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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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余剰魔力の利用

 翌日。セレーネは、実験室で大型の魔力結晶を複数調合していた。形を整えて、魔力を吸収する機構を取り付ける事で、半永久的に使えるように調整していく。


「これで良いかな。カノン、これ【空間倉庫】に入れて」

「はい」


 カノンに【空間倉庫】へと運んで貰っている間に、セレーネは小型の魔力結晶を一気に量産していく。


「そちらは何に使用するのですか?」

「ん? ああ、骨の周りに設置して、魔力を吸収しつつ屋敷で使える魔力にしようかなって。あのまま魔力を集められていると、ちょっと危ないかもしれないからある程度散らそうかなって感じ。何か洞窟よりも濃い魔力になりかけている感じだし。ユニコーンに許可は貰ったよ」

「朝にユニコーンの元に行ったのはそういった事があったからなのですね」

「ふっふっふ! まぁ、ただ朝の挨拶に行っただけっていうのもあるけど」


 大型の魔力結晶を作る前に、セレーネはユニコーン達に挨拶をしに行っていった。厩舎の拡張も八割方終わっており今日中に、ユニコーン達全員が入れるようになる。

 この挨拶の際に骨の周囲の魔力を利用して良いかの確認をしていた。ユニコーン達は快く許可してくれたために、こうしてその準備をしているのだった。

 大型の魔力結晶の方は、内部の魔術効果を更に広範囲に広げるための安全装置として設置する。仮に魔力が足りなくなっても、ここから消費されるという事だ。


「余剰魔力の効率的な活用を目指して色々と模索するかな。後は厩舎の【適温維持】に魔力を回す感じ」

「魔力結晶で出来るのですか?」

「通り道を作るイメージかな。この魔力結晶もこれまでと同じものじゃないしね。大体は一緒だけど」

「何が異なるのでしょうか?」


 カノンの目からは、普通の魔力結晶に見えているため、その違いが全く分からなかった。


「実は魔力結晶同士が繋がってるの。魔力の通り道になるように誘導する魔力結晶っていうのが正しいかな。誘導魔力結晶だよ。まぁ、こうやって一気に作らないといけないんだけど」


 誘導魔力結晶は、魔力結晶同士の繋がりが重要となる。完全に一致させるために、必要数を同時に調合しなければいけない。少しでも狂えば、誘導魔力結晶同士の繋がりが薄れ、上手く誘導できなくなってしまうからだ。


「理論上は、これでしっかりと送れるよ。理論上は」


 まだ実験もしていないので、今回の設置が試験の一環となる。


「ところで、どこに設置するのですか?」

「え? まず骨の近く、外の壁、壁伝いに厩舎の方に送って、地面に埋めるか、ポールを立てるかかな」

「梯子を用意しておきます」

「お願い。それじゃあ、私は骨の部屋に行って設置しておくね」

「はい」


 高所作業となるため、カノンは高い場所に登れるように梯子を取りに向かった。その間に、セレーネは骨が安置されている部屋に大型の魔力結晶と誘導魔力結晶の設置を行いに向かう。大型の魔力結晶は部屋の四隅に設置し、それぞれを近くの魔術陣に繋げる。

 これにより、安定して多くの魔力を供給可能となる。それでも骨の周りには濃い魔力が溜まっているため、これを誘導魔力結晶で利用しようという考えだった。


「これでも私より魔力は多くないんだよね」


 真祖であるセレーネの魔力は、骨の魔力よりも遙かに多い。まだ成長途中の現状でそうなっているため、いっその事セレーネが魔力を垂れ流しにして、それを利用する方が多くの魔力を供給出来るとも考えられた。


「まぁ、私が魔力を流し続けるのは危険だから駄目だけど」


 セレーネが一度に多くの魔力を消費し、一定値以下の量になれば吸血衝動が襲ってくる。リーシアの封印でそうそう起こらなくなっているが、真祖には切っても切れないものだった。


「さてと、こんな感じかな。次は誘導魔力結晶の設置だね。骨の足元に設置して、魔力を誘導……全部吸収する訳じゃないから、魔力結晶は壊れないはず……」


 設置した誘導魔力結晶は、魔力を吸い寄せるが一定量吸収して止まり、周辺に魔力を滞留させていた。


「成功……後は、これを利用出来るかどうかだけ。外に出て壁に設置していかないと」


 セレーネが部屋を出るのとカノンが部屋の前に着くのは同時だった。


「カノン、準備は?」

「出来ています」

「じゃあ、行こうか」


 セレーネは外に出て、カノンが持って来た梯子を使って壁に誘導魔力結晶を設置していく。


「しっかりと魔力が誘導できてる。う~ん……でも滞留させるから、若干のロスありか。ここはしたか無いなか。パイプで通すとなると工事の難易度が上がるし、そもそも邪魔だし」

「この形は良いと思います。このロスになる魔力は問題になりませんか?」

「ならないかな。寧ろ、外に出した魔力を他の魔術道具に組み込まれた魔力吸収機構が吸い取ると思う」

「なるほど。工業区の魔術機械も魔力を吸収しますから、その辺りは丁度良さそうですね」

「そういう事。ロスは気になるけど、これはこれで利用法があるから、このままで良いかな」


 セレーネは次々に誘導魔力結晶を設置していき、突き立てたポールにも誘導魔力結晶を設置し、厩舎まで届ける。


「フェリシア、誘導魔力結晶で魔力運んだよ」

「それなら、ここの辺りを調整して……これでどうかしら? 後は誘導魔力結晶をこっちに填めれば【適温維持】がそっちの魔力で進むようになるわ」

「は~い」


 セレーネは誘導魔力結晶を設置する。すると、【適温維持】の魔獣陣に魔力が流れていき、【適温維持】の維持に使われ始めた。また、余剰魔力に関しては、飲み水の補給用の魔術道具などに利用される。

 これで厩舎が完成する。ユニコーン達も住みやすい厩舎の中に入って、寝藁の上で横になっている姿が見られた。しっかりとリラックス出来るようになっていた。その隣にはクロも一緒に寝ている。

 ここ最近はクロもセレーネの部屋よりこちらにいる方が多くなった。仲の良い友達が出来た事にセレーネも嬉しく思っていた。

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