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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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聖域の視察

 その翌日は聖域の視察へと向かう。ここではマリアナは同行しない。この視察はユニコーンの状態を確かめるためでもあるため、マリアナがいては意味がなくなるからだ。

 代わりにスピカが同行している。スピカであればユニコーンとも接触できるからだ。カノンは聖域の入り口で魔動車と共に留守番をする。

 聖域の入場証を持って中に入った二人は、まっすぐ聖域の泉に向かった。聖域の泉は前までと少し異なる。それは、日光の射し込み具合だ。

 ユニコーンのリクエストに応えて、スピカが剪定をしたため、前よりも陽射しが多く射し込んでいる。ここでユニコーン達は日光浴をしている。

 その中でセレーネは機材のメンテナンスをし、スピカはユニコーン達の健康診断をする。

 スピカがユニコーン達の健康診断を始めたのには理由がある。それはユニコーンの妊娠が発覚したためだ。


「どんな感じ?」


 泉から上がってユニコーンの背に乗りながら身体を拭いていた。セレーネが汚れないようにユニコーンが気を遣ってくれているのだ。


「順調に育っています。母子ともに異常はありません。来月には出産できるでしょう。念の為立ち会いたいですが、こればかりはどうしようもないですね」


 スピカとしては、しっかりと立ち会ってサポートしておきたいと思ったのだが、出産する日や時間などを正確に見極める事は不可能なので、運が良ければ手助けしようという気持ちだった。

 ユニコーンが繁殖するという事が、そのまま聖域の維持にも繋がってくるため、セレーネも少し気にしていた。しっかりと身体を拭いて、靴を履き直したセレーネは、身体を伸ばす。


「さてと、ひとまず全体を調査しようか。数値上は問題なくても実際にはちょっと変わってる可能性もあるからね。赤ちゃんがいる子は、無理しないで良いからね。ゆっくりしてて」


 セレーネがそう言うと、妊娠しているユニコーンは泉の傍で佇む。他のユニコーンはセレーネを乗せたユニコーンを先頭にして聖域内を歩き始めた。


「何度かまとまった雨が降ってるみたいだけど、聖域内は特に変わりないみたいだね。やっぱり冬はちょっと寒いけど」

「お身体は大丈夫ですか?」


 泉に入ったセレーネの体温が急激に下がっていないか、スピカが心配する。それに対してセレーネは笑顔で手を振る。


「大丈夫。【適温維持】を使ってるから、体温も正常に戻ってるよ。でも、冬の点検は寒いから嫌だね」

「あまりご無理はなさらないようにお願いします。カノンが心配しますので」

「は~い」


 ユニコーンに乗りながら聖域を移動していき、調査用の魔術道具の点検などをしていく。同時に直接聖域の環境を見て、大きな変化がないかを確認する。


「特に大きな変化はなさそうだね。いつもと同じで、皆の方で何かしら違和感のある場所があったら案内してね」


 セレーネは、聖域の視察の際は毎回ユニコーン達が感じた違和感などを確認している。これまでユニコーン達が、そういう場所へ案内してきた事はなかった。

 そして、今回もいつも通りの巡回ルートから逸れる事はない。それだけしっかりと聖域を守れているという事が分かる。

 最後にユニコーンの骨がある洞窟を調査して花を供えたら視察は終わりだ。この際、ユニコーン達に嘶いて貰わなければ、領全体への浄化は発動しない。この辺りは厳重にお願いをしている。

 領民が来始めている現在では、ここからの浄化を行ってしまうと国に秘密にしている事が明るみに出る可能性がある。ユニコーンの浄化は本当に必要になったときにしか行わないと決めてあった。


「取り敢えず、問題なし。崖際の結界も全部機能してる。侵入の痕跡もないし、ユニコーン達の健康状態も問題なし。スピカの方は?」

「同意見です。聖域の維持はしっかりと出来ていると思います。強いて言えば、ユニコーンの妊娠が順調に経過しているというところでしょうか」

「あっ、そっか。そこもしっかりと報告書に書かないと。これまでも書いてあるし。さてと、それじゃあユニコーンのお世話をしないとね」


 セレーネはそう言って、ユニコーン達にお世話道具を【空間倉庫】から出す。この辺りは通常の馬のお世話を騎士団から学び、ユニコーンにも活かしている。主にスピカが学び、セレーネに教えるという形で進んでいき、今ではセレーネ一人でもある程度出来るようになっている。


「蹄は前にやったから、鬣を整えるくらいかな」

「そうですね。鋏にお気を付け下さい」

「むぅ……もう何回もやってるから大丈夫だよ」


 セレーネは左右のバランスを見ながら丁寧に鬣を整え、終わった後はブラシで身体を軽く擦っていく。そうしてユニコーン達のお世話を終えた二人は、ユニコーン達に見送られてカノンが待つ魔動車まで戻る。


「ただいま」

「おかえりなさいませ。聖域はいかがだったでしょうか?」

「うん。特に問題はなかったよ。これまで通りって感じ。外では何か変化あった?」

「いえ、何も変わりありません」

「そっか。それじゃあ、帰ろうか。来月には赤ちゃんユニコーンのお世話とかが出来るかもだし、ちょっと楽しみだなぁ」

「赤ちゃんユニコーンが生まれた場合、最大限の補助をするのですか?」

「う~ん……そうしたいけど、そこはユニコーン達に任せるのが良いと思う。自然界で生きる訳だし。よっぽどの事がない限りはね」


 聖域の維持は手伝うが、ユニコーン達の子育てに細かく手出しをするつもりはセレーネにはなかった。そこはユニコーン達が自然界での生き方を教えるべきだと考えているからだ。


「私もそれが良いと思います。では、帰りましょう。マリアさんに、お風呂の用意を事前にお願いしておきましたので、屋敷に帰り次第入りましょう」

「は~い」


 セレーネが泉に入った事もあるので、カノンはマリアに湯船の用意を頼んでいた。この辺りは眷属の繋がりがあるので、セレーネが帰ってくる事を察する事が出来るマリアに頼むのが一番だった。

 そんなこんなで、聖域の視察が終わった。

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