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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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少しずつ形に

 翌週。セレーネは自宅ではなく、レッドブラッド敷地外にいた。傍にはカノン、リーシア、ミーシャ、マリアナ、ナタリアがいた。今日はレッドブラッドから港街へと向かう地下道の予定地決めをするために来ている。


「ここから海に向かって地下道を作って物資の輸送を助ける感じ。どう思う?」


 セレーネはリーシアにも意見を求めた。長く国を見ているリーシアならではの視点もあると考えたからだ。


「雨水はどうするのですか?」

「排水溝を作って、海とか川に放出する形にするよ。水を選択して吸い込む機構をナタリアが開発してくれたから」

「なるほど。物資の輸送には馬のゴーレムを?」

「ううん。魔動列車にしようと思ったけど、ゴーレムの方が良いと思う?」

「そうですね……往復を考えると魔動列車の方が良いです。先頭と最後尾が簡単に入れ替えられますから。人は乗らないのですか?」

「うん。区切って通行用の道も作る予定だけど、あくまで物資の輸送が目的だから。緊急時の避難に利用するだけ。地下道自体はそこまで大きなものにしないから小型の魔動列車になるかな。収容人数はかなり限られるから、子供とかお年寄りとか移動に難がある人向けの避難用になると思う」

「そうなると、表に魔動列車を置く方が良い気がしますが?」

「国営になりそうじゃない?」

「なるほど。区別を付けるための手段ですね。あくまで自分達の領の特色という点で、自分達の技術だけで作り上げると。利益の一部を国に持っていかれない可能性は高くなりますから良いかと思います。では、私とミーシャで、ここの地下道を作るとしましょう。図面は先程のもので良いのですね?」

「うん。マリアナとナタリアと一緒に何度も考えたものだから。お願いね」


 人手不足という事から、リーシアとミーシャがボランティアで手伝いをしていた。基本的には錬金術や魔術薬の手伝いをしていたが、地下道の話を小耳に挟み、これくらいなら手伝っても良いだろうと判断して申し出たのだ。

 人手不足というのが事実であるため、マリアナは即座に申し出を受け入れ手伝って貰う事にした。この辺りの融通は利く方であるため、受け入れも早かったのだ。

 その場をリーシアとミーシャに任せたセレーネは、カノン、マリアナ、ナタリアを連れてレッドブラッドに戻った。そこでそれぞれの進捗を直に見る事になっている。


「宿屋も大分形になってるね。何か職人増えた?」

「はい。壁の建設の他に建物の建築が必要になりますので、グリーン公爵領及びスノーホワイト公爵領から派遣して頂きました。総合研究室とミカエラ、ゼノビアの工房で扱っているゴーレムの挙動に一切の問題がない事から、グリーン公爵領とスノーホワイト公爵領、ルージュ公爵領でのゴーレム貸与もかなり形になってきました。詰めるところを詰めれば、新たな収入源になります。セレーネ様にはある程度の制限を掛けたゴーレムを製造して貰う事になるかと。この辺りは、次の会合での話題にもなると思います」

「了解」


 派遣のお返しにゴーレムの貸与を持ち出しているので、ここはしっかりと固めたいとマリアナは考えていた。

 新しい収入源が出来れば街の開発が更に進めやすくなる。セレーネもその方が助かるのでこの辺りはちゃんとしようと考えていた。


「役所での書類処理とかは大丈夫そう?」

「機能を限定した思考機の導入により書類の整理と記録がやりやすくなりましたので問題はないかと。思考機への読み込み忘れが怖いですが、役所内には監視のための撮影機もありますから、問題はないと思います。管理が出来るのもセレーネ様、私、フィアンナですから、勝手に操作される事もないと思います」

「こっちにも全体的に同期した思考機があるから、色々と確認出来るしね。役所は大丈夫そうかな。総合研究室の倉庫とかも大丈夫だよね?」

「はい。セレーネ様が派遣して頂いたゴーレムのおかげで、しっかりと整理整頓が出来ています」

「なら良かった。住宅は?」


 住人を呼ぶために一番重要な住宅。住人が自分で建てたいという要望もあったが、土地の広さなどをこちらで決めるため、先に建てる事になっていた。複数種類の間取りを用意しているため、どの家に住みたいかを移住希望者が決める形になっている。

 セレーネとの話し合いで、これが一番良い形になるだろうという事で決まった。その状況を確認している。


「現在一定の広さで建築中です。あまり優劣を付けないようにしています。ただし現在建設中のリーシア様の屋敷は大きくしてあります。これはセレーネ様のご家族であるためですね。ご自身で研究をされるという話でしたので、研究のための部屋も用意しております」


 リーシアはセレーネの先祖という事もあり、血縁はある程度優遇が必要とマリアナは判断していた。加えて、リーシアとミーシャが研究者という事を考慮して、セレーネと同じように実験室を設ける事にしていた。大きな屋敷という事もあり、完成まで後一週間は掛かる。


「そっか。後はお店をやりたいって人のための土地は?」

「確保してあります。大通りに一定範囲ごとに貸しに出す予定です。大きな店を出したい人はそれだけお金を払う必要があるという事です」

「でも、土地は貸し出しなんだね」

「はい。土地を買わせる事でその土地を殺されては困りますから。ここは譲らない事にしました」

「土地だけ買って何もしないとか?」

「はい。後はその土地を自分達で貸しに出すなどですね。それも商売の一つですが、時々あくどい事をする者がいますので」

「ふ~ん……まぁ、治安が良くなるなら良いかな」


 定期的に土地代を地主であるセレーネ。つまり領に納める必要がある。上手く店を経営できれば良いが、出来なければ土地を手放す事になる。借り手がいないという可能性もあるが、移住希望者の中に裏社会の人間らしき者もいたという事もあり、土地の無駄遣いをさせず、悪用もさせないという事を考え、この形になっていた。


「現在この条件でも希望する者がいますので、ひとまず様子見をするつもりです。最初は税もそこまで重くはないですので、すぐに潰れるという事はないと思います」

「そっか。まぁ、少しずつ良くしていけば良いと思うよ。下手に何でも受け入れる方が怖いからね」


 レッドブラッドの開発は順調に進んでいる。セレーネはなるべく住人達が快適に暮らせるようにして欲しいと思っており、犯罪者を憎んでいるので、犯罪者が現れないに越した事はないと考えていた。

 マリアナの考えは、それに沿っているためにセレーネとしてもこれで良いと判断していた。

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