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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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唐突なトラブル

 イリステラと一緒にセレーネの作業を見学していたミュゼルは、取扱説明書等を見ながらセレーネを観察しているイリステラを見て、とある事に気が付いた。


「ス、ステラお姉様……もしかして……監査とかで来ましたか……?」


 ミュゼルがそう言うと、イリステラは目を見開いて驚いていた。


「変なところで聡い子ね。まぁ、似たようなものよ。お父様は簡単に王都を離れられないから、様子を見ておくように言われたのよ。まぁ、私達がカルンスタイン領に来るって話を聞いた後の話よ」

「な、何か問題が……?」

「違うわ。これもお父様の策略の一つよ。私はクリムソン家に嫁入りしたとはいえ、これでも第二王女だったという権威があるから、私がここの有用性を証言すれば、それだけでここを良く思わない貴族達を黙らせられる可能性が高くなるわ。まぁ、ミュゼルの姉という意味でも、セレーネの義姉という意味でも身内贔屓に見られる可能性はあるけれどね」


 ガンドルフは、カルンスタイン領を出来る限り安全に安定して発展させられるようにサポートするつもりでいた。それが領地を押し付けた自分の責任だと考えているからだ。

 現状まだ若いセレーネに領地を任せるという事に反対する貴族は存在する。ガンドルフに直接言ってくることなどはないが、そのことを他の貴族と話している事をガンドルフは把握していた。

 だが、それ以上にセレーネを評価する貴族も多い。この二年で大きな街の大枠を作り上げ、本人自身は街を円滑に動かすための魔術道具や街の安全を守るための魔術道具を開発している。

 更に聖域にてユニコーンと接触。安定して交流していき、ユニコーンを聖域に維持する事が出来ている。

 これらの功績は、セレーネだからこそ出来た事だと評価している者が多いのだ。


「実際に役に立つかは分からないけれど、念のための一手というところね。ここを任せる上で、力不足かどうかが鍵となるけど、その点では最初から心配はしていなかったわね。既に力不足ではないと分かるだけの成果はあるから。問題は素行くらいなものだけれど……まぁ、特に問題はないわね」

「良かったです……」


 これでセレーネが駄目出しされる事があれば、ミュゼルとしてもどうすれば良いのか分からなくなるため、ここで安堵した。

 そんな中で、唐突に工場の扉が開く音が響いた。出入りする人は、セレーネ達以外にはいるはずがないため、セレーネはマリアナが緊急の用があるのだと考えて、すぐに入口の方に向かった。

 すると、そこにはマリアナではなくユリーナが息を切らしていた。それほどまでに全速力で走ってきたという事が分かる。


「ユリーナ? スピカの聖域視察の運転手をしてくれてたんじゃ?」

「はぁ……はぁ……作業中……失礼します……! スピカより……すぐに屋敷に戻って欲しいと……伝言を預かりました……ユニコーンの赤ちゃんが……衰弱しており……引き取りました」

「カノン! マリアナとナタリアを呼んで! ユリーナは二人をお願い!」


 ユリーナの報告を聞いたセレーネは、即座に指示を出し返事を聞かずに【空間転移】で自分の屋敷に転移する。その玄関ホールには、ぐったりと横たわったユニコーンの赤ちゃんと魔術による治療をしているスピカの姿があった。


「状態は!?」

「自発呼吸が出来ておらず、脈も弱いです。現在魔術による補助で生き存えている状態です。ユリーナは魔術が不得手ですので、セレーネ様にこの補助を頼みたいのです」

「任せて。心肺の補助をすれば良いのね。体温は?」

「現在【適温維持】で周囲の温度を温めて維持しています」

「そっちも私に任せて。スピカは治療に集中して。ユニコーンに許可は?」

「寧ろ頼まれました。母体は無事です。子供の心配をしているので精神的な方が問題かもしれません」

「了解。それじゃあ、変わるよ」


 セレーネは【高速演算】と【並列演算】を自身に掛けて、複数の魔術を同時に制御しユニコーンの生命維持に集中する。そこに毛布を持ったリーナが駆け寄ってくる。


「セレーネ様は、そのまま維持を」


 リーナは、スピカが衰弱したユニコーンの赤ちゃんを連れてきたのを見て、即座に新品の毛布を用意して持って来た。

 そして、セレーネが魔術に集中出来るように、自分でユニコーンの身体に毛布を巻いて身体を温める。


「私に出来る事は……」

「声を掛けてあげて。安心させてあげらえるだけでも助かるかも」

「わ、分かった」


 リーナは、首を撫でてあげながら励ましの言葉を掛けていく。その中で、セレーネが生命維持をしつつ、スピカが状態を分析しながら根本的な治療法を考えていく。

 そこにカノンがマリアナとナタリアを連れて駆けつけた。簡単な状況をカノンより聞いていた二人は、すぐに作業に移る。ナタリアは周囲に結界を張り、内部状態を清潔に保つ。


「カノン。部屋の一つを片付けて、この子を寝かせられる場所を作るよ。その後に担架を用意して運ぶ」

「分かった」

「ナタリアは、ここの処理が終わったら、その部屋をこの子に合わせて魔術的処理をお願い」

「了解」


 マリアナの指示に従い、カノン達も動く。カノンとマリアナは、二階の客室の一つを次々に片付けていき、広く使えるようにする。その後、即席で頑丈な担架を作り、ユニコーンの傍に持って来る。

 その頃にはユリーナがミュゼルとイリステラを連れて屋敷に戻っていた。力があるカノンとユリーナでユニコーンを担架に乗せて客室へと移動させる。

 その間もセレーネは魔術により生命維持を続けていた。


「どんな感じ?」

「内臓などの異常は見られません。恐らく、少々虚弱に産まれてしまったのでしょう。このまま生命維持をしっかりとしていけば、段々と自発的に出来るようになると思われます」

「問題はそれを維持させるだけの設備がないって事ね。私が魔術を維持出来るのは、後十時間くらいだよ」

「その後は、私が引き継ぎます。その間、スピカは寝て休んで。一人ずつ休みながら、ローテーションを組んで生命維持を続けつつ、何かしらの方法を考えよう」

「うん。分かった」


 病気などではないと分かった以上、ここからはユニコーンの赤ちゃんが自分で生きていけるだけの力を得るまで生き存えさせるしかない。

 二人が診る理由は、トイレ等に行く際に交代するためだ。トイレに行く度に命の危機をユニコーンに強いるのは危ない。この辺りは必要不可欠だった。

 唐突に訪れたトラブルに、セレーネ達は全力で対処していく。これはユニコーンとの友好関係に罅を入れる事になりかねない。全力で対処する以外に方法はなかった。

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