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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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地下道の視察

 地下道に着いたセレーネは、カノン達と一緒に階段を降りていく。その階段に少し細工がされている事に気付いたセレーネは、しゃがみ込んで階段をなぞる。


「これって……滑り止め?」

「はい。雨の際に転倒事故が起きる可能性を考慮したものと聞いています」

「確かに滑りにくいかも。こういう加工はあまりみないなぁ……そっか。建造物とかになると、ここら辺もしっかりと考慮しないといけないもんね。ジェニファーにも意見書出しておこう」


 滑り止めの効果を実感したセレーネは、これから建造予定の駅の階段などにも利用して貰おうと考えた。


「あっ、これって、リーシアちゃん達のオリジナル?」

「そうなりますね」

「じゃあ、リーシアちゃん達に許可貰わないとね」


 勝手に流用すればトラブルの素。この辺りはセレーネも理解しているので、しっかりと許可取りから考えるようになっていた。


「空気の循環もしてる感じかな。風を感じるし」

「報告書によれば、空気の循環を担う気流は、基本的に天井付近流れているようです。その気流に巻き取られるようにして下の空気が拾い上げられるため、多少は風を感じるようになってしまいます。ですが、安全面にて必要な事ですので、この辺りは仕方ないかと」


 カノンは、手に持った報告書をまとめた資料を見ながら説明する。地下道に関しては、セレーネも全ての報告書に目を通している訳ではない。リーシアを全面的に信頼しているのもあるが、セレーネが忙しかったという事もあり、マリアナが管理していた。


「うん。下手に毒素が溜まっても嫌だしね。まぁ、閉じた場所じゃないし、そう簡単にそんな事にはならないと思うけど」


 この辺りは過剰な心配とも取れるが、何かがあってからでは遅いという事で使われている。


「階段はちょっと広すぎるかな? 通路もこの広さになるよね? 予定よりちょっと広い気がするけど」

「一方通行であれば、もう少し狭くても良いですが、両方から人が行き来する事を考えれば、このくらいは欲しいとなったようです」

「そっか。まぁ、混雑するよりは良っか」


 地下道を降りて来たセレーネは、二人が作業をしている整備場に向かう。線路予定地は、歩行者が通行する場所よりも一段下になる。そのため、カノンに抱えられて降り、そのまま抱えられた状態で整備場へと向かって行った。


「リーシアちゃん、ミーシャちゃん」


 セレーネが呼び掛けると、リーシアとミーシャがセレーネの元にやって来る。そして、セレーネの頭を撫でる。


「今日は地下道の視察ですね」

「うん。色々と忙しくて全然見に来られてなかったから。マリアナが管理してくれてたし、二人だから大丈夫だと思ったけど、さすがにそろそろ視察はしないとなぁって思ったから来たよ。もう機械の搬入までしたの?」


 整備場には、魔動列車の整備のための機材が多数置かれていた。


「まだ搬入までで、現在は設置場所の調整などをしています」


 地下道を作りながら、整備場の完成を目指して二人は動いていた。今は、セレーネが来るという事もあり、軽く休憩時間となっている。


「ふ~ん……意外と整備場も広いね。ここも空気の循環はしてるんだよね?」

「はい。あちらの職員出入口と搬入口の方からしていますよ」

「二種類もいるかな?」

「人だけの出入りの時に搬入口を使うと、常に開いている必要が出て来ますので、防犯を考えるとこれが一番かと」

「そっか。まぁ、どっちにも監視用撮影機を設置すれば良いかな。防犯って面だと、それが一番重要だしね。魔動列車が二両同時に整備出来る感じ?」

「はい。故障した場合に使えなくなるのは困りますから。整備場は大分大きくなりましたが、一応マリアナさんの許可は得ています」

「うん。マリアナが良いって言ったなら良いよ。必要だと思ったから良いって言った訳だし。あっちは休憩所?」


 セレーネが見た先には、扉と窓があった。光が反射しているため中が見えにくいので、それが何の用途なのかが分かりにくくなっていたが、この場所で部屋を用意するとなれば、監視所か休憩所しかないと考えて訊いていた。


「はい。休憩所の奥には、セレーネが設置する監視用撮影機の映像を確認出来る部屋を用意してあります」

「じゃあ、完成したら設置しないとだね。壁にある魔術陣は魔力変換結界?」


 セレーネは、ジッと天井や壁を見ながら訊く。普通に見ればただの模様が描かれた壁にしか見えないが、その中にしっかりと魔術陣となる要素が含まれていた。


「セレーネにはすぐにバレますね。一応、偽装しつつ付けてみました」

「そっか。ああやって、魔力線の上から普通に刻印していけば、一見して魔術陣があるように見えなく出来るんだね。魔力線はしっかりと繋がってるから魔術陣としてはしっかりと機能してるし」

「昔はよくある技術でした。勝手に魔術陣を書き換えられる事も少なくなりますし、傍目からは模様のようにしか思えないのです。魔術に精通していなければ、見分けるのは難しいとも言われていました」

「それでしたら、教会にも同様のものがあります」

「そうなの?」

「はい。レリーフやステンドグラスです」

「…………何だっけ?」


 セレーネは、自分を抱き上げているカノンに確認する。


「浮彫りと着色したガラスで作る芸術です。お嬢様は授業でも触れられていませんので、詳しいところはご存知ではないと思います。ですが、絵で何度か見ていらっしゃるはずですよ」

「そうだっけ? でも、偽装しておくのは、ゴーレムにも使えるよね。偵察用の鳥型ゴーレムも彫像みたいにして設置しようと考えていたけど、これを見たら成功しそう」

「確かにそれは良いと思います」


 こうして表面的な事に囚われる事で真実を見る事が出来ない可能性を知ったセレーネは、ゴーレムの設置場所をかねてより決めていたようにする事にした。


「それにしても、あれって自動で発動するの?」

「はい。条件起動により、一定以上の風を感じ取った場合に発動します。思考機による制御でも良いですが、こちらの方が楽でしょう」

「機能がなくなったら分かる?」

「それは風の動きで判別が出来ます」

「う~ん……確かに魔術陣にも駄目な点は一つもないし、大丈夫かな。ちゃんとそういう部分は管理人を置いて、しっかりと報告させる形にしよう」

「はい。それが良いでしょう。休憩所は、そのための管理人室でもあります」

「まぁ、そうだよね。少しでも居心地を良くしてあげられる?」

「はい。そちらはお任せ下さい」


 そこから地下道全体を確かめ、スピカによる結界を張るべき場所の選定などを済ませていき、地下道の視察を終える。

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