魔術師団の話し合い
翌日。セレーネは、マリアナ、フィアンナ、ヒナタ、ヒルデブランド、リンド、ウィリアムと共に魔術師団に関する話を進めていた。マリアナに相談したところ、しっかりと話し合いを行っていき、どの程度の規模にするのか。命令系統はどうするのか。その辺りを突き詰める予定になっており、その話を聞いたリンドとウィリアムも話し合いに参加する事になった。
「魔術師団を作るとして、その選定基準も作った方が良い。魔術を最低限使えるというだけでなく、それをどの程度使えるのかが基準となるだろう」
「戦う相手も考えて決めると良い。その基準を魔王にすれば、それだけの人材が必要になってくる。この基準はしっかりと考えた方が良い。この地域なら魔物及び人にするべきだろう。外敵の存在が、魔物だけではなく外国からの侵攻者もあり得るからだ」
リンドとウィリアムが出す意見は、セレーネ達も頷ける内容だった。
「私くらい使える人って基準は高過ぎますか?」
「セレーネさんを基準にするのは高過ぎますね。一定以上の威力の魔術をどの程度連続で使えるかが一番分かり易い指標ではないでしょうか?」
「そうね。基準となる魔術は、広範囲殲滅型の戦闘魔術が良いでしょうね。それと治癒系統の魔術を扱える人員も欲しいわね。衛生兵としての役割が必要になるもの」
「なるほど……実際、今の魔術師達の運用はどんな感じなんですか?」
この辺りは、リンドとウィリアムが詳しいため、現在の運用状況を確かめるのに丁度良かった。
「現状は騎士団に組み込まれている。騎士団と共に行動しなければ、前衛が存在しないからだ。魔術師だけで相互的に防御していては、攻撃の密度が稼げないだろう」
「今回の魔王との戦いでも同じように行動していたのではないか? 騎士団ではその運用方法が基本だ。ベネットもそれに従っていただろう」
「確かにそうですね。それが一番安全だと私も思いました」
「命令系統は騎士団に統一するのが良いだろうな。その中で、魔術師を育成するための師団という形にするのが分かり易いだろう」
「あくまで騎士団の部隊として師団規模の魔術師を集めるという形だな」
「師団規模って相当な人数ですよね?」
「そうね。魔術師だけでその人数を集めるのは一苦労だから、ゆっくり考えれば良いと思うわ。ひとまず騎士団内にいる魔術師を集めて、説明をする事が必要ね」
「元々魔術師として優秀であるヒルデの娘を指揮系統に置く事である程度は安定するだろうな。ヒルデの娘であるメアリーゼは、魔術師の中でも優秀と有名だからな」
「そうなんですか?」
セレーネは初耳なので、そんなに有名なのかという疑問があった。
「私が言うのもなんだけど、結構有名よ。ただ研究者としてよりも戦闘員として有名だから、セレーネちゃんの耳には届かないかもしれないわね。テレサならメアリーゼの事をよく知っていると思うわよ」
「私も名前は耳にしました。何でも人間ながら魔力量が多く、他の魔術師の何倍も強いらしいです」
「お姉様よりも?」
「テレサとは良い勝負かもしれないわね。まぁ、眷属である分、向こうの方が上になるかもしれないわ」
人間と眷属では、魔力の総量が異なる。そのため純粋な力比べでは、人間が勝てる可能性はない。テレサが上になる理由はその辺りだ。
「そもそもの腕前は、ほとんど同じくらいのはずよ。テレサとは同級生だったはずだから、かなりライバル視しているのよね」
「へぇ~……多分、お姉様は全然していないですね」
セレーネから見たテレサは、そういった他人への興味が薄い。自分より優れている人がいようとも、その人に対する妬みや羨望などはない。
そして、これは他の人が見ても同じ答えを出すだろう。テレサ自身も実際にそこまでの考えを持っていない。セレーネに対する愛情はあるが、それ以外の人達に対して強い感情を抱く事はほとんどない。例外なのは身内に対してくらいだ。
それでも妬みなどは全くない。
「そうね。どう考えてもテレサがそこを気にするとは思わないわ。まぁ、大きなトラブルは起こさないと思うわ。そこまで馬鹿ではないはずだもの」
ヒルデブランドからすれば、自分の娘であるメアリーゼがテレサに絡む未来が見えるが、そのせいで大きなトラブルになるとは思っていなかった。メアリーゼもそこまで子供ではないというのがヒルデブランドの考えだ。
「取り敢えず、戦闘に特化した魔術師を育成するために修行法の構築もしないといけませんね。その辺りはメアリーゼがやってくれるのでしょうか?」
「そうね。そこから考えさせた方が支持を得られるはずだもの。セレーネも良いかしら?」
「はい。私はそこまで詳しくないので、その方が嬉しいです」
「後は、学術都市で育成した魔術師を受け入れて増加させる方法が一番良いかもしれないわね。せっかくの領の特徴になるのだもの」
「そうですね。その辺りの斡旋とかはしていこうかなと思います。人材育成の場として存在するわけですから」
「その辺りの流れは、ユイに任せると良い。そういう勉強もしてきたはずだ」
「はい。そのつもりです」
セレーネとリンドのユイへの評価は全く同じだった。こういった点に関してはユイに任せて制度を作らせるのが良い。それがユイの成長にも繋がるという点も大きかった。細部に関しては、マリアナなどに確認させれば良いというのもある。
そうして、カルンスタイン領における魔術師団の設立が完全に決まった。




