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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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嫌な予感

 それから二週間後。降り注ぐ豪雨の中で、セレーネは明日に控えた会合に向けて、マリアナと様々な調整をしていた。


「話し合う内容は大体こんな感じね。地下道の方の紹介はどうする? もう完成して魔動列車を作るだけになってるけど」

「港街も見てもらう事になりますので、地下道を通ってお見せするのが良いかと」

「じゃあ、こっちは二日目ね。ユニコーンの紹介は最低限にするとして、骨も隠す形で良いよね?」

「はい。あれはユニコーンにとって大事なものですので。当日は鍵をしておきましょう」

「だね。地下道の紹介にリーシアちゃんとかも居てくれると良かったけど、ノスフェラトゥ家の会合に行っちゃったしね」

「こればかりは仕方ありません。あちらの家の問題もあるでしょうし」


 リーシア、ミーシャ、シローナは、ノスフェラトゥより呼び出しが掛かり、今後の事も考えて出席しに行った。そのため会合の際に地下道を紹介するのは、セレーネの仕事となる。元々セレーネの仕事ではあるので、特に大きな問題はない。


「まぁね。取り敢えず、資料の用意は出来てるから、説明の問題は解くに無し。ベネット達に巡回を増やしてもらうようには?」

「伝えてあります。一週間前より警戒を強めてもらいました。冒険者達のチェックも厳しくしており、新たに出入りする人の調査などもしております」

「公爵が三人も集まる訳だしね。そのくらいで良いと思う。ん?」


 その部屋にいる中で、セレーネはいち早くその異変を察した。次に気付いたのは、セレーネの世話をしているカノンだった。


「カノン。ベネットに周辺の警戒を密に行うように言って。異常があれば、即座に知らせるようにも」

「はい」


 カノンは、扉からではなく窓から外に飛び出した。マリアナは、その様子から異常事態の予兆があるのだと察した。


「私には何も分からないのですが」

「私も分かるのは魔力の高まりくらいだよ。異常。ここまで気付かないっていうのも異常だけど、私がビリビリ感じ取れる魔力で、しかもそれが沢山いるみたい。マリアナは、ナタリアにこの話を持っていって。その後はフィアンナと一緒に役所で避難の準備を進めて。皆を集めるだけで良い。後は、私がレッドグラスに転移させる」

「そのような事態なのですか?」

「多分ね。これが杞憂で終わるなら、それで笑い話に出来るから良いよ。でも、ここで笑い話にして被害が出るのは嫌だ」

「かしこまりました」


 マリアナはすぐに扉から外に出る。さすがに、身体能力的な面で、カノンのように窓から行く事は出来ない。


「私も動かないと」


 セレーネは、すぐにフェリシア達の元に向かう。今日は三人とも休日で同じ部屋で過ごしていた。


「セレーネ?」


 セレーネの中に焦りがある事に、フェリシアが真っ先に気付いた。


「何か危ない事が起こりそう。フェリシアは、ナタリアと合流して。ユイとミュゼルは役所に。マリア、ユーリにメイド全員を役所に向かわせるように伝えてきて」

「分かった」


 マリアは即座に了承して、ユーリがいるユニコーンの厩舎へと向かった。ユーリは月の桜桃を経営しつつユニコーンの世話を続けている。子供ユニコーンが心を許しているので、他のユニコーンもユーリに心を許しているのが大きかった。


「メイ、ユイとミュゼルに付いていて」

「かしこまりました。ユイ様、ミュゼル様、行きましょう」

「ええ……」

「う、うん……」


 まだ困惑しているユイとミュゼルを連れて、メイは役所へと向かう。メイの中にもまだ困惑はある。どういう状況かは全く分かっていない。だが、セレーネはこういった冗談を言わないので、すぐに従っていた。それが一番ユイとミュゼルの安全に繋がると分かっているからだ。


「それじゃあ、私も行くわ。セレーネ、無理しちゃ駄目よ」

「うん。分かってる」


 セレーネを全面的に信頼しているフェリシアも、一切の躊躇もなくナタリアがいる総合研究室研究棟へと向かった。ナタリアと合流しろと言った以上、戦闘の可能性がある事には気付いている。だからこそ、セレーネに無理をするなと言ったのだった。

 残ったセレーネの元に伝言を終えたマリアが戻ってくる。セレーネはすぐにマリアにも指示を出す。


「マリアもフェリシアと一緒にナタリアと合流して。何が起こるか分からないけど、フェリシアをよろしくね」

「分かった」


 マリアは、セレーネの頭を撫でた後、フェリシアを追っていった。指示出しを終えたセレーネは、自室へと向かう。そこで思考機に繋がっている鳥型ゴーレムを起動し、魔力の高まりを感じ取った場所へと飛ばした。

 同時に【空間探知】を思考機に繋げて広範囲探知を行う。既に街の近くに異常がある可能性もあるため、併用して調べる事にしていた。

 そこにカノンが窓から入ってくる。


「お嬢様」

「カノン。ベネットは?」

「既に動いていました。街の出入口を固め、壁の見張り台からの監視も強めています。非番の騎士も総動員しています。ベネット自身武者震いをしている様子でした」

「ありがとう。さてと、これが笑い話になってくれるかな……」

「どうでしょうか。私としては、とても嫌な予感がします」

「同感」


 セレーネは不自然な魔力の高まりから嫌な予感がし、カノンは獣人としての本能などから嫌な予感がしていた。更にベネットは強者との戦いを予感しているのか、身体が武者震いを起こしてすらいる。これがただの杞憂であれば、本当に笑い話として扱う事が出来る。

 だが、二人は自分の感覚から、その可能性が低い事を察していた。そして、その原因が鳥型ゴーレムが映し出す映像から分かる。


「これは……」


 カノンの表情が張り詰める。セレーネも眉間に皺を寄せていた。


「魔物の大発生……いや、統率が取れているような動き……もしかして、魔王?」


 今、セレーネ達も体感した事のない災害が発展途中のカルンスタイン領に襲い掛かろうとしていた。

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