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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ユニコーンの厩舎

 それから一週間が経ち、ユニコーンを外で活動させる日がやってきた。この日のためにセレーネは、しっかりと自分の仕事を終わらせていた。


「さてと、部屋の外に出るのも初めてだから、色々と気を遣わないとね」

「階段は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫なはずだよ。リーナの報告では小さな段差を何度も上り下りして遊んでいたみたいだから。ちょっと手助けは必要だろうけどね」


 セレーネはそう言いながら階段の端や下にクッションを並べていた。仮に滑った時などに怪我をしないようにだ。仮に怪我をした時のためにスピカも待機している。


「リーナ。外に出すよ」

「はい」


 セレーネが外から声を掛けると、リーナが扉を開ける。すると、最初に出て来たのはクロだった。扉を潜ったクロは振り返ると、部屋に向かって鳴く。


「にゃ~」

「どうやら手本を見せて、外に出る事を促してくれるそうです」


 カノンはセレーネに耳打ちで教える。耳打ちである事から、クロがそのような事を言っていたという事が分かる。


「ほら、こっちにおいで」


 リーナは、部屋の入口でしゃがみながら、ユニコーンを誘導する。一番長く接しているリーナの言葉という事もあり、ユニコーンは一切臆する事もなく部屋の入口までやって来た。

 そんなユニコーンの前でセレーネはしゃがんで目線を合わせながら首を撫でる。


「今日は外に出るよ。私達も一緒にいるから安心してね」


 セレーネの言葉を理解しているのかは分からないが、ユニコーンはセレーネに甘えるようにして首を擦り付ける。ひとまず問題ないと判断したセレーネは、ユニコーンを誘導するようにして前を進んで行く。


「おいで」


 セレーネが声を掛けると、ユニコーンはすぐに隣に並ぶ。クロは、更にその前に出て、ユニコーンを誘導するように歩く。リーナはハラハラとしながら後ろから付いてきて、カノンは屋敷の敷地内に予定外の人間がいないかを確認していた。


(マリアナには伝えてあるから、対人の仕事は外の市役所でやるはず。だから、ひとまずはここにいるのは、常にこの敷地にいる人間だから問題はない。住人達もユニコーンの存在を知らないから、壁の外に不自然にいる人もいない。門は閉めてあるから、ユニコーンが出て行く可能性もない。大丈夫そうかな)


 カノンが耳で確認している間に、ユニコーンは最初の難関である階段に来ていた。クロが目の前で四つ足での下り方をゆっくりと見せていく。こればかりは二本足で活動しているセレーネ達では手本を見せられないため、大助かりだった。

 ユニコーンはそれを真似するようにゆっくりと階段を下っていく。セレーネ達はなるべく手を出さないようにしている。ユニコーン自身で乗り越えるべき壁だからだ。ずっと世話をしていたリーナは、ハラハラとしながら見守っている。

 ユニコーンは時々足を滑らしそうになりながらも何とか階段を下る事が出来た。リーナが拍手を送り、セレーネはユニコーンの身体が問題ないかを確認する。


「まぁ、ひとまず大丈夫そうだね。カノン」

「外は変わりありません」

「それじゃあ、初めての外だね」


 セレーネがカノンを見ると、カノンが扉を開けた。そこから外の芝と待機していたスピカが見えてくる。セレーネとクロが先に外に出て、ユニコーンを誘導する。ユニコーンは、初めて見る外の光景に若干戸惑いながらも臆せずに付いてきた。

 少し警戒するように地面に降りると、警戒するように地面を何度も踏む。そうして安全な場所だと分かると、広い庭を駆け回っていく。その横に並ぶようにしてクロも走り出した。


「初めての外で大丈夫か心配だったけど、杞憂だったみたいだね。軽い馬小屋は作ってあるよね?」

「あの子が使うだけのものを用意してあります。藁も敷いてありますので、既に使える状態です」

「それじゃあ、そこに案内してあげようか。こっちおいで」


 セレーネが声を掛けると、ユニコーンが駆け寄ってくる。セレーネの周りをくるくると回る元気一杯のユニコーンを撫でる。


「最初の死にかけが嘘みたいだね。こっちに新しい家があるから、付いてきて」


 セレーネが先導すると、そこには立派な厩舎が建っていた。


「……思ったよりも立派だねぇ」

「あの部屋と同じような状態にしてありますので、それなりの大きさと素材が必要だとなったようです」

「それは知ってるけど、現物をしっかりと見たのは初めてだから驚いちゃった。泉の水は?」

「中で循環させております。ナタリアとフェリシア様とスピカの合作で作られたもので、泉の水を分析した結果を基に同質の水を生成して循環させていくという魔術道具です」

「常に内部を浄化する仕組みにしてありますので、基本的に綺麗なままになります。ちょっと教会の秘術が使われているので、使い終わった後は破壊しますね。ユニコーンの保護を名目に利用させて貰ったので」

「そっか。それなら仕方ないね。相変わらず、そこは厳しいんだ?」

「少しずつ柔らかくはなっていますが、この辺りはまだ迷われているようですね」


 スピカから教会の内情を聞いている間に、ユーリがユニコーンを厩舎に入れる。厩舎の中では、ユニコーンがご機嫌で跳びはねていた。


「喜んでくれてるみたいだね」

「そうですね。部屋よりも歩きやすいでしょうし、ユニコーンにとっての普通は自然の中でしょうから、こちらの方がより過ごしやすい空間なのでしょう」

「寝藁の交換とかが必要になるから、ちょっと大変になるかもしれないけどね。クロは部屋に戻る?」

「にゃ~。にゃ~にゃ~にゃ~」


 クロは首を横に振る。そこでカノンがセレーネに耳打ちする。


「このまま厩舎の傍にいると。厩舎の中には人が入る場所もありますので、そこを与えれば良いかと」

「そっか。それじゃあ、クロにはあっちの場所で過ごして貰おうかな」

「にゃ~」


 クロが過ごす場所も決まったので、ひとまずユニコーンの引っ越しが終わる。若干世話が大変になるが、これも必要な事なので、リーナはやる気十分だった。

 この後はユニコーンの様子を見ながら健康診断機などの再設置を行い、ユニコーンに異常が出ないかどうかを見守りながら一緒に遊んであげる事になった。その結果、ひとまずユニコーンには異常はでず、新しい住処を大いに気に入って貰える事が出来た。

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