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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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事後処理

 領民も合わせて全員が戻ってきた翌日。セレーネは、マリアナと一緒に運び込まれてくる素材の確認をしていた。


「普通にドラゴンの素材も沢山あるね」

「ナタリア達も多くのドラゴンと戦ったそうですので。ただ素材を得る戦いではありませんでしたので、品質の良い素材は多少少なくなってしまっているようです」

「そこは仕方ないよ。こういうのは拾いものくらいに考えておこう」

「はい」

「ところで、ドラゴンのお肉って美味しい?」

「はい。市場はあまり出回らないので、高級食材に数えられますが」

「じゃあ、剥ぎ取りの作業をしてくれた皆に振る舞って。後は、私達が研究用に使う分以外を市場に流す形で」

「かしこまりました」


 大急ぎで解体し冷凍したため、こうした食材も多く確保されている。領内で消費しても構わないが、市場に流す事で様々な場所でも楽しませる事が出来る。


「後はミカエラとゼノビアに素材の一部を提供して武器とかそういうものに出来ないか相談しておいて。出来上がったものが良いものなら、こっちで買い上げるって伝えてね」

「かしこまりました」


 セレーネは武器作りや服作りなどをしないため、そうした研究に関してはミカエラとゼノビアに一任する事にしていた。


「うん。大体そのくらいかな。マリアナの方で気になる事はあった?」

「いえ、特には。素材の量が多いとは思いましたが、倉庫自体も大きいので特に問題はなさそうというくらいです」

「そうだね」


 素材が問題なく運び込まれている様を見て、ひとまずこの調子でいけば良しとしたセレーネとマリアナは、レッドブラッドの壁に上り、外を見ていく。そこからは、次々に素材を積んだ魔動車がレッドブラッドに来ている様子が見えた。

 そして、その中で魔王ドラゴンが墜落した場所も見えていた。そこは既に土属性の魔術で均されており、墜落したと分かるような状態ではなくなっていた。


「まぁ、地形への影響がそこまで大きくなかったのは良かったね。ちゃんと魔術でどうにかなるくらいだったし」

「はい。港街の方も確認しましたが、被害はありません。街の被害もありませんので、これで事後処理は終わりとなります。明日には会合を始まりますので、資料の確認をお願い致します」

「うん。新しい資料もあるの?」

「陛下に提出した資料の確認です。内容はご存知のはずですが、一通り読んでおいてください。その後は研究に戻って頂いて構いません」

「は~い」


 セレーネはカノンを連れて屋敷へと戻る。マリアナは、リンドとの交渉に入る。これは買い取りとなる素材の種類に関する交渉だ。ある程度話し合ってはいるが、ここでの交渉が正式なものとなるのでマリアナも気合いを入れて臨む。

 この結果は全てマリアナの望む通りのものとなる。そもそもリンドからすれば、事後処理を手伝っただけで素材の指定をするなど厚かましいにも程があるというものだったからだ。

 そのため、マリアナからしたらかなり拍子抜けな交渉なるのだった。


 そんなマリアナと別れて資料を確認し終えたセレーネは、すぐに研究に移るという事はなく、今度は調査魔術道具の観測結果に目を通していた。

 聖域周辺を魔王が率いる群れが通ったため、それによる変化が起こっていないか、魔術道具が壊されていないかどうかを調べる必要があった。


「特に壊されてはいないみたいだね。調査の結果も特に変わりなし。聖域の方も大丈夫。魔王の襲来で大きく変わった事はなさそうだね。あっ、私の髪色は?」

「はい。いつも愛らしい金色に戻っています」

「そっか。私自身にも特に何もなし。勇者になった以外は……」


 勇色勲章を貰った事で勇者になってしまったセレーネは、今後事ある毎に勇者と言われるようになるのだと考えてしまい憂鬱になっていた。


「勇者様でもありますが、ドラゴン討伐者であり、救国の英雄でもあります。そもそも王族を救ったという点でも救国の英雄です。勇者であり英雄となられていますので、どちらでも呼ばれるかと」

「むぅ……まぁ、陛下の言う通り結婚してるから縁談が来なさそうって事だけはマシかな」

「その事なのですが、そもそもセレーネ様は複数人と結婚されていますので、もう一人増えても構わないだろうというようにお考えになる貴族はいるかもしれません」

「えぇ……」


 この辺りはガンドルフも楽観視していたが、既に三人と結婚している事もあり、逆にハードルは低くなっているとカノンは考えていた。


「ミュゼル様がいらっしゃるという事が抑止力となるかもしれませんが、王族、公爵家、伯爵家の令嬢との結婚ですので、その辺りの家格であれば、セレーネ様に見合うと考える方はいらっしゃると思います」

「えぇ……さすがに知らない人との結婚は考えてないなぁ……そういうのを目的にして、自分の娘を私のところに送るとかあり得る?」

「さすがに、そこまではしてこないと思われます。どちらかと言えば、パーティーなどの会場で紹介されるといったところでしょうか」

「う~ん……まぁ、その時になったら考えよ。明日の会合では勲章付けないとだめかな?」

「普段通りの格好で行うのであれば、必要はないかと。会合のお相手はいつもの方々ですので。それに必要だと感じれば、それぞれの閣下方が仰って下さるかと」

「まぁ、そうだよね」


 会合の相手はリンド、ヒナタ、ヒルデブランドの三人。全員と気心が知れた中であるために、仮に問題があれば優しく諭してくれるとセレーネ達は考えた。

 そして、それは実際その通りなのである。三人からすれば、セレーネは娘同然のような存在だからだ。リンドにとっては、本当に義理の娘であるため、貴族同士のやり取りよりも家族と接するような形になるのだった。

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