するようになれば、海洋調査に加えて漁業も進んでいく事にカルンスタイン領内の食料自給率が上がる。街としての機能が順調に育つ事を表していた。
中央区の完成。まだ領民用の家の建設は続いているが、領民になる予定の世帯数分の家は確保されている。現在建設しているのは、より多世帯が住む事を想定する集合住宅だ。少し高い建造物になるため、慎重に建設が進められていた。
その他に空き地がいくつかあるが、これは建設したい店舗などがあれば提供するための土地用だ。通りに面しているところが多いので、店を構えるには丁度良い。
駅の完成。ジェニファーが指揮を執り、効率良く進めていた駅の建設は無事に完了した。線路の敷設も終わり、同時に進められていた通話線と中継基地の建設も終わった。おかげで、カルンスタイン領にも通話機を設置する事が出来る。
これにより王都との連絡手段が増える事になった。この辺りはフィアンナが積極的に動いた事もあり、しっかりと確保する事が出来ている。このメリットはガンドルフなどとの情報共有が格段に早くなった事だ。
総合研究室の報告なども口頭である程度先に共有する事が出来るようになったので、前よりも共有が密に行われる事になる。
そして、何よりも学術都市の原型が完成した。教員塔の建設から校舎の建設、研究棟の建設、寮の建設まで全てが一通り完成し、学術都市の学園区とは別に運動区と実践区と購買区が追加されている。どれも予定より大きな区になっているのに加えて、複数建設されていた。
予定よりも増設しているため、この作業にはセレーネも参加し、急ピッチで進められた。セレーネとしてもここで学術都市の開設が遅れるよりは自分も作業した方が良い上に、若干建設方法などが気になっていたため良い経験になるという事で自分から進み出た。
ここから改築などは繰り返す事になるが、それは学術都市が機能してから起こる問題などに対するもの。現状では対策の取りようがない。取れる対策は全て行っているからという事もある。
学術都市の教師陣は、ミルズとレイアーが中心となってスカウトを進めていた。リンド達からの推薦もあるので、学術都市として機能するのも時間の問題となっている。ミルズが学術都市の理事長を務めるため、セレーネとしても安心して任せる事が出来た。
これらが完成した事により、カルンスタイン領はようやく本来の機能を発揮する事になる。
これを記念してレッドブラッドでは、宴が開かれた。
『あ~……これって皆に聞こえてる?』
セレーネが振動魔術の【拡声】を発動しながら声を出すと、遠くの方の領民達が大きな声を上げた。
『聞こえてるね。さて、今日は記念するべき日。レッドブラッド及び学術都市が完成した日。職人の皆は今日まで一生懸命働き続けてくれてありがとう。これからもよろしくね』
職人達が苦笑いしながら雄叫びを上げる。ここまでも大分重労働だったが、これからも重労働はあるという事がセレーネの口から出たからだ。
そして、これは冗談ではない。今後も建設するものはある上に、現在も建設中だからだ。
『そして、他の領からこっちに移り住んでくれた皆。カルンスタイン領の領民としてやっていく決意をしてくれた事に感謝します。本当にありがとう。これからもよろしくね』
これに領民達が雄叫びを上げる。
セレーネへの全幅の信頼。これは魔王の襲撃時に領民達を一気に救った事が要因だった。全員をしっかりと救い、街も守る。これをやり遂げたセレーネへの信頼度はかなり高い。
『それじゃあ、皆飲み物は持ったね。カルンスタイン領完成を記念して、乾杯!』
『『乾杯!!』』
『じゃあ、宴を楽しんでね。私は研究研究』
セレーネが家に帰ろうとすると、即座に進路をミュゼルに塞がれる。
「ちゃ、ちゃんと参加しようね……」
「えぇ~……」
「領民との触れ合いも領主として重要な仕事よ。お父様も時折街に赴く事があるし、領に戻ったら街を歩いているらしいもの」
「私達も一緒にいてあげるから、ちゃんと参加するわよ」
ミュゼルだけでなく、ユイとフェリシアにも諭されたため、セレーネは大人しく宴に参加する事にした。領民との触れ合いが嫌な訳では無いが、この大騒ぎの中に入るのは、やはり気が進まない。そもそもそういう事が好きではないから、貴族のパーティーにすら出席にしないのだ。そもそも真祖という事もあって、ラングリドが全て断っていたのだが、それを抜きにしても好きではない。
セレーネは、会場となっている街を歩いて領民達と会話していく。元々持つ雰囲気が話しやすさにも繋がっているため、領民達はセレーネに対して気軽に接してくる。
セレーネは、これから領主としての道を一歩ずつ進んでいき、研究者としての道を大股で進んでいく。永劫の時の中で、支えてくれる家族達と一緒に。
時に忙しく、思うようにいかない人生の中でセレーネが思う事はただ一つ。
気ままにゆったり研究したいなぁ




