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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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衝突

 骨の部屋にユニコーン達も入り、セレーネはお供え物となる花を置き祈りを捧げる。そこにユニコーン達の嘶きが合わさり、範囲浄化が発動する。これでカルンスタイン領全体に浄化が広がり、範囲内の魔物が弱体化する。


「前より強くなった?」

「お嬢様が環境と魔術陣を整えた結果だと思われます」

「他の領にも届いていると良いな。魔王がこっちにだけ戦力を寄越すとは限らないでしょ?」

「いえ、相手が将軍型の魔王ですと、戦力をまとめて動かす可能性の方が高いです。こうして動いているところを見るに、将軍型の魔王だと思われますので、こちらに戦力が集中していると考えた方が良いでしょう」

「そっか。それじゃあ、ナタリア達に合流しよう。ユニコーン達とクロは、この家に居てね。外は危ないから」


 ユニコーン達を労いを込めて撫でてから、セレーネはカノンを連れてナタリアがいる場所に転移する。ナタリアの傍にはフェリシアとマリアがいるので、大体の居場所は感覚で探る事が出来る。その近くの座標に飛べば、すぐに合流できた。


「ナタリア。状況は?」

「現在、ベネットが討伐部隊を編成しています。問題は、魔王の姿を確認出来ない事です。王型にしては部隊の規模が大きいため、将軍型のはずなのですが」

「魔王の発生位置の特定は?」

「進軍してきた方角から考えてグリーン公爵領付近だと思われます。恐らく、発生から移動まで時間は掛かっていません。この辺りは、冒険者の目が届くようになっていますので、発生していれば兆候が分かったはずです」

「なるほどね。それより遠くから来た可能性は?」

「ありますが、それにしては軍勢が少なく、他の領が気付いていないという事に違和感を覚えます」


 将軍型の魔王は、一箇所に留まらずに動き続ける。そうして侵攻しながら配下を増やしていき、どんどんと軍勢が膨れ上がっていく。

 現在、カルンスタイン領に現れた軍勢は多くの種類の魔物が含まれている。それはここに来るまでに配下に引き入れた魔物達と考えられた。


「伏兵の可能性は?」

「……あり得ます。確か、そのような戦法を取った魔王がいたはずです。かなり少数ですが。ただ、セレーネ様の【空間探知】を掻い潜る軍勢となると……」

「かなり遠くになる?」

「はい。将軍型の魔王が自身の指揮から外れるような事はしないはずなので、あの軍勢の近くにはなると思いますが」

「地形情報を減らして、範囲を広げてみる」


 セレーネは思考機を操作して、【空間探知】の範囲を広げる。しかし、魔物の反応はない。


「ないね」

「そうですね……これならあの中に魔王がいると考えて良いかもしれません」

「ナタリア出るぞ」


 編制を終えたベネットがセレーネ達の元に来た。


「嬢ちゃん、こっちに来てたのか。今から魔王を討ちに行くが、姿は分かったか?」

「ううん。まだ分からない。だから、気を付けて」

「おう。街の防衛に一小隊残す。こっちで倒しきれるかは分からねぇが、数は大きく減らす」

「うん。よろしく」


 ナタリアも戦力として前線に向かう。ここの防衛は騎士団の一小隊、セレーネ、フェリシア、マリア、カノン、スピカ、ユリーナとなる。


 騎士団達の出立を見送ったセレーネは、思考機と鳥型ゴーレムを操作して、偵察を続ける。


「う~ん……魔王っぽい姿がないなぁ……小さい魔王とかもいるの?」

「いるにはいますが、他の魔物とは全く異なる姿ですので、見ただけで魔王だと分かるはずです」

「そっか。まだ後ろの方にいるのかな」


 この領の中に魔王と戦った者はいない。そのため持っている事前知識のみで戦う事になる。セレーネ達にも少しずつ緊張が走り始めた。


────────────────────


 レッドブラッドを出立した魔王討伐部隊は、馬に騎乗し、まっすぐ魔物達の群れに向かって行く。


「ナタリア、魔物の数は分かるか?」

「分かる訳ないでしょ。【空間探知】に引っ掛かるだけで百は超えているってだけ。下手すれば、千もあり得る」

「そうか。嬢ちゃんがやってくれた浄化である程度力を削いではいるだろうが……」

「まぁ、数の暴力があるから、余裕とはいかないでしょ。一応、聖域を避けるように動いているから、ある程度進路は予想出来る。問題は魔王本人がどこにいるか」

「ナタリアでも分からないのか?」


 ベネットの確認に、ナタリアは即答せず、魔王の気配を探っていた。魔王となるからには、魔力を大量に持っている。その魔力を探ればある程度居場所の特定に繋がるのだが、それを感じ取れずにいた。


「ここから探れない位置にいるのかも。取り敢えず、油断は大敵。警戒しておいて」

「分かってる……っと、これか」


 頷いたベネットの耳に地鳴りが聞こえてくる。それは魔物が奏でる死の音。嫌でも騎士達に緊張が走る。それが分かったベネットは全員に聞こえるように盾を鳴らす。


「呑まれるな!! これまでの訓練を思い出せ! 自分の命も含め、守るものを見失うな! 魂を鼓舞しろ! 真っ直ぐ前を向け! この戦い俺達が勝つぞ!!」

『おお!!』


 ベネットの鼓舞により、緊張で固まり始めていた騎士団達が奮い立つ。それとほぼ同時にナタリアが風魔術【烈風鎌鼬】を放つ。周辺の雨を吹き飛ばしながら進む大量の風刃が、先頭を走っていた狼の魔物を消し飛ばした。

 これが戦闘開始の合図となった。騎士団達と魔物が正面からぶつかり合う。その中で、ベネットが突出した。

 騎士団の中で魔王と戦える人材と言えば、ベネットを置いて他にはいない。そのため奥にいるかもしれない魔王に向かって一人で突っ込む事になっていた。

 ナタリアはその援護をして、道を切り開いた後、騎士団達を援護する。雨という悪環境下において、次代の賢者と呼ばれたナタリアの魔術は、騎士達の生存率に大きく影響する。

 魔術が飛び、大量の血液が飛び散り、草原が赤く黒く染まっていく。命懸けの戦いが始まったのを、遠くにいるセレーネも感じ取っていた。

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