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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ユニコーンの引っ越し

 セレーネは、聖域から直接マリアナの執務室に転移する。唐突に現れたセレーネにマリアナは驚くが、すぐにここに来なくてはいけない異常事態が起きたのだと察した。


「何がありましたか?」

「ん? あ、大丈夫。危ない事があったわけじゃないから。ユニコーン達がこっちに移り住むって」

「はぁ……はぁ!? く、詳しくお願いします!」

「ここに住みたいらしいよ。多分、あの子がお願いか何かをしたのかな。ユニコーン達の骨を私達に預けてきたから、意志は硬いと思う。だから、あの馬房を使おうと思うんだけど」


 そこまで話され、これが決定事項だと察したマリアナは即座に受け入れる方向に思考を切り替えた。


「拡張をしましょう。すぐに来るのですか?」

「うん。【空間転移】で連れて来ちゃおうかなって思ってる。ユニコーン達は見られても平気って言ってるけどね」

「なるほど。ある程度は用心して【空間転移】を使いましょう。それと聖域は聖域で現状のまま残します」

「もしもの時のための備えだね。分かった。それじゃあ、連れてくるね」

「はい」


 マリアナに報告を終えたセレーネは、再び聖域に転移する。


「お待たせ。許諾は得たから、このまま移動するよ。その前に骨は箱に入れて持ち運ぼうか」


 セレーネとスピカは木で出来た大きめの箱の中にユニコーンの骨を慎重に仕舞っていく。そうして仕舞う事で、セレーネは骨が本当に異質なものだという事を認識する。


(この骨……骨っぽいけど骨じゃない? まるで金属みたいな……いや、でも手触りの中に骨っぽさも感じる……本当に特殊な素材なんだなぁ)


 セレーネは分析したいという欲求を抑えて、傷を付けないように慎重な作業をしていた。全てを箱に入れた後、セレーネは全員を集めて【空間転移】で屋敷の敷地内に移動する。

 敷地内に入ったところで、すぐにマリアナが迎える。


「セレーネ様。カノンは?」

「あっ……迎えに行って来る。スピカと一緒にこの子達を馬房に案内してくれる? 多分全員は入らないだろうけど……」

「はい。近くに藁山を用意しておきました。しばらくはそちらに居て貰う事になるでしょう」

「分かった。よろしく」


 セレーネは、ユニコーン達をスピカとマリアナに任せて、カノンが待つ場所に転移する。


「お嬢様?」


 カノンは、転移で突然現れたセレーネに驚いていた。


「何かあったのですか?」

「うん。ユニコーンをうちで迎える事になった。もうスピカも一緒に転移してあるから、私達も戻ろう。一応、私は魔動車で外出した事になってるし、魔動車で帰った方が良いよね?」

「そうですね。車内で詳しいお話をお聞かせください」


 一応何があったかは理解したカノンだが、何故そのようになったのかなどの経緯が分からず、困惑していた。そのため魔動車の中で情報共有を行っていく。


「多分だけど、子供のユニコーンが一緒にいたいって言ったんじゃないかな。あの子が元気になった事もあって、レッドブラッドなら安心して暮らせると思ったのかも」

「なるほど。確かに死に瀕した子をあそこまで元気にして、あの子に懐かれているという事とこれまでの事を考慮すれば、ユニコーンが信頼してくれるに十分でしょう。ですが、居場所はどうしますか?」

「馬の厩舎に馬房があるでしょ? あそこで暮らして貰おうかなって。ちょっと増築する事になるけど、マリアナが進めてくれてるから大丈夫。しばらくは藁山に暮らして貰う事になるって」

「それが良いでしょう。増設もそこまで時間は掛からないと思いますので」

「そうだと良いね。子供も合わせて六頭になるし」

「それでもそう時間は掛からないと思います。ですが、一つ問題が」

「会合?」

「はい」


 ユニコーンを聖域に帰す事でユニコーンと対面するという問題を除く予定だったが、今はそのユニコーンが更に増える事になった。ほぼ確実にヒナタ達とユニコーンが鉢合わせる事になる。


「まぁ、あの子達は人に見られても構わないって言ってたし、必要以上に隠さなくても良いと思うけどね。あまり人と会わないって言っておkば、ちゃんと通じる人達だし」


 ヒナタ、ヒルデブランド、リンドの三人は、セレーネの屋敷にユニコーンがいるからといって問題を起こすような輩ではない。

 ユニコーン自身が気にしないという事を言っていた事もあるので、この辺りは積極的に会わせなければ問題はないと考えていた。


「そういえば、骨の置き場所はどうすれば良いんだろう? 洞窟みたいな場所ってなくない?」

「その洞窟を知らないので、なんとも言えませんが、聖域とほぼ同じ環境で更に神聖さを上げるとなれば、子供ユニコーンの看病をしていた部屋などになるのではないでしょうか?」

「ああ、確かに。あそこの環境を更に整えれば良いかな。まぁ、あの骨がある場所がそういう環境になったりするのかもしれないけど」

「そんな代物なのですか?」


 セレーネの話でしか聞いた事がないものであるため、カノンも骨が実際にどのようなものなのかを知らなかった。


「実際に触る機会に恵まれたんだけど、何か骨っぽくて骨っぽくないみたいな感じ。滅茶苦茶分析したかったけど、さすがにあの骨を削るのはね。部屋に置くなら部屋そのものに分析用の道具を置くかな。ユニコーンが許可をくれたらだけど」

「その辺りは律儀ですね」

「だって、怒られたら嫌でしょ? カノンの教育の賜物だね」

「でしたら、私に怒られるような事も控えてくれると嬉しいのですが」

「あははは」

「笑って誤魔化すという事は何かしましたね?」


 笑いながら窓の外を見るセレーネをちらっと流し見るカノン。対して、セレーネは笑いながら首を横に振る。


「してないよ。さすがに……多分……何かしたっけ?」


 ここ最近はマリアが担当してくれる日もあるため、その日に何かやらかしていなかったか心配になっていた。

 そんないつも通りの様子のセレーネに、カノンは小さく笑みを零す。


「はぁ……まぁ、良いです。取り敢えず、しばらくはユニコーン達が住む環境を整える事に集中する形でしょうか?」

「そうしたいけど、仕事がどうなるかかな。視察は再来週くらいに延ばせるだろうけど、地下道の様子も確認しないとだし。まぁ、リーシアちゃん達だから心配しなくてもいっか。マリアナと相談して環境作りに加わらせて貰おうかな」


 状況が変わったため、セレーネはユニコーンを優先する事にした。

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