四人での会合
応接室に入ったセレーネ、テレサ、マリアナ、リンド、ヒナタ、ヒルデブランドは、三名ずつ対面になるように座る。
カノンは、中央のテーブルにお茶を並べてから退出する。
「さて、最初は予定通りに交易の話からだな。こちらとしては、このままこの形で進めていきたい。いずれは、交易の品数も増やしていく方向だな」
「こちらもその形が望ましいです。肥料なども売り出されましたので、そちらがお望みならこちらの品数を増やします」
「私のところも問題はないわ。ただ、魔物の素材に関してなのだけど、こっちで用意できるものが少し増えたわ。これが品目よ。欲しいものがあったら注文して頂戴」
ヒルデブランドが出した品目の紙にセレーネは軽く目を通す。珍しい素材ではないが、割と高頻度で使うものなどが増えていた。
実験で利用する事が多いセレーネとしては嬉しいものばかりだ。
「ナタリアと相談しておきます」
総合研究室と同時に注文した方が余計な手間が掛からない。セレーネ自身が総合研究室に所属していることもあり、この辺りはヒルデブランドも理解していた。
「こちらからも特に問題はありません。もうしばらくは、こちらから出荷する量は増えないという事だけです」
「それはこちらでも把握している。問題ない」
「こちらも問題ありません」
「こっちもよ」
そもそも開発途中であるレッドブラッド及びカルンスタイン領から必要以上に品数を増やして貰おう等とは三人とも考えていない。寧ろ、そのための支援のために自分達の方から増やそうと考えていた。
「そうだ。ゴーレムの方はどうだ? 今のところこちらの倉庫で働いているゴーレムに異変はない。他のゴーレムもこちらに貸し出すという事はしないか?」
リンドの提案は、馬型ゴーレムなどの貸し出しを始めないかというもの。倉庫整理のゴーレム達に問題がないという点などから、ゴーレムに対する信頼性は高くなってきている。
ここから他の領にも広める上で、ルージュ公爵領、スノーホワイト公爵領、グリーン公爵領がゴーレム運用のモデルケースとする事が、障害の一部を取り除く事に繋がると予想される。
リンドからの提案を受けて、そういう点を考えているのだと気付いたマリアナはセレーネに耳打ちする。
「悪い話ではないかと。使う場所を限定すれば、馬型ゴーレムが他の人の仕事を全て奪うというところには繋がりません。それぞれの家での運用に限定するというのが一番丸いかと思います。ゴーレムによる倉庫整理も合わせれば、他の領の領主も無視は出来ないかと」
「なるほどね。う~ん……保留でお願いします。もう少し安全性を突き詰めておきたいので。利用範囲を選定などももう少し突き詰めたいです」
「そこはセレーネが気の済むまでやってくれて構わない。そもそもセレーネの開発したものだからな。こちらから急かすという事はしない」
「ありがとうございます」
マリアナの言っている事は理解しているが、セレーネとしてはもう少し様子見はしたいところだった。マリアナもセレーネが気にしている事は重要な部分であると納得し、それ以上は言わない。
「次は魔動列車の話だな。全ての領からここに繋がるわけだが、今のところ問題はなしか?」
「はい。ジェニファーがしっかりと監督してくれている事もあり、特に大きな問題はありません。レッドブラッドに入る前に見た通りです」
これはリンド、ヒナタ、ヒルデブランドの三人に共通する事だが、レッドブラッドに入る前に工事中の駅は視界に入っている。寧ろ、しっかりと注目していたくらいだ。
ジェニファーもレッドブラッドの住人達同様にセレーネの転移で避難などをした。そして、一緒に戻って来てもいるので、既に工事を再開している。今回の魔王襲来で遅れた二日分を取り戻す気概で動いている。
「骨組みからして、かなり大きな駅になっていたな。学術都市に来る者達を迎える最初の場所だ。綺麗に作って貰え」
「そのつもりです」
セレーネとしては、ジェニファーを完全に信頼しているので、その辺りに心配はない。
「ゴーレムに関する報告書も渡しておこう。特に問題はなく、利用しているこちらの領の者達も不満点はない。この報告書の薄さは、それの証明だと思ってくれ」
リンドがゴーレムの報告書を出すと、ヒナタ、ヒルデブランドも同じくゴーレムの報告書を出す。三つの報告書は、どれもかなり薄くなっていた。それだけ書くことがなかったという事が分かり、それはゴーレムの不備や不満点がほぼないという証明にも繋がった。
「ありがとうございます。後程拝見させて頂きます」
さすがに、これを全部読んでいる時間は会合中にないので、これは後で読む事になる。
「後はセレーネ達が必要しているものはあるか? 特にこれからの学術都市建設に関してだ」
「今のところはないです。学術都市が作り終わったら、教師の募集をしないといけないので、その点でしょうか。少しは目星を付けていますし、ちょっとした勧誘もしていますが、全体的な数は足りないと思います。学院から引っこ抜き過ぎるのも問題ですので、その時になって足りない科目に詳しい人材をご存知でしたら協力して欲しいと思います」
セレーネはレイアーやミルズに声を掛けているので、その二人が来てくれる可能性はある。他にもマリアナが声を掛ける人材もいるが、学術都市という名前である通り、教師数は多く集める必要がある。
科目の選定などが進んでいき、足りない人材が判明した時に頼らせて欲しいというのが、セレーネの考えだった。
「分かった。学院に影響が出ない人材を調べておこう」
「ありがとうございます」
その後は細かな領の事情などの話をしていく。今後必要になるかもしれないものや明日からの視察場所の話もしてから解散となる。




