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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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新研究

 それから一ヶ月間、セレーネは研究と視察で過ごしていった。

 その中でセレーネが開発したのは、新しい錬金術を安定して行うための設備だった。これは、セレーネ専用の工業区設置されている。釜を使わないので、どこでも出来る錬金術ではあるが、大規模な錬金が出来るようにするために設備が作られた。

 また、新素材スライムを有効活用するための設備も作られた。新素材スライムに材料が投入され、調合された素材をコンベアで運び思考機により分析するという流れが出来たものだ。

 これは新素材スライムを機械に設置する事で稼働するもので、常に稼働しているものではない。さすがに何が出来るか分からないので、ある程度管理する人がいるときに稼働させる事になる。セレーネは、錬金術を使う時に置いて、カノンやマリアに管理させるという方法で使っている。

 他にも医療用健康診断機や家畜用の万能魔術薬を完成させ、領内にて試用が始まった。地下道の中でも魔動列車の試運転が始まり、現状は異常なしとなっている。

 ゴーレムの動力の改善なども行い、細かいものが完成に近づいたところで、セレーネは新しい研究を始める。

 首に赤い結晶が光るシンプルなネックレスを着けたセレーネは、ナタリアの研究室に来ていた。そこでナタリアに開発したいものの概要が書かれた紙束を渡した。

 それを読んでいるナタリアは、早々に頭を抱えながら、全てをじっくり読んで頭に入れていった。


「これは……中々に狂気の発想となりますが……」

「出来ないかな?」

「う~ん……いえ、この理論がその通りであれば出来るとは思います。ただし、その製造自体がかなり難易度が高いと思いますが」


 セレーネが開発したいもの。それは、魔力を吸収して溜め込む魔力結晶ではなく魔力を生成して溜め込む魔力結晶。つまり、魔力の発生を魔術で再現しようというものだった。

 これが狂気と言われる理由はただ一点にある。現在魔力の生成器官は発見されていないという事。それをどう再現するのか。それはセレーネが立てた仮説にある。


「魔力を生産が魂由来のもの。そもそも魂の存在自体が懐疑的ですが、身体の中で最も魔力が集中している箇所を調べ、そこが特定の臓器がある場所とならなかったため、魂と仮定したですか……納得出来る内容ではあります」

「でしょ? ドラゴンや他の魔物を解体して、内臓を調べる機会があったから思い至ったんだけど、そもそも全ての生物に魔力を生成する器官はないでしょ? 臓器の一つがそれを担ってるなら、魔力が多くなるはず。予想では心臓だったから、位置的に心臓になるだろうって思って、私の中で魔力が一番多い箇所を調べたの。そうしたら、心臓よりも少しズレて食道とかの間辺りになってたの。

 一応、魔王の心臓に魔力結晶が出来る理由にはなるけど、ここに特定の臓器がない以上、この辺りに何かが重なってるってなるでしょ? そこから色々と考えて一番しっくりくるのが魂かなって。もうちょっと大胆な理論も一応思いついてる」

「聞きましょう」


 ナタリアは、セレーネの話を理解するためにしっかりと耳を傾ける。


「世界がいくつも重なってる」

「ほう?」

「多重魔術陣とかは積層状態で重ねてる形だけど、世界は完全に同一軸にある。これが魔力世界。生物と重なる場所が魔力が生まれる条件となる世界。これが枯渇すると、魔力世界内で魔力がなくなるって状態になるから、生物であるという状態が崩れるのかも」

「突飛な発想ですが、中々否定しきれないものも感じますね。私としては好きな仮定です。証明出来る方法があれば、もっと良いですが、こればかりはセレーネ様の妄想と言われても仕方ないですね」

「まぁね。だから、私としては魂説が一番かなって」

「そうですね。これを作るのであれば、それが一番でしょう。ですが、問題が一つ。擬似的な魂の製造という点が一番の難点です。この辺りをしっかりと詰めていく事が大事でしょう。これが出来れば、魔力結晶に吸収させる魔力を安定して出す事が出来ます。周辺の魔力の枯渇というあり得るかもしれない事態に対策が出来ますので、私もこの研究には協力させて頂きます」

「ありがとう。じゃあ、まずは魂の存在……いや、魂が生成してる魔力の機構を考えていこう」


 セレーネがそう言うと、カノンが移動式の黒板を持ってくる。


「まず魔力の生成だけど、私が魔術を利用したら身体の中の魔力が少し薄くなったの。そして、胸のこの辺りからまた魔力が広がって元に戻った。これが魂の考えの理由ね」

「セレーネ様の魔力量ですと、魔力が生成される瞬間が分かりにくいですね。ゼノビアを呼びましょう。犬人族なら、魔力が少ないのですぐに枯渇寸前まで行けます」

「うちの研究員で良いんじゃない?」

「総合研究室の研究員は、そこそこ魔力が多いので。カノンが眷属でなければ頼むのですが」

「魔力消費よりも生成が早いから、私は向かないと思うけど」

「いつの間にそんな事になってるのよ……ひとまず、ゼノビアか……あっ、ユリーナで良いですね。ユリーナなら、ここにいますし呼びましょう」


 ナタリアがベルを鳴らすと、三十秒ほどでユリーナがやって来る。


「お待たせしました。ひとまず身体強化で一気に減らせば良いですか?」

「うん。ちょっと待ってね」


 セレーネはナタリアの研究室に思考機と魔力分析機を置く。魔力分析機でユリーナを捉えて、【投影結界】で魔力の濃さを見る。


「今がこんな状態。全身に行き渡ってるけど、胸の一点。ここが一番濃い」

「なるほど。ユリーナお願い」

「分かった」


 ユリーナが身体強化を全力で行い魔力を急速消費していく。すると、【投影結界】に映されている魔力が、どんどんと減っていくのが分かる。


「ふぅ……」


 魔力をほぼ枯渇した状態にしたユリーナは、短く息を吐いて身体強化を解く。すると、ユリーナの胸付近からじんわりと魔力が出て来始める。最初は胸付近のみに広がり、ある程度溜まると全身に行き渡っていく。これが枯渇した魔力の戻り方だった。


「なるほど……こうして目で見ると、少し思い付きそうなものがありますね」

「でしょ!?」

「ユリーナもう一回」

「別途でお金頂戴よ?」

「まぁ、本来の勤務外の事だから良いよ。セレーネ様もよろしいですよね?」

「うん」


 セレーネによって、別途で報酬が出る事が確約されたので、ユリーナは何度も魔力を枯渇寸前まで消費する事になった。お金が出るという事もありユリーナは頑張って研究に協力した。

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