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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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束の間の休日

 翌日。ユニコーン達の厩舎が完成したため、一日休みを貰ったセレーネは、自室で誘導魔力結晶に関しての論文を書いていた。そこに同じく休みを得たフェリシアもいた。


「それがあれば、通話機も魔力で繋げられる気がするわね」

「無理無理。あれは、特定の魔力を吸収して、その魔力と同じ魔力を誘導するってだけだからね。それに通り道をしっかりと作らないと、結局振動が別の場所にぶつかって消えるだけだしね」


 今回は骨が発する魔力を吸収して、その魔力を誘導するという事に使っている。

 このように特定の魔力の誘導に使えるため、フェリシアのような考えも当然浮かびはするが、そこはセレーネも考えた道だった。

 誘導魔力結晶は、魔力を誘導するための道を作るだけであり、当初考えていたような振動を魔術で送るという事は難しい。

 結局は、現在の形が一番良いのだ。


「そうなのね」


 フェリシアは厩舎への誘導の際に魔術陣の調整を手伝って貰うため、ある程度の概要は説明されていたが、詳しいところはまだ知らなかった。


「誘導……それがあれば魔術の誘導も可能なのかしら?」

「防衛に使えるかって事? 本当に定点にしか飛ばす事が出来ないけど」

「そこまで融通は利かないという事ね。逆は出来るかしら?」

「逆って?」

「例えば、街の上空に誘導魔力結晶を通しておけば、遠距離から来た魔術をある一点に集中させられたりしないかって事よ。そうすれば相手の魔術を街に落とさないように出来るじゃない?」

「ああ……」


 セレーネは、フェリシアのアイデアが可能かどうかを考えていく。


「う~ん……特定の魔力の誘導が主な効果だけど、魔力の流れ的なものは生まれるから、割と出来そうではあるかな」


 特定の魔力を流す関係で、魔力に流れが生まれる。例えるのであれば、それは川のようなものとなる。流れを作る大元に他の魔力が引っ張られるという可能性は十分にある。

 しかし、その流れに引っ張られている魔力はあらゆる魔力が混ざり合うものであり、通話機に利用する事はやはり出来ない。


「う~ん……現状だとそこまで大きな魔力の流れにはなってないけど、あれを観察し続けて利用出来そうなら利用しようか」

「そうね。今のところ、あの骨の魔力が移動しているだけにしか見えないものね」


 設置してから日を跨いでいるが、まだそのような魔力の流れが生まれてはいなかった。ただただ骨が溜める魔力が流れているだけだった。余剰魔力が空間に散っていき、それを屋敷の魔術道具が吸収している。

 これによって、魔力の枯渇はほぼあり得ない状態となっている。


「でも、一箇所に集めたとして、そこがボロボロになるだけじゃない?」

「魔術は結局魔力を集めたものと解釈出来るでしょう? だから、魔力を吸収する機構を使って相手の魔術を吸収するのよ。ここで吸収した魔力を相手に返すとかどうかしら?」

「防御と反撃を兼ね備えるって事ね。でも、大分厳しいかな。だって、こっちの魔術も乗るよ?」

「あっ……そうね……都合良く相手の魔術だけを誘導するのは、さすがに無理よね」


 魔術を誘導するのであれば、それは相手のものだけでなく、自分達の魔術も対象となってしまう。そのため防衛にはなるかもしれないが、反撃が上手く出来ないという事にもなりかねない。


「さすがにね。魔力の選択は結構難しい気がするし。どちらかと言うと、壁に吸収機構を付けて強度を常に強化させ続けるとかの方が防御になると思う。相手に利用されたら面倒くさいけど」

「何事もメリットとデメリットがあるわね。メリットだけを求めるのは厳しいわ」

「ね」


 ナタリアに提出する論文を書き上げたセレーネは、ベッドの上で本を読んでいるフェリシアの元に向かい、何の断りもなく膝に頭を乗せた。フェリシアは特に気にした様子もなく、本を閉じてセレーネの頭を撫でる。


「誘導魔力結晶を円形に繋いだら、永遠に魔力が循環するようになるよね」

「ある意味では魔術陣みたいなものね」


 魔術陣も円が基礎になっているため魔力の循環を意味している。そのため、誘導魔力結晶で魔力を永遠に循環させるという事は魔術陣とほぼ同じような状態を作るという事になる。


「魔術陣……誘導魔力結晶で大きな魔術陣を形成できる?」

「自分で形成した方が楽よ?」

「確かに……」


 例え大きな魔術陣であっても誘導魔力結晶の補助を使わずに、自分で形成した方が楽に早く形成出来るのは、セレーネも即座に分かった。


「新しい錬金術の方を安定して起動するみたいな感じにしか使えなさそう」

「確かに、魔術陣の維持を誘導魔力結晶に任せるのはありかもしれないわね。後は魔術機械にも利用できるかもしれないわ」

「常に展開してる魔術陣とか?」

「そういう風な魔術機械も作る事が出来たりしないかしら?」


 常に魔力が巡回しているという事は、内側に魔術陣を配置すれば、常に魔術陣を維持出来るという事になる。普通の機械などに吸収機構などを付けておくよりも、こちらの方が安定させられるという可能性はあった。


「う~ん……検品の時に魔術陣を通すだけみたいな感じには出来そうかな。今は特に良いものは思い付かないなぁ。今は新しい魔術陣を考えたいし」

「立体魔術陣だったかしら? 円形の平面じゃなくて、球体の魔術陣だったわよね?」

「うん。まぁ、上手く構築出来ないから、全く進んでないけどね。他に研究しないといけない事も多いし」

「まぁ、ゆっくりやっていけば良いわよ。私達には時間があるのだもの」

「そうだね」


 真祖と眷属。無限の時間を持つセレーネ達は、長い実験となっても焦りはない。今はやるべき事を。それを胸に突き進んでいくばかりである。

 そんな話をしながら、セレーネ達の休日は過ぎていく。セレーネ達は、学生時代から変わらない様子で過ごしていき、終始楽しそうにしていたのだった。

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