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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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会合再び

 翌週。カルンスタイン領レッドブラッドにヒナタとヒルデブランドが会合のために来訪した。

 街の門の前でセレーネ、マリアナ、カノンが出迎えると、ヒナタとヒルデブランドは壁を見て眺めていた。


「大分出来てきたって話は聞いていたけれど、かなり高い壁になっているのね。あそこの穴は何かしら?」


 ヒルデブランドは壁の上部に空いている穴を指差して尋ねる。


「あれは攻撃のための穴です。壁の上部には空間を作っていて、壁の内側から攻撃を出来るようにしたみたいです。勿論その上からでも攻撃出来ます。攻撃の密度を上げられるようにするためのものです」


 壁の上とその一段下の内部から進軍してくる敵を攻撃する。上に兵が詰められるよりも二段にしておいた方が安全に攻撃の密度を上げられるとベネットが申請し、マリアナが許可したのだ。本来の壁の高さにプラスする形で建設されたため、想定よりも壁が高くなっているが、安全性を考えれば丁度良いという事になった。


「後は壁の一部に迎撃用の魔術道具を設置しています。若干危険な魔術も含んでいますが、恐らくは戦争にでもならないと使わないでしょう」

「辺境の防衛となれば、そのくらいが丁度良いと思います。ここを突破されれば、国が侵される事になりますから」


 この考えにはヒナタも納得していた。自分も辺境の一部を任される事になっているため、防衛手段の増強などの指示を出していた。そのためセレーネ達が過剰気味な防衛手段を用いているという事も受け入れやすかったのだ。


「ありがとうございます。では、中へどうぞ」


 セレーネは内部の自分の屋敷まで案内するために二人をレッドブラッドの中に促す。セレーネの後に続いてレッドブラッドに入った二人は周囲から響き渡ってくる工事音に少し驚いていた。

 驚いた理由は、工事音が大きいから等ではなく、工事音が複数箇所から響いてきているからだ。


「職人の手配などを頼まれましたが、ここまで開発速度が早いと人手不足になるのも頷けますね

「逆です。手配して下さったから、ここまでの開発速度になったんですよ。今でも人手不足である事には変わりありません。なので、物資の輸送などにゴーレムを活用する事になりました。まだ試作品ですから、街の中でしか活用出来ませんが」


 セレーネはそう言って、少し離れた場所を走っている馬型ゴーレムと馬車を見る。それを目撃したヒナタとヒルデブランドは、目を剥いていた。


「あれもゴーレムなのですか!?」

「はい。この街レッドブラッドと学術都市との物資のやり取りで活用するために開発しました。さすがに、こっちのゴーレムを貸し出すには、まだまだ検証などが足りないので、すぐに貸し出しは出来ません」

「なるほど……それは残念です……」


 新しい魔術道具という事もあり、ヒナタは本当にがっかりしていた。安全性の確認という名目での試験運用中なので、これを貸し出しに加える事は現状出来ない。

 これはナタリアからもちゃんと伝えるように言われていた。ゴーレムの研究はセレーネ個人の研究でもあるが、主に総合研究室での研究になっているので、ナタリアからの許可も必要になるのだ。そのナタリアから不許可となっているため、セレーネも許可出来ない。


「ですが、見る事自体は禁止されていません。なので、お時間が余ったら紹介します」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


 ヒナタは、目を輝かせながらお礼を言っていた。機密にはなっていないため、どういうゴーレムなのかの紹介だけはしても良いとなっていた。

 ヒナタとしては、自分の手元にいてくれる方が嬉しいが、その仕組みなどを知る事が出来るというのなら我慢は出来る。


「いずれ、貸し出しをするようになったらご連絡ください。いの一番に申請します」

「私もお願いするわ。生き物である馬だと馬糞とかの問題があるから。生き物である以上仕方のない事だけれど、衛生面的にね。ちゃんと片してくれる業者ばかりじゃないのよ。そのために清掃員を街で雇うところまでいったわ」

「ベネットも馬糞の片付けが大変って言っていました。それを肥料に利用するという話になっているので、堆肥舎を作って肥料作りまでして貰っていますから、清掃員とは別の大変さもありますが」


 これから農業区を作るので、そのための肥料作りも進められていた。最初は埋めるだけだった馬糞も肥料とするために農業区に作られた堆肥舎に運び込まれる。それをするのは馬を扱う騎士団の仕事になっていた。

 馬の世話などもあり、良い訓練にもなるという事で騎士団全員から申し出た形だ。これもレッドブラッドが人手不足である事を騎士団も認識しているからこそのものだった。


「ひとまず現在やっている安全性の確認が終わり、色々な調整と必要な制限の確認などが済み、ナタリアから許可が出たらご連絡しますね」

「はい」

「ええ」


 安全性の期間は長い。長期利用であるために、短期の試験では確実な安全性の確認には至らないというのは、セレーネとナタリアの考えだった。


「ところで、あの馬型ゴーレムは戦闘に利用はするのかしら? 騎兵の装備とか」


 ヒルデブランドの考えは騎兵が扱う馬を馬型ゴーレムにする事で、生き物特有の疲れを無視した動きが出来る可能性が高いために、騎兵の装備として利用するのが良いのではないかという事だった。

 これに対して、セレーネは首を横に振る。


「現状は考えていません。私としては、兵器転用は最悪の場合のみと考えています。あのゴーレムはあくまでも輸送想定で作ったものです。兵器として活用するくらいであれば、最初から兵器想定での開発をします」

「それもそうね」


 馬型ゴーレムはあくまでも輸送手段として考えたもの。兵器として利用するかと問われれば、セレーネは否と答える。

 兵器には兵器としての開発が望ましい。同じ形にしても、内部や機能は大幅に変わってくるからだ。

 セレーネの答えがそういうことだとヒルデブランドも気づいた。

 そんな紹介などもしながら、セレーネ達はセレーネの屋敷へと移動した。

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