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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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解剖分析

 翌週。細かい話し合いや魔王関連の調査が進んでいき、会合が終わる。リンド達が帰って行くのを見送ったセレーネは、冷凍保存されている魔王の分析を始める事にした。会合で決まった事などは、マリアナ達がまとめて、順次進めていく。

 この分析にはカノンとナタリアも同席する。


「ナタリアが調べた感じどう?」

「鱗や牙、爪などを調べたところ、通常のドラゴンよりも頑丈で強固な造りになっているようです。今回の魔王は火竜となりますので、火に対する耐性が強くなっています。加工にはかなり苦労すると思いますが、ミカエラに任せています」

「そっか。【空間圧縮】とかなら問答無用で押し潰す事が出来るから、そこら辺は関係ないって感じかな。それじゃあ、他の内臓とかを調べようか」

「はい」


 セレーネは、魔王から得られた内臓などを運び込んで貰い、そこから分析を進めようとする。

 まず調べるのは、一番重要な内臓である心臓だ。巨体を支える心臓であるため、その心臓は人間のものとは桁違いに大きい。セレーネよりも遙かに大きな心臓となるため、すでに半分に分けられている。


「あれ? ねぇ、ナタリア」

「はい。私も改めて見て気付きました。この心臓の組織に魔力結晶が含まれているようです。私達が作る魔力結晶は基礎魔力水の魔力をスライムの体液で包み結晶化させたものですが、これは天然物と見るべきでしょうか。事前に魔王に関する論文などを集めて読んだのですが、魔力を多く持つ魔王にはよく見られるものらしいです。

 ただ、これを私達が利用するには少々粒が小さく、魔力の蓄積も悪いとの事です。しっかりと利用するなら、これを錬金術で合成しなくてはいけないそうです」

「それなら、スライムの方がコスト的な面でも優秀だね。私の心臓もこんな感じになるのかな?」

「いえ、これは魔王となり、魔力が急激に増えた事で魔力の循環が上手く行えず、心臓に蓄積してしまった故に出来るものらしいです。セレーネ様は、生まれつき魔力が高く、それに適した身体をお持ちですので、こうなりはしないかと」

「そっか。他に特徴的なところはないかな?」


 セレーネは、カノンの手を借りながら心臓を細かく切っていく。そして、それを分析にかけて、他のドラゴンの心臓との違いを思考機で調べる。その間に、他の内臓に何かがないのかを調べる。

 その中で、セレーネが興味を抱いたのは、人間の中にはないものである火炎袋だった。興味を抱いた理由は、人間の中にはないものだからではなく、その内臓に魔術陣が刻まれているからだった。


「私の身体みたい。これは……炎を溜め込んで放つものかな。燃焼と増幅の効果がある。態々体内で生成する必要はあるのかな……」

「その秘密はこちらにもありそうです」


 そう言ってナタリアは、ドラゴンの喉にあたる部分を見せる。そこには、火炎袋と同じように魔術陣が刻まれていた。そこにあったのは増幅を司るものだった。


「つまり、火炎袋から炎を排出して、通り道の喉で更に増幅していくって感じか。外で魔術陣を展開するよりも攻撃の規模とかが分かりにくいっていうメリットはある感じかな。他のドラゴンのやつは?」

「こちらが、他のドラゴンの喉と火炎袋です」


 カノンが別の机に置いたものをセレーネが調べていく。


「火炎袋から違うね。規模も何もかも違う。魔王として覚醒した場合、この辺りも強化されるって感じかな。もしくは、この形で生まれた存在が魔王となり得るか」

「恐らくは後者の可能性が高いかと。特殊な個体が魔王となるという風に考える方が自然です」

「なるほどね。う~ん……これなら私達でも使えそうかな。カノン、紙」

「はい」


 カノンが渡してくれる紙に、セレーネはドラゴンの内臓に刻まれた魔術陣を転写する。


「最適化の前にしっかり分析かな。利用方法とかはしっかりと確立したいし。他の内臓は、何か変わったところある?」

「いえ、特にはありません。通常のドラゴンを巨大化したようなものです」

「そっか。脳も?」

「はい。通常のドラゴンよりも賢いかもしれませんが、見た目には何も現れていません」

「う~ん……脳への影響は見た目に出ないかぁ……魔術陣でもあれば、色々面白かったのに」

「魔王の解剖の論文はありますが、そのどれでも脳に魔術陣があるというものはありませんでした。ドラゴンに関しては、大体こうした袋を持っているようです。何も持っていないドラゴンもいますが」

「口から吐き出すようなドラゴンならって事ね。次は骨に移ろう。ナタリアは、肉の方をお願い」

「はい」


 内臓に続いて骨の分析に移る。骨自体もかなり巨大なので、カノンに手伝って貰いながらの分析となっていた。


「硬い……まぁ、骨だし当たり前か。う~ん……特に魔術陣があるような感じもない……カノン、割れる?」

「少々お待ちください」


 カノンは鑿を持ち、骨に向かって振り下ろした。身体強化もしているため、ほんの少しだけ鑿が突き刺さった。そこの鑿にカノンが拳を叩きつけて骨を割る。


(金槌使えば良いのに……)


 作業をしながら見ていたナタリアは、内心苦笑していた。

 そんなナタリアには気付かず、セレーネは割れた骨を見る。


「如何でしょうか?」

「ありがとう。骨の中も大体普通かな。まぁ、巨大過ぎる時点で普通ではないけど。カノンがへし折れないくらいには頑丈だから、身体を支えられるだけのものではあるのかな。次、羽持って来て」

「はい」


 骨に変わりがない事を確認したセレーネは、次に羽を確認する。皮膜が張っている羽は、セレーネが叩いたくらいでは破れない程に頑丈だった。


「普通のドラゴンのは?」

「こちらです」


 強度の確認のために普通のドラゴンの方でも叩くが、そちらも破れない。


「さすがに、ここら辺は元々頑丈か。刃物」

「はい」


 カノンがナイフを受け取ったセレーネは皮膜を破るためにナイフを振り下ろしていく。どちらもかなり頑丈だが、通常のドラゴンの方は、何度も振り下ろされたナイフに負けて破れた。


「ふぅ……同じ箇所にしつこく何度も力を加えたら、さすがに破れるね。こっちは無理だけど。弓での対抗は中々に厳しそう。魔王になったら、ほぼ無理だろうね。全体的な頑丈さは上がってる感じかな。肉はどう?」

「食用として問題ないかと。特別な点は見受けられません」

「そっか。それじゃあ、これまで通り皆に振る舞う形で良いかな。成分分析はっと」


 思考機の前に来たセレーネは、その成分などをしっかりと確認する。


「魔力が多いくらいで、特に大きな変化はない……魔王になったからって、完全に他の生物になるって訳じゃないんだね」

「初期段階ですので、そこまで大きな変化はないのだと思います。人型になれば、このような大きな内臓などにはなりませんから」

「それもそっか。ここから魔王の弱点とかが分かれば良かったけど、そこまで都合良くはないよね。それなら他の人達が解剖した時に分かってるだろうし」

「ですが、こうしてセレーネ様が直に確認出来たという事は大きな経験となります」

「それもそっか。それじゃあ、しっかりとまとめないとね」


 セレーネは、この解剖で分かった事を紙にまとめるために、まずは乱雑にメモを取っていく。こうして、セレーネのいつもの日々が戻って来た。

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