魔力の引っ張りだし
セレーネとテレサが理論の構築をしている間、フェリシアとナタリア、マリア、ルリナは、レッドブラッドから少し離れた平原で【凍結結界】を使い魔力を消費していた。
フェリシアは、良い機会なので【凍結結界】の派生形を考える事にした。【凍結結界】はあくまでサポート用の魔術。氷魔術を使う速度を上げる事が出来るというものと自分の周囲に入った物質の熱を奪うという副次効果だけ。だが、その速度が異常であり、最大出力の場合は、入ったものは瞬間凍結される程の凍結速度となる。
フェリシアが作り出す派生形は、ここから氷魔術だけでなく雷魔術の発動のサポートだ。細かい氷などがぶつかり合う事で発生する電荷を利用して【凍結結界】の内部で雷を作る。これ自体はマリアとの共闘などで利用した事がある。
これを正確に引き起こすために、少し弄る必要がある。
(風魔術でサポート……いや、温度差で空気が動いている……私の周囲は極端に冷却されて、その分の熱が外に排出されるからだわ。排出される熱は、私が体温を維持するための熱を差し引いたもの。それでもかなりの高温になる。あれ? これって風魔術のサポートにもなるわよね……それに外の高温は火魔術のサポートになる……氷、雷、風、火、これらの魔術をサポートする魔術……それが【凍結結界】の真髄? 魔術の発動地点を正確に操作しないといけないけれど、それくらいなら私でも出来る。【凍結結界】の外側は私の魔術の発動地点に出来るギリギリの地点……つまり【凍結結界】の外側で火魔術。中間地点で風魔術。内部で氷魔術と雷魔術の発動をサポート出来るって事になる。これらを安定して出すには、温度差をしっかりと制御しつつ、維持する形にしないと)
フェリシアは、頭の中で【凍結結界】の改良を進めながら魔力を急速消費していく。わざと燃費を悪くしているので、魔力の消費速度はかなり早く、しばらくして魔力が枯渇状態になり膝を突く事になる。
その状態になった瞬間、すぐにマリアがフェリシアの傍に移動して身体を支える。
「大丈夫ですか?」
「ええ……大分気分が悪いけれどね……ここから魔力の発生を見極めるのよね……」
「はい。私がお身体を支えますので、自身の中に集中して下さい」
「頼むわ」
フェリシアは、自分の中に集中して魔力の動きを確認する。眷属も魔力の回復は早い。しっかりと見極めるには一瞬も気を抜けない。
フェリシアの中で魔力が滲み出てくる。それは、魔力回復の起こり。フェリシアはまだ動かない。これは始まりに過ぎず、フェリシアが掴み取らなければいけないのは、この次に起こる魔力の噴き出しだ。噴き出して出た濃密な魔力を掴み取って引き摺り出す。それが魔力を引き摺り出すのに必要な手段だった。
その感覚を得て、その向こうにある魔力の世界を感じ取れれば、魔力の生成に近づける。
「あっ……失敗したわ。難しいわね」
「こちらも失敗しました。かなりシビアなようです。ですが、魔力の起こりから噴き出し。その向こうにある魔力の塊は薄らと感じとる事が出来たと思います」
「私は無理だったわ。もっと奥に集中すれば良かったのかしら。マリア、血を頂戴」
「はい」
フェリシアはマリアから吸血して、ある程度魔力を回復させる。最低限魔術を使えるまで回復してから、再び魔力を枯渇させて魔力回復の感覚を覚える。
フェリシアは、吸血から魔力の回復が出来るが、ナタリアはそうではない。だが、多少魔力が回復すれば枯渇状態からの回復を繰り返す事が出来る。多少危険が伴うが、これが一番感覚を掴みやすいからだ。
こうして魔力の回復を繰り返しながら、感覚を掴んでいく。
「あっ……出来たわ」
フェリシアは、噴き出した魔力を掴み取り引っ張り上げる事が出来た。そこから魔力が引き摺り出て来て、通常の回復よりも遙かに早く魔力が回復していく。身体中に魔力が満ちていくのを感じ取りながら、魔力が噴き出している向こう側を意識していた。
「何か……奥にある……海?」
「私も同じ印象です。問題は、ここを繋げる方法です」
「回復する時の感覚は魔力圧縮のような感じがするわ」
「同感です。一瞬魔力を圧縮し、穴を広げるような感じかと」
「感覚は分かるけれど……これを再現するというのはかなり難しいわよね。加えて、これを毎回掴み取るのも厳しいわ」
「はい。本当にタイミングがシビア過ぎます。これを毎回掴み取れるかどうかで言えば、かなり厳しいでしょう。テレサ様が毎回は出来ないと仰っていた理由が分かりました。そして、これを魔術的に再現する方法となると……」
感覚を得る事が出来た。しかし、そこから生成するための魔術に繋げる方法はまだ分からなかった。魔力の世界というよりも魔力の海と表現するべき場所へのアクセス。
これがセレーネの研究を完成させるためには必要だった。海から水を引き入れるための穴を開ける瞬間、魔力の圧縮が起こる。これがフェリシアとナタリアの共通した認識だ。
「魔力圧縮から向こうに繋げて引っ張り出す。これが一連の流れよね」
「圧縮した瞬間に穴を開くという事が必要です。私達の身体では、常に穴が開いた状態であるために、開く必要はありません」
「結局はそこで躓くのね。でも、感覚は分かったからセレーネに共有しましょう」
「はい。ルリナさん、フェリシア様を背負って頂けますか?」
「はい。お任せ下さい」
大分消耗しているフェリシアをルリナが背負い、フェリシア達はセレーネ達の元に戻っていく。




