段々とか形に
それから一ヶ月の間で、カルンスタイン領には、着々と領民が集まってきていた。まだ魔動列車が通っていない事もあり、一気に集まる事はないが、少しずつ集まっている状況だ。
空間転移装置を設置して、ラングリドの輸送会社と契約して、食料の安定供給をしているため、小売店を経営する住人も来てしっかりと流通している。
今日はその街の状況をマリアナとフィアンナから報告されていた。
「現在食料関係の小売店が二軒、ミカエラの鍛冶屋が一軒、ゼノビアの服飾店が一軒、飲食店が一軒、宿屋が三軒、ギルドが一軒、役所が一軒、騎士団の詰め所が一軒、居住用一軒家が四十二軒、集合住宅が十軒となっています」
「宿屋にも既に客が入っています。ギルドも機能していますので、周辺の魔物の調査も冒険者に頼む事が出来ます。聖域への侵入は禁止していますので、現状大きな問題はないはずです」
「まぁ、そうだね」
冒険者達が活動を始めていても、聖域に侵入しようとしたなどの問題は起こっていなかった。ただし、これは現状の話であり、これからも同じようになるとは限らない。警戒はしておかなければいけなかった。
「お店自体は大丈夫そう? 工場勤務とか農場とかで働いている人はいるけど、そもそも住人が少ないから経営が滞るとかありそうだけど」
「街が出来上がるまでの間は、家賃などを極力少なくしていますので問題はないかと。これから先家賃は上がっていくという事を伝えていますので、これで経営が破綻したとしたら、見通しの甘い店主が悪いです。領民だからと言って、そこまで甘やかして良い訳でもありませんからね」
「まぁ、そのせいでちゃんと経営しなくなっても困るしね。その辺りの裁量は二人に任せるけど、あまり圧を掛けすぎないようにね」
『はい』
セレーネが判断するよりも、二人が徹底的にやる方が正確で公平な判断をする事が出来るため、二人に任せるのが一番だった。
「病院の建設も大部分が終わり、本格的な稼働も間近です。既に医者の募集などは終えていますので、その辺りもご安心ください。
また空間転移輸送会社から工場への輸送ですが、馬型ゴーレムによる輸送を試験的に導入していますが、現状大きな問題は起こっていません。子供達が時折近くで見ようとするそうですが、親が止めてくれています。既に魔動車が存在する事もあり事故の危険性を周知できているようです」
「そっか。それは良かった。ゴーレムにも大きな問題がないって分かったのは嬉しいね」
馬型ゴーレムの試験導入により、工場への輸送は、かなりスムーズに行えるようになっていた。
「積み込みをするゴーレムはどう? 地下道でも使えそう?」
「はい。そちらも問題ありません。一応、輸送会社の方にも確認を取りましたが、トラブルは一つもないそうです。寧ろ、積み込みを任せられるから楽になると仰っています」
フィアンナがアンケートをして、ゴーレム達の働きっぷりに関してまとめていた。その結果、ゴーレム達が問題を起こした事はなく、ゴーレム関連で生じた問題というのもなかった。
「それじゃあ、地下道の方でも使えそうだね。ゴーレムがいる暮らしって感じだけど、領民の様子は?」
他の街では見る事のない光景であるため、領民の反応はある程度確認しておかなければいけなかった。
「ひとまず大きな問題はありません。事前に説明してありましたので、この辺りは今後も問題ないと思われます。ただし、最初の移住者が全員到着した後の移住者達は驚くかもしれません。
その時には、既にゴーレムに関しても有名になっているものと予想されますので、大きな問題はないと考えられます」
「なるほどね。まぁ、問題が起こってから考えるしかないかな。現状問題がないなら、それでいいや」
現状問題が起こらないという点から、ひとまずは保留となる。ゴーレム関連での問題は色々と考えられるが、セレーネは最大限問題を解決するように開発していたので、後は領民達がいる中で利用して起こる問題くらいだ。
セレーネが予想していない問題が起こるとすれば、この時が一番可能性が高い。そのため問題が起こらない事を祈りつつ、起こるなら早く起こって欲しいと考えていた。
そうすれば、早く改善点が明らかになるからだ。
「工場の稼働率はどう?」
「材料がまだ少ない事もあり、百パーセントとはいきません。ですが、徐々に稼働率は上がってきていますので、地道に進めていくのが良いでしょう」
「そっか。私の工場はまだ少し先だし、今の内に色々な問題点が明らかになって欲しいんだけど……」
「問題がなければないで良いのでは?」
フィアンナの意見にセレーネは首を横に振る。
「まだしっかりとした場所で試してないものだったから、実際に使ってみてどうなるかは重要でしょ? そこでしか気付けないものだっていっぱいあるだろうし」
「フィアンナ。研究者兼開発者であるセレーネ様には、私達とは違う視点があるって事。最悪の場合を考えていらっしゃるの。問題が起こらない事が逆に怖いと思うという風に考えれば、私達も同じようなものでしょう?」
「確かに……安全に作れた証拠でもあるはずという考えていました」
「まぁ、確かにその見方もあるけど、私が使うならともかく私の見えないところで使われるものになるから、どうしても心配になっちゃうんだよね。取り敢えず、これからも報告お願いね」
『はい』
街の開発もある程度順調に進んでいる事がわかったため、セレーネは今後の視察の予定を立てていく。実際に自分の眼でも見る必要があるからだ。
領主としての仕事をしつつ、自分の研究も忘れていない。過剰生長実験は、現在のところ順調に進んでおり、経過観察を続けていくだけである。ゴーレムの改良も進んでおり、更なる動力の効率上昇が期待出来る状態となっている。
家畜の病気対策に関しては、ある程度目処が立っている。
地下道もある程度完成しており、港街の方に出入口を作る段階になっていた。
医療用の健康診断機も人間用に調整する方向で進んでいる。
ユニコーンに関しては、大分改善していた。部屋の中を元気に走り回る姿が多く見られるようになっていた。体力が少しずつ付いてきており、そろそろ外で過ごす練習をするというところまできていた。本格的にその段階になった際には、セレーネもある程度つきっきりで様子を見るという事になっている。




