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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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魔力の引き出し

 翌日。セレーネとナタリアに加えて、テレサも参加する事になった。


「私は戦闘魔術の方が得意だから、役に立たないと思うのだけど」

「逆逆。私とナタリアは、最近戦闘魔術の研究を全然してない事が多いから、別視点を持つお姉様が必要なの。まず今の研究概要がこれね」


 セレーネは黒板に貼られている概要をテレサに見せる。概要を読み込んでいくと、テレサは内心困惑が強くなっていた。


「これは……実現出来るのかしら?」

「分かんない。でも、理論的にはあり得そうでしょ?」

「そうね。辻褄が合う点が多いわ。私も魔力が少なくなったときに、胸の一点から魔力が溢れてくるのを感じた事があるもの。それを実感してから、そこから無理矢理魔力を引き出す事が出来た事もあったわ」


 テレサがそう言った瞬間、セレーネとナタリアの目が光る。


「いつ!? どんな時!? 今も出来るの!?」

「いえ、セレーネ様! その前に引き出し方から聞くのが良いかと!」

「ああ、そうか……お姉様! 早く早く!」


 子供のようにはしゃいでいるセレーネの頭を撫でながら、テレサはルリナに視線を向ける。すると、ルリナはまだ何も書かれていない黒板をテレサの傍に移動させる。

 そこにテレサは人体の上半身を描く。


「セレーネ達の観測通り、魔力はここから生まれているわ。私もここから出て来るのを感じ取ったから。私が感じ取った時は、大規模な魔物の群れを倒すために広範囲に魔術を使用した時よ。生成よりも消費が大幅に上回った結果、魔力が底を尽きかけた時ね。じんわりと、でも確かにそこから魔力が溢れてきたわ。温泉を掘り当てた後滲み出て来ているのに近いかしら。私という湯船が大きすぎてそのくらいの規模に思えてしまうけれど、溢れるという表現は間違っていないと思うわ」

「枯渇で溢れかえる……私には覚えがないかも」

「お嬢様は吸血衝動があり、その当時に集中する事が出来ないというのが大きいかと。加えて、今も続けている封印のおかげで枯渇という状態に陥りにくくなっています」

「ああ、そっか」


 カノンが出した意見は、かなり的を射ていた。セレーネに覚えがないという理由に対して、これ程までの説得力がある説はなかった。


「私は基本的に魔力を温存して使うことが多いので、同様にその感覚はありませんでした。カノンはどう?」


 魔力の総量が少ないという点において、獣人族ほど枯渇が身近な種族はいない。眷属になる前は、カノンもそういう状態になった事が多々ある。しかし、獣人族にはもう一つ特徴があった。それは魔力の回復速度だ。


「私達の回復速度だと、その様子を確認する事は出来ないかも。一気に回復するから」

「観測がしやすい要因でもあったけど、自覚するには早すぎるか……」

「私もカノンさんと同じです。眷属になった後も、使う量よりも回復する量が多くなりますので、実感はありません」


 犬人族であるルリナもカノンと同様に回復量が多い。テレサに仕えているため、カノンよりも戦闘を行う事が多いルリナも眷属になった結果消費よりも回復が早くなってしまい、テレサのような感覚を経験する事は出来ていなかった。


「条件的にテレサ様や私のような者が観測しやすい事なのかもしれないですね。それならそれでもっと研究があっても良い気がしますが……」

「一時期心臓が魔力を生成しているという話がなかったかしら? 私達の代では、そこまで広がっていなかったけれど」

「……なるほど。そこから深く研究されなかったという事ですか。納得です。魔力を引き出す……その際に身体から力が抜けるなどの問題はありませんでしたか? これが出来るようになれば、魔力枯渇で死にかけるという事がなくなるかもしれません」

「そういうものはなかったわ。寧ろ、身体に活力が戻る感覚ね。これは魔力の枯渇状態から解放されたからだと思うわ。それとあまり再現性がないのよ。私が出来たのも二、三度。感覚は……そうね。最初に飛び出た紐を掴む感じかしら」

「そこから引っ張り上げると魔力が一気に増える?」

「そうよ」


 いつでも利用出来るような優しいものではなく、タイミングが重要となる技術である事が、ここで分かった。


「副作用的なものも感じ取れなかったわ。恐らく眷属である事が要因の一つじゃないかしら。普通の人間なら、一時的に魔力の回復速度が落ちるとかがあり得そうだわ。私の場合、落ちても一般人程度になるくらいにじゃないかしら。元々そういう感覚を持っていたから、強い違和感とかは覚えなかったけれど、今にして考えればそういう感じだったような気もしなくはないわ」

「なるほど……これは技術として広めたい事ではありますが、生半可な訓練では身につきそうにもありませんね」

「そうね。一応、論文にしてまとめた方が良いかしら?」

「お願いします」

「分かったわ」


 テレサが味わった感覚。魔力枯渇時にのみ可能な魔力の引き出し。これを上手く再現出来れば、魔力を生成する事が可能になる。

 テレサを引き込んだ事で、一気に近づいた完成形。問題はその再現が出来るかが分からないという事。テレサですら、毎回再現をする事が出来る訳では無い。タイミングを見誤れば、失敗する。寧ろ、失敗する事の方が多い。

 これを魔術道具で再現する。これが人間の技術よりも魔術道具の方が再現しやすい現象であれば良いが、逆である可能性も十分にある。

 その辺りの見極めのためにセレーネ達は理論から固める事にした。

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