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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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定期報告と連絡

 それから二週間が経過した。自動縫製魔術道具の試作品も完成し、試運転も問題なく終える事が出来ていた。後は、これを量産し工場に並べるだけとなる。

 またミカエラの工房の炉の改良も終えていた。火力の調整と一定温度での維持。これを出来るようにしたため、ミカエラの作業効率は大きく向上した。また、ミカエラとゼノビアの工房で働くゴーレム達がいるため、物の運搬などに問題はない。

 その中で聖域の管理も忘れずに行っていた。

 そうして次の研究に移ろうかと考えているセレーネの元にマリアナがやって来る。


「セレーネ様。現在の開発状況の報告書です。それとそろそろ街の名称を考えなくてはなりません」

「ありがとう。街の名前? う~ん……マリアナが決めて良いよ。思い付かないから」

「そうですね……では、レッドブラッドなどは如何でしょうか? クリムソン領のレッドグラスからレッドを、セレーネ様の吸血鬼からブラッドを取りました」

「うん。良いと思う」

「では、そのように」


 あっさりと決まったが、セレーネにも全く不満はなかった。自分にネーミングセンスがない事を理解しているため、この辺りはマリアナに全任せするのが良いと考えていたからだ。

 名前が決まったところで、セレーネは報告書に目を通していく。


「農業区と工業区の壁の建設は順調そうだね。工業区はちょっと広がる事になったけど、問題はない?」

「はい。まだ測量段階でしたので。セレーネ様から【空間探知】による測量結果を頂いておりましたので、ある程度は確認作業のようになっています」

「役に立ってるなら良かった。こっちも機械の量産が出来るようにスライム達を調整してるよ。道の舗装も大分進んできたね」


 セレーネが言っているのは、街中の舗装だけでなく街の外の道の舗装も含めたものだ。その舗装された道の先には魔動列車用の駅の建設予定地がある。複線化をしているためにかなり大きい。

 さらに、別の方向から来る輸送魔動列車用の駅は少し離れた場所に整備場と一緒に建設される事になっている。


「駅の方は良いとして、魔動列車のレールはどんな感じなの?」

「さすがに最優先とはいかないので、後半年から一年程掛かるかと思われます。輸送魔動列車の方は更に掛かるでしょう」

「まぁ、複線化で忙しいし仕方ないか。住人の方はどう?」

「想定よりも多くの希望者がおります。中には、広く土地を買って家を建てたいという者もおりましたが、素性が怪しい者でしたので拒否し、国の方に調査を依頼しました」

「まぁ、新しい街だし、色々と企んでる人もいそうだよね。あくどい人とかは弾いて良いよ」

「はい。現状、引っ越しの理由として多いものはセレーネ様の治める街で貢献したいというものです。王都での活躍を直に見ていた者やレッドグラスでセレーネを知っている者などに多いですね」

「ああ……」


 王都でのセレーネの活躍は、多くの目撃者がいる。それは王都の住人だけではなく、王城勤務の者などもそうだ。更にレッドグラスにてカノンと一緒に外出した際などに目撃した者などが、セレーネの治める街なら暮らしてみたいと思い移住希望者が殺到していた。

 他の街からも同じような移住希望者はいるが、その者達の職業などをマリアナとフィアンナで調べていき、素性が怪しい者は弾くという方式になっている。


「ギルドの方も建設は終わったみたいだね。冒険者が来るようになるから宿屋も作らないと。ここら辺はどうなってるの?」

「王都で宿屋を経営している家の子供が申し出てきたので受けました。因みに私達の同級生です」

「本当にマリアナ達の世代は優秀な人が多かったんだね。取り敢えず、それなら大丈夫そうかな。宿屋の基準とか諸々はもう条例で作った?」

「はい。王都と同じ基準にしております。これに違反すれば取り潰しですね。不定期に抜き打ちで検査する予定です。役所の職員もフィアンナが教育しているところです。王城から経験者も引き抜きましたので、こちらに慣れればフィアンナからその者に教育係が移ります。陛下の推薦者でもありますし、こちらでもある程度は調べましたので心配はないかと」


 こちらが新興の街という事もあり、早くから街に入り裏で悪さを働こうという者は割と多い。そのためガンドルフの推薦であっても、マリアナは安心せずに相手の事を調べていた。


「了解。街としての機能は大分出来てきたかな。まだ輸送頼りだから、農業区の完成を早くしたいね」

「はい。既に農家の方々とも話は進んでいます。壁が完成したと同時に農地の開拓をさせて欲しいとの事です」

「う~ん……そっちの人達は大丈夫? 危ない植物を育てられる可能性とか」

「それはないかと。基本的には、こちらの監視の下になりますから」

「じゃあ、大丈夫かな。ある程度はマリアナが判断して」

「はい。それと工業区での雇用についてですが、最初の機器の説明などをセレーネ様かナタリアに行って頂く必要があるかと」

「う~ん……基本はナタリアかな。私が出ると萎縮させちゃうかも」


 自分が辺境伯である事を考えて、セレーネはナタリアに頼む方が良いと判断した。


(セレーネ様の見た目からして萎縮はしない気がするけど……まぁ、ミカエラでも肩書きで緊張するくらいだし、ナタリアに任せるのが一番か)


 マリアナからすれば可愛らしいセレーネだが、平民からすれば肩書きで萎縮してしまう可能性は十分にあった。ミカエラという実例があったのもマリアナがそう判断する理由になる。


「分かりました。ナタリアにも説明しておきましょう。後、もう一つ。病院の方なのですが、一応領運営のものを用意し始めています。スピカ一人で管理するのは無理がありますので」

「ああ、そっか。私はそもそも病気に罹らないけど、皆は違うもんね」

「はい。病院の方も引き抜きに成功しましたので、問題はありません」

「また同級生?」

「はい。スピカは魔術での回復が得意ですが、そちらは通常の医療に特化しています。一応、魔術も使いますが」

「ふ~ん、病院の医者って引き抜いて良いの?」

「そこは交渉次第です。移住希望者の中にも医者はいますし、病院勤務の医者もある程度揃うでしょう」

「そっか。そこら辺もマリアナに任せるよ。病院ってシフォンが入院した時とかしかいた事ないからよく分からないしね」

「はい。他に気になる点などはありますか?」

「う~ん……特にないかな。報告書の内容で十分だと思う。私がやる事は機械を作るのとかでしょ?」

「はい。あっ、それと一つ。スノーホワイト卿及びグリーン卿から会合のお誘いが」

「またこっち?」

「はい。日程はこちらに任せるとの事ですが、如何されますか?」

「丁度良さそうな日で良いよ。決まったら教えて」

「かしこまりました。では、失礼します」

「うん。よろしく」


 報告と連絡事項を終えたためマリアナは仕事に戻っていった。セレーネも自分の研究に戻る。

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