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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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鋳造魔術機械の試運転

 一週間掛けて部品を作り終えたセレーネは、鋳造魔術機械の組み立てを行っていた。今回の組み立ては、リーシアの【空間倉庫】の内部で行っている。荷物は基本的にミーシャが持つためにリーシアの【空間倉庫】にはあまり物がないという事で、そこで組み立てる事になったのだ。

 カノンも補佐に入り、少しずつ形になっていた。


「最近大きなものばかり組み立ててる気がする……」

「街のためになるものですから、大きくなるのは仕方のない事かと」

「むぅ……引っ張って」

「はい」


 機械の下に入り込んでネジ留めをしていたセレーネの足を掴んで、カノンが引っ張り出す。


「ひとまずこれで完成かな。リーシアちゃん、試験もして良い?」

「はい。それをしない事には終われませんから」


 リーシアから許可を貰ったセレーネは、鋳造魔術機械を起動する。適当に鉄を入れて小さな球体を鋳造する。


「ちょっと熱いかな……」


 機械から出て来る熱をセレーネは感じていた。熱の放出と循環である程度熱を抑えるようにしているが、そもそも溶かすための熱がかなり高いためにある程度は出てしまうのだ。


「こちらでは感じませんね」


 少し離れた場所にいるリーシアは、放たれている熱を感じていなかった。


「熱の遮断結界が上手く働いてるね。必要以上に広がらないようにして貰ったんだ。フェリシアが調整してくれたの。あまり遮断しすぎると熱の動きを阻害するかもしれないから、この形にしたんだ。でも、想像よりも熱いかも……常に傍にいる必要はないけど、どこまで熱が上がるかは確認した方が良さそうだね」

「では、お嬢様はお下がりください」

「体感で分かっておいた方が良いから、ここにいるよ」


 カノンとしてはセレーネに熱による被害が出ないか心配なので下がって欲しいのだが、セレーネの言うとおり自分で熱がどのくらいまで上がるのかを確かめなければ今後の改良に活かせない。

 この辺りはセレーネの事を尊重するしかなかった。そのため、カノンはセレーネに定期的に水を飲ませていく。


「う~ん……まぁ、短時間の作業なら良いかな。そこまで熱くもないし」

「一応耐えられない温度ではありませんから、このくらいは良いかと」

「結界があるため、他の機械へ影響しないのが良いですね。同じ工場に複数置けます。大きさも大分小型になっていますが、問題なく冷ます事は出来ていますか?」

「あっ、そっちの確認してなかった」


 鋳造の金型は既に冷めており、排出口から鋳造した物が出て来ていた。鋳造で作った球体もしっかりと形が出来ており、鋳造が成功している事が分かる。


「後はこれで鎧の部品が出来るかどうかってところかな。ミカエラから金型貰ってくる!」

「お嬢様はこちらでお休みください。私が行ってきます」

「えぇ……じゃあお願いね」

「はい」


 作業し続けていたセレーネを休憩させるために、カノンがミカエラから金型を受け取りに向かう。残ったセレーネはリーシアに甘えながら待つ。

 十分程でカノンが金型を持って帰ってくる。既に騎士団に必要数を収めているので、しばらくは必要ないため、すんなりと貸してくれたのだ。

 それを使って鎧の鋳造を始める。ミカエラの金型の大きさを規格にしていたので、しっかりと設置する事が出来る。

 鋳造魔術機械を起動して、鎧の鋳造を始める。


「組み立ては人力ですか?」

「うん。革を使ったりするしね。あくまで鋳造の機械で、鎧製造の機械じゃないからね。組み立て用のゴーレムでも作ったら良いのかな?」

「いえ、そこは人力で良いと思います。そこも雇用の場にしましょう」

「でも、ずっと鎧を作るわけじゃないよ?」

「学術都市に卸す分、騎士団に卸す分、冒険者に卸す分、他の領に卸す分と考えれば、常に需要はありますよ。他にも街を作るとしたら、そこの防衛を担う衛兵なども使いますよ」

「あっ、港町を作る予定」


 セレーネの言葉を受けて、リーシアはカルンスタイン領の領地がどのようになっているかを思い出す。


「確かに、あちらの方に海がありましたね。それであれば、騎士団の規模は大きくなりますから、訓練で使う分も合わせてかなりの量があると良いでしょう。騎士養成にも多く使いますしね」

「ふ~ん……じゃあ、一つは常に鎧作りかな?」

「そうですね。後は、他にも組み立てが必要なものがあれば良いでしょう」


 鎧の供給が過多になる場合なども考えて、他にも鋳造魔術機械で作るものを決めておいた方が良かった。セレーネもその事に気付いたので、少し真剣に考える。


「う~ん……大きさ別で鎧を複数種類とか……後なんだろう?」

「調理器具などが良いかもしれないですね。鍋やフライパンは鋳造で作っているところもあったはずです」

「なるほど。取っ手を付けたりする作業とかも人力って事だね。本当はゴーレムに色々とやって貰うつもりだったけど、雇用を生み出す方が良いって事?」

「住人にも仕事を与えなければいけませんから」

「なるほど……マリアナにも相談しておくね」


 リーシアに言われたからとセレーネが勝手に決める訳にはいかない。実際にはその権力を持っているが、セレーネ自身がそれを許さない。街の事を決める上で、自分の判断が絶対的に正しいとは思えないからだ。

 そのために補佐官であるマリアナに相談をする。


「それが良いでしょう。もう一つは縫製のものでしたね」

「うん。そっちは縫うところまでこっちでやるつもりだよ」

「それであれば、人力でやるのは検品ですね」

「ちゃんと作れてるかの確認?」

「はい。その辺りは人の手でやるのが一番でしょう」

「分かった! それも含めてマリアナと話してくる!」


 そう言ってセレーネは飛び出して行った。カノンは、そのセレーネを即座に追いかける。リーシアはそんな二人を微笑みながら見送る。


「さて、鎧は私の方で確認するとしましょう」


 自由奔放なところが残るセレーネは、リーシアにとって可愛い子孫であるために若干甘やかしてしまうのだった。

 ただし、セレーネはこの後、鎧を放置した事に対して、カノンから説教を受ける事になる。

 試運転の結果は大成功だったため、説教を受けながらもセレーネは内心喜んでいた。

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