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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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雪の降る日

 それから二週間後。その日は朝から雪が降っていた。その中をセレーネは厚着をして歩いている。その側にはカノンも付き添っていた。


「……寒い」

「雪が降っていますから。少し積もりそうですね。視察を後日にするのはどうでしょうか?」

「もうリーシアちゃん達にも行くって伝えちゃったし。地下がどうなってるのか実際に見て確認しないと。寒い……」


 寒がりながら魔動車に転がり込んだセレーネは、先に乗っていたスピカにくっついて暖を取っていた。カノンは運転席に座り、地下道に向かって運転する。

 抱きついているセレーネを受け入れながら、スピカはふと思った事を口する。


「【適温維持】を使えば良いのでは?」

「…………忘れてた」


 スピカの気付きで思い出したセレーネは【適温維持】を使って、自分の周囲を少し温める。それでもスピカに甘えるのはやめずにくっついていた。スピカとしてもセレーネが甘えてくる事はとても嬉しい事なので、優しく頭を撫でていた。


「雪って初めてだよね。積雪対策をどのくらいすれば良いかの指標になるかな。魔動車って、どのくらい積もったら動かせない?」

「積もらないに越した事はありませんね。路面が凍結していた場合、タイヤが滑る可能性があります。今も少し怖いですね」

「路面か……熱を走らせる?」

「溶けて水になったものは大丈夫でしょうか?」


 スピカは溶かしても水が残れば、熱が抜けた時に凍結するのではと考えていた。スピカは同じ家に住んでいても、基本的には聖域でユニコーンの世話か、騎士団の訓練に同行して治療を担当するなど、セレーネ達から離れた行動が多い。

 そのため街の事に関しては、そこまで詳しくは知らなかった。


「う~ん……排水溝に流れるようにはなってるから、多分問題なし。雨の対策でマリアナがそうして貰ったって言ってたからね」


 レッドブラッドの道路は、道路の脇に走らせている排水路に雨水などを誘導するため、ほんの少しだけ中央が盛り上がる形になっている。ここに熱を持たせたとしても、雪が溶けて出来た水が道路に残り続けるという事はない。


「でも、その先は分からないかも。排水路の水とか下水の水とかも凍結する?」

「気温の問題ですね。絶対にしないとは言えません」

「う~ん……下水道の方はナタリアがちょっと工夫してくれたみたいだけど、路面とか排水溝とかはちゃんと考えないといけなさそうだね。魔動車の事故も防ぎたいけど、馬型ゴーレムも滑りそうなんだよねぇ」

「馬車の車輪は工夫した方が良いかもしれませんね。魔動車もタイヤを履き替える事で対応する事が出来ます。領にはないので、取り寄せるしかありませんが」

「ふ~ん……そういうのもあるんだ。自分でやるの面倒くさそう」

「魔動車自体の普及は、まだまだですから、魔動車屋がこちらに来てくれる事を祈るばかりですね」


 魔動車が高級品である事は、まだ変わっていない。製造コストの削減などで年々少しずつ安くはなっているが、庶民が手を出せるようなものではなく、まだ値段は高い。商人などの方が買い求める数が多い。これは自分達でも輸送網を作ろうとしているからだ。

 魔動列車による輸送よりも柔軟に輸送できるという点から大型の魔動車を購入するという形だ。街中では、自家用魔動車を使うよりも歩いた方が良い。庶民に広がるのは、まだまだ先の事だ。


「まぁ、住人も少しずつ来始めたくらいだし、そこら辺もまだまだ先になりそうだね。港街の建設も始まったけど、向こうの方が寒そう……」

「海風がある分、冷えるかもしれませんね」

「そこら辺もしっかりと調べておかないとかな。港街に住む人達が快適じゃないし。そこら辺の解決は誰かに任せるとしようかな」

「そうですね。お嬢様は、他の研究などもありますから」


 他にもやらなければいけない事がセレーネにはあるため、この研究は、所属予定の研究員に任せる形になる。その研究員もナタリアが面接しているが、あまり増えていない。総合研究室に見合う研究員がいないからだ。セレーネやナタリアほどの研究員を求めると、基準が高すぎるため、最低でもフェリシアクラスの研究員を採用基準にしていた。

 それでも基準は高いが、総合研究室が担当する研究内容は、基本的に難易度が高い。国王であるガンドルフやセレーネの要求するものを作らなければならない上に、様々な分野にも手を出す事になるからだ。


「結構基準が高いけど、それで合格した人がいるのも凄いよね。フェリシアくらい出来るって言っても、基礎操作とかの腕前の話で発想力がそのくらいあるかは、まだ分からないみたいだけど」


 採用基準は、技術的なもので統一されている。発想力がある方が良いが、そもそも基礎的な操作などが一定基準以上で出来なければ採用する事など不可能だ。フェリシアが基準になるのは、そういった技術面での事だった。

 発想力に関しては、長年セレーネの隣におり、色々なものを見させられているフェリシアの方が優れている。ナタリアの判断ではそういう研究員ばかりになってしまっている。

 だが、こればかりは経験などがものをいうので、これからに期待という形だった。


「セレーネ様がお求めになるのは、発想力なのですか?」

「う~ん……出来れば、最適な方法を見つけて欲しいからね」

「セレーネ様はお求めになる基準が高いですね」


 スピカからすれば、セレーネ達の発想力は、かなり異質で誰にでも出来るようなものではない。常人がゴーレムやスライムを作ろうなどと考えるわけがないからだ。仮に作ろうと考えても実行をしないだろう。そもそもどうすれば良いか分からず考えもしない。

 だからこそ、セレーネが作るスライムやゴーレムには注目が集まる。


「でも、私の周りって大体出来る人が多いよ?」

「セレーネ様の周りにいらっしゃる方は、優秀な方が多いですからね」

「ふふん!」


 セレーネはまるで自分のことのように胸を張る。周りが褒められるという事は、セレーネにとってそれほどまでに嬉しい事だった。

 そんな会話をしていると、目的地である地下道へと進んでいく。

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