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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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テレサとメアリーゼ

 テレサと一緒にテレサの部屋に来たメアリーゼは、部屋をキョロキョロと見回していた。


「何もないのね」

「来たばかりだもの。ルリナ、お茶を用意してあげて」

「かしこまりました」


 ルリナがお茶を用意している間に、テレサはテーブルに着く。それを見て、メアリーゼもテーブルに着いた。


「テレサの仕事はもう終わったの?」

「追加分も全て終わらせたわ。後は、他の護衛がいるから問題ないのよ。おかげで、ようやくセレーネの元に戻る事が出来たわ。メアリーゼは、王都での仕事は良かったのかしら? グリーン公爵の娘として、大分良い地位にはいたのでしょう? こっちでは魔術師団の団長ではあるけれど、向こうの方が良い地位になれたかもしれないわよ」

「ほとんどお母様の命令だもの。私に断る権利はないわ。それに王都では、一魔術師でしかなかったもの。そこまで良い地位ではないのよ。まぁ、昇進は確約されていたけれどね」


 立場で言えば、まだ魔術師の中の一人というだけであったが、グリーン公爵家の人間であり、魔術師としても優秀なメアリーゼは、後々に魔術師達を率いる立場が確約される程だった。

 その中で、ヒルデブランドからカルンスタイン領に行くように言われた時には、メアリーゼもかなり困惑したが、魔術師団の団長のポストとカルンスタイン領がこれから発展する時の事を考えれば、自分がそこにいる事がグリーン公爵家のためにも繋がると分かり、そのまま受け入れた。

 そして、カルンスタイン領にはテレサがいる。そこが分かったため、メアリーゼは、ここに来るまでの馬車で上機嫌になっていたのだった。

 この話の間にルリナがお茶とお茶菓子を用意して並べた。


「ありがとう、ルリナ。こっちの地位も良いものよ。昇進が早まったと考えれば、納得もしやすいわ。そもそも私は家督を継げないもの。こっちでこの地位にいた方が暮らしやすいわ。あの人も了承したしね」

「そういえば、結婚していたのね」

「な、何よ……悪い? 公爵家の娘として、この手の話はよくあるもの。恋愛感情はないけれど、そうしないといけないのよ。テレサなら分かるでしょう?」


 家のための結婚。これは貴族として、ごく当たり前の考えだった。そのため、メアリーゼも今の旦那と恋愛関係があった訳では無い。そして、互い愛という感情は大してなかった。貴族の家では珍しい事でもない。表面上は愛しているように見せているが、互いの内心は分かっている。これから先愛が芽生える事もあるかもしれないが、現状はないのだ。

 そして、貴族の夫婦がそういう関係になる可能性があるという事をテレサも知っていたため、その理解だけは出来た。


「テレサは早々にそういうものを断っていたみたいだけれど。思い人でもいるの?」

「別にいないわね。強いて言えば、セレーネよ。私はあの子のために生きると決めているから」

「……相変わらず、重い姉愛ね」

「そもそもクリムソンの家は、割と緩いのよね。それもこれも兄さんがしっかりとしているからだと思うけれど。そんな兄さんだって、イリステラ様との結婚は、恋愛結婚ではないけれど互いに愛し合っているみたいだもの。セレーネに至っては、三人と結婚しているけれど、全員女性だから、普通の結婚とは言えないわね」

「ある意味では家の格を上げるための結婚でもあるでしょう? 王家、ルージュ公爵家、ウルトラマリン伯爵家との結婚だもの。それに加えて、自分は辺境伯で侯爵家の娘になる訳だし」

「あの子達は、どちらかと言えば恋愛結婚よね。互いに互いを愛し合っているもの。特にフェリシアとはね」

「テレサはもう結婚する気はないの?」

「ないわ。そもそも眷属だもの。今更普通の人と恋愛はしないわね。クリムソンはお兄様いるし、する必要がないというのもあるわ」

「そう……」


 メアリーゼは、少しだけ悲しげな表情をする。しかし、テレサにはその理由が分からなかった。


「そういえば、テレサはこっちで何をするの? 魔術師団に入る?」

「総合研究室の所属になったのよ。普通に研究するわ。元々戦闘魔術が得意ではあるけれど、それ以上に風魔術を極めたいという欲が強いから」

「そう……もし来たくなったらいつでも言って良いわよ。テレサなら歓迎するわ」

「その気になったらするわ。それにしても、メアリーゼは変わったわね」

「そうかしら……?」


 あまり自覚のないメアリーゼは、テレサに変わったと言われてもピンと来ていなかった。


「前よりも丸くなったわ。変につっかかってこなくなったもの」

「うっ……さすがに、私も大人になるわよ」


 メアリーゼは恥ずかしそうにそう言った。学生時代のメアリーゼで印象が止まっているテレサからすれば、こうして普通に会話が出来ているという事が少し意外だと感じていた。


「あの頃は本当に子供だったのよ。テレサは、一切こっちを見ないし」

「そうだったかしら?」

「テレサ様は、基本的にご自身の勉強などを優先していらっしゃいました。そのためメアリーゼ様が仕掛けてくる勝負にも、あまり興味を抱いてはいらっしゃいませんでした」


 常にテレサと一緒に居たルリナもそう認識していたため、テレサも自分がそうだったのだと納得せざるを得なかった。


「そう。それは悪い事をしたわね。あまり他人との競争に興味がないのよ。競い合う事が互いを高める事に繋がるのは分かるけれど、それ以上に自分でやるのが一番だと思っていたから」

「全く……まぁ、良いわ。これからこっちで一緒にやっていく事になるんだもの。仲良くやりましょう」

「仕事が違うから一緒にはやらないと思うのだけど」

「…………本当、そういうところは変わらないわね。領のために働くのは同じでしょう!? なら、一緒にやるで良いのよ!」

「そうね。そういう意味なら分かるわ。よろしく」

「ええ」


 学生時代は、一方的なライバル視などがあったものの大人になった今ではそんな事もなく、仲が深まりそうな予感がしていた。少なくとも、ルリナはそう感じていた。

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