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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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工業区の視察

 翌日。予定通りセレーネは、魔動車で工業区の視察に来ていた。既に壁は出来上がっており、大型の工場の建設が始まっている。その大きさは設計図を見たセレーネでも驚くような大きさだった。


「わぁ、昔見た工場より大きいかも」

「お嬢様が見た工場は、工房に近しいものです。ある程度大きな場所であり、大型の炉などを扱い、ある程度機械の手を借りて行われています」


 昔と言っても、空間転移装置の設置作業で国中を動き回っていた時に、そういったものも外側のみ見ている。そのためその中身までは詳しく知らなかった。ただし、大体の事は今回の製造で学んでいるので知っている。


「工場といっても全部自動でやってくれるわけじゃないんでしょ。さすがに、そこは分かるよ」

「食品の加工などは、自動で行われる場所もあります。人の手が入ることの方が多いですが。お嬢様の場合、その手をゴーレムの手が代わりにやっているため完全自動化になっているというだけです」

「ゴーレムの開発が誰でもできるようになったら、工場の自動化も進むね。失業者が出そうだけど」

「セレーネ様の魔術機械でも、ある程度管理する人は必要ですが、現在工場を維持しているような人数は必要なくなるでしょう。その人材を有効活用するのか切り捨てるのか。経営者の腕が問われますね。これが経費削減の為となれば話が変わってきますが」


 マリアナからそう言われ、セレーネはすぐにどういう意味なのかを察した。


「人件費?」

「諸々といったところでしょうか。この工場が成功すれば解雇などの心配もしなくて良いのですが、こればかりは稼働してみなければわかりません。いくつかの流通ルートは得ています。国王陛下の了承も頂いております王都の騎士団にも卸す予定です」

「まぉ、王都とかは学園もあるし、新人騎士の育成とか衛兵が着る物とか色々あるもんね」

「カルンスタインの独占とはなりませんが、良い収入源になるかと。王都の騎士団の育成は荒っぽいところがありますから、鎧が壊れる事もしょっちゅうです。そのせいで経理がどれだけ嘆いていた事か」


 マリアナは軽く同情するような表情でそう言った。王城勤務中に、そう言った場面などを目撃しているため、王都の騎士団の育成がどのようなものなのかは知っていた。

 有事の際は国王を守るための騎士達であるために、その育成には力を入れている部分がある。一年前の反逆でも、反逆者側ではない団員達は奮闘していた。同じ訓練を積んだ騎士が相手という事もあり、そこまで圧倒する事は出来なかったが。

 カルンスタイン辺境伯領には、そんな王都の騎士団に所属していた騎士が多く所属している。それを思い出したセレーネは、報告に上がってくる経費が頭を過ぎっていた。


「うちはそこまで激しくないね」

「ベネットが鎧を着せない事もありますから。鎧を過信し過ぎるなという事ですね。お陰で、スピカも仕事ができます。やり過ぎてはいませんので、そこは安心ですが」


 セレーネは少し呆れたような表情をしていたが、ベネットの考えに納得出来るところもあるために最終的には頷いていた。


「まぁ、確かに鎧があるからで攻撃を受けるとかはやめて欲しいしね」


 鎧を過信した故に相手の攻撃を受けて死んだなどという事がないようにして欲しいとセレーネも思っていた。鎧は着て欲しいと思うが、それを信じすぎないようにという考えも持って欲しいのだ。

 その辺りの教育などもベネットがしっかりと行っているので、そこだけはセレーネも安心出来た。

 そんな話をしていると、セレーネは魔動車の窓の外を見て確認したい事が出来た。


「資材の運び込みとかの道は?」

「整備しています。中央区を経由していくことになりますが、外から中への道を増やすよりは良いかと。中央区にもここまでの搬入路を作ってあります。円滑な運び込みができると思います」


 中央区は、住人達が住む区画だ。セレーネの屋敷もその区画内にある。街の入口があるのも中央区だ。その入口から工業区までの道は魔動車などが通る前提で大きな道となっていた。


「こっちの倉庫は?」

「工場と向かい合わせになるように設置します。工場で事故が起こっても倉庫への被害を出さないようにする為です。逆も同じですね。互いに結界を張り、影響を最小限に抑えます」

「そっちはナタリアが?」

「はい。フェリシア様、スピカと共に。ある程度既存の魔術で構築が可能でしたので、さして時間も掛かりませんでした」


 結界に精通しているスピカとフェリシアの手伝いもあり、この辺りの作業はかなり早く終わっている。


「こちらの倉庫は【空間倉庫】ではありませんので容量などに限界があります。【空間倉庫】による事故防ぐ為ですので、こちらはこのままで構いません」


 セレーネに頼めば、ここの倉庫も設置型空間倉庫にする事が出来る。しかし、【空間倉庫】に付随する事故としてあげられる閉じ込めなどが考えられるため、自分達で管理出来ない場所では使わない方が良い。マリアナはそう考えていた。

 管理をミスして、【空間倉庫】が閉じれば、中の素材も全て失われる可能性がある。同じ【空間倉庫】を開けられるかは、セレーネにも分からないからだ。


「まぁ、そうだね。内部環境くらいは調える? 事故の発生を抑制する事くらいは出来ると思うけど」

「それは総合研究室に依頼しましょう。これからの研究員の研究内容の一つです。これが他の工場で起こるかもしれない事故を防ぐことにも繋がりますので研究のしがいがあるでしょう」

「そっか。じゃあ、しばらくは結界だけだね」


 全てをセレーネが開発すれば、研究員の仕事がどんどんと減っていく。特にセレーネがやらなければ完成しないという訳では無い研究は、総合研究室に所属する予定の研究員に任せる方が良いという事になった。


「はい。それと工場の管理者には元々工場の管理を担当していた方に頼む事にしました。元々職も探していたようですのでタイミング的にも良かったと」

「何か問題があったの?」


 職を探しているという事は、職を失っているという事に他ならない。セレーネは、職を失うような何かをやらかした人材なのかと心配になっていた。

 これに対してマリアナは首を横に振る。


「職歴やこれまでの実績、犯罪歴を洗い出しましたが、全て問題なしです。職を失った原因は、経営者が夜逃げしたからだそうです。その後会社を維持することはできず、倒産したそうです」

「ふ〜ん……大変だね。その工場はどうしたの?」

「別の会社が買い取り、稼働中です。そこで再就職出来れば良かったのですが、他の若い者に譲ったそうです。買い取った会社も全ての人材を雇用できるわけではありませんから」

「ご老人?」


 若者に譲ったという点から、セレーネはその人材が老人なのではと考えた。そこから、その人材を雇用して良いのか心配になっていた。


「五十を過ぎた現役です。経験は十分ですし、ある程度機械への知識もあります。セレーネ様の魔術機械にどの程度適応できるか分かりませんが、それは若者でも同じこと。それであれば、ある程度機械の知識がある方が理解しやすいでしょう」

「なるほど」

「後は威厳がある方が部下も従いやすいでしょう。セレーネ様のように親しみがある方でも良いですが、工場という現場では何が命取りになるか分かりません。ある程度は気を引き締められる人材が適していると考えました」

「うん。私もそう思う。私ももう少し威厳がある感じが良いかな?」

「お嬢様はそのままが一番威厳にも満ちていますよ」

「そう? ならいいや」


 マリアナは威厳があるのかと心配になっていたが、カノンはセレーネがどういう人かを知っている。素のままのセレーネであれば、威厳が必要な時にしっかりと発揮するという事も分かっていた。


「取り敢えず、この工場ができ次第、私はここで作業するって感じで良い?」

「はい。お願いします。工場の稼働は管理者が来てからにしましょう。既に、ある程度住宅も完成していますので、こちらに住む準備が出来た契約済みの移住者から引っ越してきています」

「段々と活気が出て来ると良いですね」

「だね」


 工業区も完成が近づいており、カルンスタイン領の領民も順調に移住を始めている。領地として本格的に稼働する時も近い。

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