報告と謝罪
その日の夜。セレーネの元にフィアンナとナタリアが来た。
「セレーネ様。ご報告をしに参りました」
「フィアンナ……って事は、ルージュ公爵領から援軍も来た?」
「はい。途中で伝令と遭遇し、事態がほとんど終息した事を知りましたが、後片付けやその他周辺警戒などを買って頂きました。魔物の解体なども手伝って頂いています。ルージュ閣下の指揮の下ですので、諸々の心配はないと思われます」
「こっちに来てるの?」
セレーネは、リンドがこちらに来ている事に少し驚いていた。まさか、ルージュ公爵領の騎士団だけでなく、本当に領主が先頭に立つとは思わなかったからだ。
途中で出会ったという事はリンドも戦う気満々だったという事を表している。
リンドならあり得なくはないと思いつつも周りが止めるだろうと考えていたからだ。相手が魔王であると分かれば尚更だ。
「はい。スノーホワイト閣下、グリーン閣下は安全が確保されるまではルージュ公爵領にいます。挨拶はセレーネ様の体調が完全に回復した後で構わないそうです。フェリシア様やナタリアからセレーネ様が矢面に立って戦ったという事を聞いていますので、この厚意には甘えて良いかと」
「そっか」
体調自体は問題ないが、再生などに体力を使っているので、ここはフィアンナの言う通り甘える事にした。下手に部屋へと案内すれば、変な噂が立つ可能性もある。しっかりとその場を設けて、セレーネも万全の体調にしておくのが良い。
「次に周辺の調査結果です。ナタリアがまとめた資料をどうぞ」
セレーネは、ナタリアから調査結果を簡単にまとめた資料を受け取り、ナタリアからも口頭で説明してもらう。
「まず、残存する群れはありません。魔王が率いてきた群れは殲滅したものと考えられます。現在解体作業をルージュ公爵領の騎士団と共に進めております。低温下で行っているため素材は腐りにくくしていますが、速度が求められますので、しばらくは休む時間もないでしょう。ベネットが率先して行っています」
「ベネットは元気だねぇ」
他の騎士達よりも何十倍もの魔物を相手にして、かすり傷のみで生還したベネットは、現在も他の騎士より働き続けていた。そんなベネットの姿を見ているため、騎士達も治療が終わり次第作業に戻っていった。
普段で言えば上司としては、あまり良い姿ではないかもしれないが、現状は休んでいる場合ではないというのが現実であるため、ベネットが率先して作業をしている形となっている。
「地形の変化とかは?」
魔物の群れが来た事によって、地形などが変化してしまったという事もあり得るため、この辺りの調査も重要となる。ナタリアもそれを理解しているため、既に調査済みだった。
「そこまで酷いものはありません。一番大きなもので魔王が落下した跡になるかと」
セレーネが【空間接続】で地上に叩き付けた魔王。速度が乗っていたため、衝突時にかなりの運動量が乗っており、地面が大きく抉れる事になっていた。
自分がやった事が一番の被害を出していたという事を知り、セレーネは何とも複雑な表情になっていた。
「おおぅ……私だね。まぁ、そういう意図でやったから許容範囲かな。素材の量はかなりのものになりそうだね。フィアンナ。素材の一部をリンド様達にお礼として渡して。でも、魔王の素材はある程度こっちに残して内臓とかも研究したいから」
「はい。研究の件はテレサ様より聞いております。ただリンド様より素材の提供は要らないとの伝言を預かっております。ただし、こちらで買い取るという方法であれば受け入れるとも」
「先回りされた……それじゃあ、その方法でいいや。値段の交渉は任せるけど、相場よりは安くしておいて」
「かしこまりました」
魔物の解体や周辺の警戒などをやってくれているお礼を込めたものなので、お金を支払うと言われても相場よりは安くしてせめてもの恩返しとさせて貰うつもりでいた。
「では、そのように計らいます。しばらくはテレサ様が表に立って下さいますので、ゆっくりとお身体を癒してください。私はここで失礼します」
「うん。ありがとう。よろしくね」
フィアンナは、セレーネに一礼してから部屋を後にする。
そして、残ったナタリアは、それとは別に深々と頭を下げた。
「どうしたの?」
セレーネは、頭を下げられている理由が分からず首を傾げる。
「私がドラゴンを逃したばかりにセレーネ様を傷つける事態となってしまいました。深くお詫び申し上げます」
「良いよ、別に。ナタリアが逃したって言っても、わざと見送った訳でもないでしょ? 噛み付いてきた時には死にかけだったもん。ナタリアは自分の仕事をしっかりとしていたと思うよ。私に謝るくらいなら、いつも通り働いてくれた方が嬉しいかな」
「寛大なお言葉感謝します。今後より一層セレーネ様のため働いていく所存です」
「うん。期待してるね。早速だけど、私が色々とやっている間に魔王の身体に関して分析しておいてくれる? 内臓とかその他諸々も。今後の魔王対策の参考にしたいから」
「かしこまりました。失礼します」
ナタリアは、もう一度セレーネに頭を下げて部屋を出て行った。
「そこまで責任を感じる必要もないのにね」
「そうですね。話に聞いたところ、あの咆哮の直後にドラゴン達が方向転換をしたそうです」
「達って事は複数だよね? 結局私のところには一体しか来てないし、やっぱりナタリアはちゃんと自分の仕事をしてくれたと思うけどなぁ。自分のせいで怪我をさせたっていうのは、やっぱり気持ち的に来るものがあるよね。さてと、私も早くスピカから許可を貰わないとね」
「そのためにも今はゆっくりとお休みください」
「は~い」
セレーネは体力を回復させるためにも、一度睡眠を取る事にした。仕事に関してはテレサ達に任せれば良いので、ある程度気が楽だった。




