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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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緩い会合

 収入が増えたところで、今度は魔動列車の話に移る。この話は、セレーネ、ヒナタ、ヒルデブランドの三人に関係するものだからだ。


「そういえば、もう話はいっていると思うのだけど、レッドブラッドに作る駅が特殊な形になるわ」

「えっと、ルージュ領、グリーン領、スノーホワイト領の三つの領からそれぞれ魔動列車を繋ぐというものですよね?」

「そうよ。学術都市を建設するということもあって、交通の便を良くするという計画が立てられたの。魔動列車開発部からね」

「はい。私の友人の提案だと聞きました」


 レッドブラッド前に建てられる駅は、ジェニファーの意見により大幅に変わる。元々国の事業であり、セレーネ達は土地を提供するだけなので、建築の予定が変わる事自体は特に問題ない。

 問題となるのは、完成までの日程が延びる事だが、これが更なる発展に繋がる可能性がある以上、文句はなかった。


「レールが通る場所に関しても、こちらは了承済みです。ただ複線という事もあって、土地をかなり利用する事になりました。その分国からお金が貰えますが」


 セレーネはそう言いながら、ジェニファーから届いた駅の図面を出す。ヒナタとヒルデブランドにも関係がある場所になっているので、この辺りは共有しても問題はなかった。


「国家事業ですから。この駅は輸送用魔動列車も停車するのですよね?」

「はい。奥側が輸送用魔動列車用の駅になります。荷下ろしの場は乗り場とは壁を挟む形ですね」

「更に奥に整備場と……通常の駅の三倍以上の大きさになりそうですね」


 ジェニファーが設計した駅は、かなり大きい。その分資材が必要になるが、これは国が作るため、セレーネ達が気にする必要はなかった。


「この領は全体的に実験場みたいな感じになっているわね」


 学術都市や新しい駅、他にもセレーネの様々な開発など、ヒルデブランドからすれば領全体で様々な実験をしているように見えていた。


「一から作る場所ですから、色々と試しやすいんだと思います。そもそも私の実験場みたいな感じで色々とやるつもりですし」

「それを聞くと、本当に実験場みたいね。今は何を考えているのかしら?」

「そうですね。農業区が完成する前に肥料を作りたいですね。後は酪農もする事になりますから、家畜の病気を防ぐための魔術薬ですかね。肉質などに影響がなければ良いのですが」


 セレーネが今後の研究として考えているものを聞いて、ヒナタとヒルデブランドは、真剣な表情になっていた。セレーネが開発しようとしているものが、農家にとってどれだけ有り難いものなのかを理解している。

 さらに、家畜の病気が国全体の食料事情に大きく関わってくるという事も知っているため、それを予防出来る手段が増えるという事が国全体にもたらす恩恵も理解している。


「それはうちでも欲しいわね……」

「こちらも欲しいですね……そもそも魔術薬の研究者が少ないので、そういったものを表で研究している方は見ないですね。ヒルデに心当たりはありますか?」

「ないわね。安全性の確保が出来たら、こっちにも卸して欲しいわ」

「私もお願いします」

「えっと、ナタリアと相談しますね」


 この辺りの研究成果は、ナタリアの許可がなければ売り出す事が出来ない。セレーネの個人的な研究ならある程度自由は利くが、こうした肥料作りなどは総合研究室主導でやる方が予算の確保などがしやすいため、基本的には総合研究室で開発する事になる。

 さらに言えば、諸々の管理をナタリアがやってくれるので、セレーネが楽を出来るというのもあった。ナタリア的には、セレーネの研究の管理が出来るので、どちらかといえば、こちらの方が有り難いと考えている。

 セレーネの研究は下手すれば、他者の職を奪いかねないものになる。それらを把握し、世に出すか、カルンスタイン領のみで活用するか、封印するかを考える必要がナタリアにはあった。


「こんな開発をしてくれるとなると、あの子の心労も凄まじいわよね」

「それだけセレーネさんの研究者としての素質が高いという事ですね」


 この間、マリアナはセレーネから何も聞いていなかったため、慌ててメモを取っていた。セレーネが開発するものを流通させるとなれば、その販売ルートなどの構築をしなければいけない。

 販売するものが基本的に同じとなれば、そこまで気にしないでも問題ないが、セレーネが開発するものは統一性がないため、同じ流通ルートが使えない可能性も十分にあった。


「マリアナもマリアナで大変そうね」

「セレーネ様のアイデアを全て記録出来れば良いのですが、セレーネ様は翌日には別のアイデアを出すような御方ですので。やり甲斐がありますね」

「マリアナに言うのは、研究を始められそうになってからだもんね。ナタリアには研究して良いか訊くから、割と早い段階だけど。工業系だと先に相談するけど。ヒナタ様とヒルデ様のところでは、どういう風に管理されているんですか?」


 セレーネは余所の領がどういう風に研究を進めているのか気になり、二人に訊く。


「下に任せているわね」

「私も同じです。定期報告は受けますが、基本的には管理する部門に任せています。セレーネさんのように奇想天外な研究をするような研究員はいませんので、基本的に新しいものの開発よりも既存研究で得た生成物の量産が主ですね」

「…………どうやって収入を得ているのですか?」

「普通に税よ」

「後は公共事業ですね。使用料の何割かを頂いています。他領への設備貸与や研究の成果物などで領の運営資金にしているのはセレーネさんくらいでしょう」

「まぁ、住人がまだいないという点で、私達とは大きく異なるから仕方ないわよ。私達は、既に開発がされている領地を受け継いでいるから、資金を絶やさずに、上手く回していけばどうにかなるのよね。しばらくはそういうものよ」

「私達も出来る限りサポートしますし、国からも様々なサポートがありますので軌道に乗るまでは頑張りましょう」

「はい」

「では、時間も余った事ですし、馬型ゴーレムを見させて頂いても!?」

「あ、はい。紹介しますね」


 会合で話さなければならない内容も終えたところで、ヒナタが気になっていた馬型ゴーレムの説明に移る事になった。説明を受けたヒナタとヒルデブランドは、益々馬型ゴーレムが欲しくなったため、安全性の検証が終わり貸与出来る状態になるのが待ち遠しくなっていた。

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