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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ひとまず安定

 それから三日後。セレーネは、ユニコーンの生命維持機と健康診断機を開発して部屋に設置した。その頃には、ユニコーンも少しずつ立ち上がって歩くという事ができるようになっていた。

 ただし、それでもすぐに横になってしまうので、まだまだ自然には帰せない状態となっている。

 そんなユニコーンの定期診断をセレーネはその場で聞いていた。


「筋力などが多少劣るという印象です。実際には前よりもマシなのですが、普通の子馬と比べてしまうとどうしてもその辺りで差が出ます」

「う〜ん……でも、補助道具を作るより、この子の力に任せた方が良いよね?」

「はい。この子の身体も絶対に立てない程ではありませんので、このまま少しずつ身体を鍛えていくのが良いかと」


 スピカの意見は、大前提としてユニコーンを自然に帰す為のものだった。セレーネの補助道具を使えば立つこともできるだろうが、下手すればそれに頼りきりになる可能性がある。

 現状自分の足で立てる見込みがあるため、なるべくなら自分の足でしっかりと立てるように頑張ってもらうのが一番だというものだ。


「健康状態的には、まだまだ?」

「いえ、産まれたばかりの頃に比べれば、かなり良くなっています。リーシア様の栄養補給薬のおかげです。効率的に足りない栄養を補ている上に免疫力も付いているようですので」

「その辺りはさすが魔術薬の第一人者って感じだね。環境的にもかなり聖域に近くなったし、後は立てるようになったら、なるべく外で過ごさせるって感じだよね。その時には、敷地内に入る人を制限しないと」


 ユニコーンを引き取ったとはいえ、元々は聖域で隠れて暮らしていた種族だ。なるべく見られないに越した事はない。


「そうですね。ですが、それもこの子がここで動き回れるようになった後です。階段の上り下りなどもありますので。本当は地面のような場所が良いのですが、こればかりは仕方ないかと」

「屋敷の敷地内には馬房とかないもんね。そうだ。ゼノビアに馬着を作ってもらったの。温調効果を持たせたから、外に出ても問題ないはず。リーナに預けるね」


 セレーネは部屋でユニコーンの世話をしていたリーナに馬着を何着か渡す。


「ありがとうございます。ですが、ゼノビアさんに話しても良かったのですか?」

「うん。ちょっと特殊な生地で作って貰ったから。神聖さを重視して少しでも着心地が良くなるようにしたの」

「な、なるほど」


 セレーネはさらりと言っていたが、庶民であるリーナの認識ではそんな衣服は高級品どころか、最高級品と言っても良いくらいの代物だった。

 どちらかといえば、セレーネ達が着る服にするべき布なのではとリーナは考えてしまう。ユニコーンも大事だが、何よりも大事なのは、セレーネ達という事は変わりなかった。


「ひとまず、体調が安定したなら、基本的にリーナに任せつつ、仕事に戻ろうかな。こっちでも体調の変化は見ておくから、そこは心配しないで」

「はい。かしこまりました」

「スピカはどうするの?」

「ひとまず、容態が安定したとユニコーン達に伝えに行こうかと思います。まだ帰すのは時間がかかりそうだとも伝えておきます」

「うん。ありがとう」


 聖域に向かったスピカを見送ってから、セレーネは、マリアナ、ユイ、ライルの居る執務室に向かった。


「セレーネ。もう大丈夫なの?」


 ユイは、少し心配そうに確認する。ユイとしてもユニコーンの赤ちゃんが無事に帰る事が出来るかは大分気になっていた。


「大きな問題はないかな」

「そうよかったわ」


 ユイはセレーネの代わりに執務を行っていた事もあり、中々ユニコーンの様子を見られなかったため、セレーネの口から問題ないという事を聞けて安堵していた。


「一応、こっちの思考機にユニコーンの体調が映るように調整したから、こっちでも確認出来ると思う」


 セレーネは、思考機に一枚の【記録媒体】のカードを差し込んで、【投影結界】に反映させる。すると、ユニコーンの健康度合いが数値として出て来るようになった。


「……分かりにくいわね」

「そう? これが体重。これが体長。これが内蔵の動き。これが筋肉の稼働度合い。これが脈拍。これが血圧。これが脳の稼働度合い。最後に前日比。これで成長具合とかも確認出来るし、食事をした後にしっかりと消化しているかどうかも分かる。体調が崩れれば、どこかしらの数値に大きな変化が出るから分かるって感じ」


 セレーネの説明を受けて、三人ともどういうものか理解は出来たが、咄嗟に内容を理解できるかというとそうでもなかった。


「この筋肉が急激に動いているのは、大丈夫なのか?」

「ん? う~ん……うん。筋肉の箇所的に考えて立ち上がって歩く練習をしてるんだと思う」

「なるほどな。セレーネの開発したものだから、セレーネには分かり易いようだが、これを普及させるとなれば、もう少し項目の見やすさがあると良いかもしれないな」


 慣れれば理解できるものだが、それなら最初からもう少し見やすさを改善するのが良いだろうというのがライルの考えだった。ただし、セレーネからすれば、これは今使えれば良いと思うものであり、継続使用する予定はなかった。


「でも、ユニコーンみたいな事情がないと、こんなもの使わなくない?」

「病院では活用出来ると思うがな。医療の道具として売り出すのは手だと思うぞ」

「ああ、なるほど……う~ん……ナタリアと相談しておこうかな」


 ライルの後押しもあり、セレーネは売り出す方向で考えてみる事にした。ユニコーン用に調整しているが、これを人用に調整すれば病院でも活用する事は出来る。入院患者の容態などを数値で確認できれば、緊急時の対応が即座に出来るようになる。

 病院での導入は大歓迎になるだろうとライルは考えていた。


「さてと、今日から戻るから、一週間で何があったか教えてくれる?」

「かしこまりました」


 そこからセレーネがユニコーンに掛かりきりになっているときに起きた出来事の報告を受けていった。特に大きな問題はなく、開発に関わる事の報告のみになる。ライルとユイがいた事により、土地開発も問題なく進んでおり、住人の受け入れも大分進んでいる事が分かった。

 ここからユニコーンの世話をしながら、領主としての仕事と研究を続けていく事になる。

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