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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ユニコーンの子供と聖域へ

 三日後。セレーネは、ユニコーンの傍でスピカによる診断を待っていた。既にセレーネの健康診断機による診断は済んでいる。その結果は異常なしだが、スピカによる人力での診断も必要となる。

 あくまで、健康診断機は、参考にする程度のもの。実際にスピカが診断してこそ、確実なものとなる。


「どう?」

「はい。産まれた直後は、自発呼吸もままならない状態でしたが、現在は健康体そのものです。ご飯も沢山食べてくれますし、動き回っても倒れる事もありません。寝転がった状態でいる事が割と多いのは気になりますが、リラックスしている時間が多いと考えれば、問題はないと思います」

「そっか。それじゃあ、予定通りだね」

「はい。明日聖域と連れて行きましょう」


 二人の話を聞いていたリーナは、少し悲しげな表情でユニコーンを撫でる。ユニコーンの世話を主にしていたリーナは、それだけユニコーンに愛着を持っていた。だからこそ、別れるという事が寂しいのだ。


「にゃ~」

「ん? そうだよ。明日でユニコーンとお別れ。お世話してくれてありがとうね。クロが居てくれたおかげで、ユニコーンも寂しい思いをしないで済んだよ」

「にゃ~」


 セレーネに褒められたクロは嬉しそうに鳴く。そんなクロをセレーネが撫でていると、ユニコーンが自分もというように近づいてくるので、セレーネはユニコーンも撫で回していく。


「明日はお母さん、お父さんの元に帰れるよ」


 ユニコーンは少し首を傾げたが、すぐにどういう事か理解したのかセレーネの周りを嬉しそうに飛び跳ねていた。


(うん。ちゃんと元気一杯だ)


 ここに運ばれてきたばかりの死にかけの状態からは想像も付かない程の元気っぷりにセレーネも笑みが溢れる。


「ユーリ。最後までお世話よろしくね」

「は、はい!」


 丸投げのようにも聞こえるが、これは言外に別れを済ませておくようにというセレーネからの指示だった。それをユーリが察しない訳もなく、若干暗い顔になりながらも力強く頷いた。

 ユニコーンにとってここが居心地が良い空間だとしても、大した理由もなく親から引き離し続ける事が良い訳がない。ユニコーンの親は常に心配しているという事をセレーネやスピカから聞いているのだから、尚更だ。

 それぞれでユニコーンに別れを済ませていき、翌日を迎える。

 セレーネは、カノンが乗り込んでいる魔動車にユニコーンを乗り込ませる。セレーネとスピカが一緒にいるからか、ユニコーンはあっさりと乗り込んだ。


「それじゃあ、また機会があったらね」


 ユーリは最後にユニコーンの首を撫でて離れる。皆の見送りの中、ユニコーンを乗せた魔動車が動き出し、聖域へと向かった。

 ユニコーンは目まぐるしく変わる景色を興味津々で見ている。セレーネは、ユニコーンが興奮しすぎないように首を撫でていた。


「あまり興奮しすぎないで良かった」

「そうですね。怯える様子もありませんので、このまま聖域でも問題なくやっていけそうですね」

「だね」


 ユニコーンは、最初に外に出た時も少し警戒していたもののすぐに慣れていた。警戒するのは最初のみで、警戒しなくても問題ないと判断すると好奇心旺盛な子供の部分が出て来る。

 いつもなら、ここで跳びはねてもおかしくない状況だが、魔動車という狭い空間で、セレーネがしっかりと首を押さえているからなのか大人しく外を眺めているだけだった。

 ただ多少は興奮しているからか、鼻息は荒い。

 そうして聖域に着くと、カノンを残してセレーネとスピカでユニコーンを先導していく。ユニコーンは周囲の景色に興味津々だったが、セレーネ達が左右から挟んで歩くので、並んで一緒に歩いている。

 そうして結界を通り抜けて、聖域内に入る。その途端にユニコーンは周囲を見回し始め、唐突に駆けだした。


「あっ! ちょっと待って!」


 セレーネの制止も聞かずにまっすぐに走っていく。


「セレーネ様。あの方向は泉がある方向です」

「という事は……」


 ユニコーンが突然動き出した理由を察しつつも、セレーネは止まらずに追いかけ続ける。ここで万が一があれば、親ユニコーンに申し訳が立たないからだ。

 そうして泉まで走ると、ユニコーン達の嘶きが聞こえてくる。それはユニコーン達の喜びの声だった。その中に小さな嘶きも交ざっている。

 ユニコーンの子供は、母親ユニコーンに甘えるように寄り添っている。母親ユニコーンは、子供ユニコーンの毛繕いをしていた。


「取り敢えず、一件落着?」

「そうですね。私達はここで下がりましょう」

「まぁ、そうだね」


 ユニコーンの子供がセレーネ達を追ってこないようにするためにも、セレーネ達はここで姿を消す事にした。

 セレーネ達が聖域の外に出る直前。セレーネの背中に衝撃が走る。


「あ痛っ!? って、ええ!? どうしてこっちにいるの!?」


 セレーネに走った衝撃の正体は先程置いてきた子供ユニコーンだった。その後ろからは他のユニコーン達も来ていた。


「お礼を伝えに来てくれたの?」


 セレーネの確認にユニコーンは首を横に振る。そして、方向転換をしながらセレーネ達について来いというように首を振った。

 セレーネとスピカは、互いに顔を見合わせてから、ユニコーンの後ろをついて行く。それが嬉しいのか子供ユニコーンは、セレーネ達の周囲を跳びはねていた。


「なんだろう?」

「分かりませんが、この方向はあの洞窟がある場所では?」

「あっ、確かに。でも、この前お参りはしたよね?」

「はい」


 目的地の予想はできたものの、何が目的なのかは全く分からず、セレーネ達は困惑しながらユニコーン達について行く。

 セレーネ達の予想通り、ユニコーンはユニコーンの骨がある洞窟に連れてきた。そして、そのまま中に入りいつも通りの何故か直立している骨の前に連れて行かれる。

 ひとまず、セレーネ達は頭を下げておく。祈りは迂闊にできないので、こうして頭を下げるという事にしていた。

 セレーネ達がお参りを終えると、ユニコーン達が嘶く。セレーネの傍にいる子供ユニコーンも真似をするように嘶いた。

 直後、ユニコーンの骨が崩れ落ちて、セレーネの前に集まってきた。


「んん!?」


 想定外の事態にセレーネは、かなり困惑していた。そんな困惑しているセレーネの前にユニコーン達が集まり首を垂れる。


「えっ!? えっと……どういう事?」

「もしかしたら、棲家を変えるという事ではないでしょうか?」


 隣で同じく困惑していたスピカだったが、ユニコーン達にとって骨がどういったものなのかを思い出して、その意図を察する。

 スピカの考えを聞いて、同じように考えたセレーネはそれを自分に渡すということの意味も。


「うちに来るの?」


 セレーネがそう言うと、ユニコーン達は一斉に頷いた。


「でも、色々な人達に見られる事になるよ? それでも良いの?」


 これに対してもユニコーンは頷き、セレーネに顔を近づける。セレーネはいつも通りユニコーンを撫でる。ユニコーンの肯定の返事にセレーネは、少し心配になるが、ユニコーン達が決めたことを尊重する事にした。


「分かった。それじゃあ、うちに行こうか。良いよね?」

「私は構いませんが、マリアナに報告はしておいた方が良いかもしれません」

「あっ、そっか。行ってくる」


 ユニコーンの子供を帰す日になるかと思いきや、ユニコーン全員を受け入れる日となった。その準備のためにセレーネは行動していく。

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