似たもの一族
セレーネがアイデア出しをしている中で、カノンは地下作業をしているリーシア達の元に着いた。地下への入口は綺麗に整えられており、階段まで出来ていた。
この入口は人が渡る通路に繋がるものであり、魔動列車用の通路の入口は別に作られる予定だった。現在は魔動列車が止まる駅兼整備場の空間を整えている最中だった。
かなり広い空間になっている地下に入ったカノンは、耳でリーシア達を探して、真っ直ぐ迷わずに移動した。
「リーシア様。ミーシャ様。お嬢様から、お手紙を預かっています。今後の予定の一部の通達です」
「ありがとうございます。ミーシャ」
「はい」
カノンからミーシャが受け取り、内容を確認していく。その内容を見たミーシャは、少し驚いたような表情をする。
「リーシア様。セレーネ様もリーシア様と同じようにお考えのようです」
「そうでしたか。それなら話が早くて良いですね」
「リーシア様は、お気づきになっていたのですね。お嬢様は、ご友人の手紙を読み根本的な解決をしなければならないと考えました。そこまで大きな問題になるとはお考えでなかったようです」
「あの巨体が動いて、ただ風圧が強いだけで済めば良いですが、それに人が耐えられるかまで考えた場合、子供などは吹き飛ばされかねません。老人なども危険と考えられますね」
リーシアは作業の手を止めて、ミーシャから手紙を受け取り魔術陣を見る。
「風を吸収し、魔力に変換。変換した魔力をそのまま結界の維持に利用ですか。これなら半永久的に利用出来ますね。管理は思考機でやるつもりでしょうか?」
「そこまではまだ決めていません。ですが、お嬢様は思考機での制御が基本になり始めているので、恐らくは思考機を扱うかと思われます」
「なるほど……では、こちらでもある程度考慮した形を提案しようと思います。少々お時間を頂いても宜しいですか?」
「はい」
リーシアは、ミーシャが用意する椅子に座り、机に置いてある紙にアイデアを書き留めていく。その間、カノンはちらちらと周囲を見ていた。せっかくここまで来たため、現在の状態をセレーネに報告しようと考えたからだ。
その様子にリーシアとミーシャは即座に気付いた。
「気になりますか?」
「あ、はい。申し訳ございません。お嬢様に現状の報告が出来ればと」
「構いませんよ。現在は駅の構築をしているところです。これだけ大きな空洞を落盤させずに維持するというのも難しいものですね。支えとなる柱の強度を上げつつ【座標指定】を天井に刻む事で落盤の可能性を限りなくゼロに近づけている最中です」
地下空間は、地面から天井まで五メートルほどある。整備を考えると天井は高い方が良いというセレーネ達の考えを汲み取った結果だ。
更に地下に広い空間を作るという事は、それだけ天井となる地面の支えが減るという事。落盤が起きる可能性などを最大限考慮し、【座標指定】による現在の座標の維持だけではなく、柱による支えも残した。
万が一が起きる可能性を限りなく減らすためのものであり、【座標指定】がある以上、ほとんどの場合は必要のないものである。
「柱の位置はしっかりと考慮し、邪魔にならない位置にしてあります。見栄え的にも問題はないかと」
ミーシャにそう言われたカノンは、駅全体を見回す。
(確かに全体的に統一感があって、柱が邪魔とは思わない。でも、ここは作業場なのだけど……)
この場は客に見せるような場所ではなく、ただただ作業をするためだけの場なので、見栄えは最悪なくても構わない。カノンはそう考えていた。
カノンがそう考えているという事にミーシャが気付く。
「ここは整備や積み込み、積み出しなどをする場であるから、見栄えは要らないと思っていますね。ですが、少し見方を変えましょう。例えば、セレーネ様の執務室が散らかっていた場合、カノンさんは何を考えますか?」
「整理整頓をしなければと……なるほど。見栄えが良い状態が維持されている間は、この場所が散らかっていないという事が分かります。最初から乱雑な場所ですと、物の散らかりが分かりにくいという事ですか?」
「はい。見栄えを良くしようと思えば、綺麗に使わなければいけません。整備の場でで見栄えを気にするのかというようにお考えになってしまうかもしれませんが、整備の場だからこそ綺麗に扱おうという意識を持って貰いたいのです。リーシア様も物を散らかす事がありますが、この意識を持った結果、ある程度マシになりました。この実例を用いたものですね」
「ミーシャ」
「失礼しました」
余計な事を言わないようにというリーシアの釘だが、ミーシャには全く刺さっていなかった。リーシアも怒っているわけではないので追撃はない。
(お嬢様の散らかしは、リーシア様の遺伝という事かな。リーシア様はかなりマシになられたようだけど、お嬢様がそうなるのに何百年掛かる事か……まぁ、私が毎回片付けるからやらないというのが一番大きな原因なのかも……)
セレーネとリーシアの似ている部分を知ったカノンは、ミーシャが行ったような事をした方が良いのかと考えていた。だが、セレーネに関しては、そうしても変わらないだろうという謎の信頼がカノンにはあった。
(まぁ、地道に頑張るか)
少しずつ言っていれば、数百年後には変わるだろうとカノンは長期の計画を立てる事にした。
「お気持ちは分かります。地道に頑張りましょう」
またしてもカノンの考えに気付いたミーシャが、カノンの気持ちに同調した。
「はい。頑張ります」
似たような主に仕えるからこそ分かり合えるものがあった。そんな中で、意見書を書き終えたリーシアは便せんに入れてカノンに預ける。
「では、これをセレーネにお願いします」
「はい。確かに預かりました」
意見書を預かったカノンは、リーシアとミーシャに一礼してからセレーネの元に戻っていった。カノンを見送ったリーシア達は、すぐに作業に戻る。例え年齢が何百何千と生きていても身体は全盛期のままが故に身体の衰えはない。
そのため長時間の作業も全く問題ないのだった。




