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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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鋳造魔術機械の部品作り

 翌週。ミーシャの手伝いもあり、耐火金属を全て用意する事が出来たセレーネは、本格的に鋳造魔術機械の製造に取り掛かった。

 ただこの製造の最初は細かい部品作りなのでやっている事はかなり地味である。調合した耐火金属を手に持ち成形していく。

 生産スライムは、他の調合をやって成形には参加しない。まだこの成形を任せられる程の経験を積んでいないからだった。

 この辺りの成形作業であれば、リーシアも手伝えるため、部品作りは三人がかりで行っていく。


「この機械部品も鋳造でやったら楽なのかな?」

「耐火金属を溶かす程の熱に耐えられる金属があればですね」

「あっ……」


 耐火金属を溶かす程の熱を用意して、その熱に耐えられる金属があれば同じような鋳造法でも出来なくはないが、現状は難しいという事が分かる。


「どちらかと言えば、現在やっているような生産魔術を扱えるスライムを増産するべきでしょう。セレーネの作り方であれば、この作業に特化させたものも作れるのでは?」

「う~ん……調合とかなら問題ないけど、こういう成形とかはしっかりと作れないといけないからなぁ。今の生産スライムもある程度作れるんだけど、長さが均一じゃないんだよね」


 この辺りは既に試験済みだった。ある程度の形までは綺麗に作れるのだが、欲しい長さに少し足りない、少し長いという若干使いにくい状態になっていた。そのために経験を蓄積中だ。


「後は決まった形にしか出来ないから、その辺りの融通が利かないんだよね。後々自分で調整出来る方が良いかな」

「スライムの意思で変えられると困るという事ですね。そうなると、ゴーレムの方が適しているという事でしょうか」

「魔術を使うゴーレムは危険じゃない?」


 セレーネの懸念に対して、リーシアは首を横に振る。


「何でもかんでも危険だからと規制し続ければ、そのうち何も出来なくなってしまいます。私達が魔術を使う時点でも危険なのですから。実際に魔術を扱うゴーレムというのは可能なのですか?」

「まぁ、常に魔術を使ってるものだからね。一応出来なくはないと思う。スライムと違って【記録媒体】を弄れるわけだし、覚え込ませるのも簡単かな。スライムよりも汎用性はないかもだけど。生産スライムは、一応魔術薬も作れるから」

「実際に身体を動かさなければならないという点からも、スライムの方が扱いやすいかもしれませんね。」


 生産スライムの一番の利点は、利用出来る幅である。鍛冶、錬金術、魔術薬。どの分野でも使えるが、現在のような細かい作業はまだ出来ない。


「魔術薬は何が作れるのですか?」

「治癒薬は作れるよ。後は錆止めとか」

「治癒薬の量産が出来るのは良いですね。学術都市である程度の無茶が出来ます」

「そんなヤバい授業にするつもりはないんだけど……」

「騎士の養成には、それなりに怪我が付きものです。騎士団の訓練でも怪我はしているでしょう?」

「確かに」

「治癒師志望の生徒と一緒に利用すれば、より安全に進める事が出来ると思います」

「まぁ、ちゃんと治せるか分からないしね。一応総合的に一匹で解決出来るようにしたんだけど、分けた方が良かったかな?」


 鍛冶、錬金術、魔術薬を扱うスライムにしているが、特化させた方が良かったのかもしれないとセレーネは考え始めていた。


「特化させた方が品質が良くなるという可能性はありますね。魔術薬の知識でしたら私が補足できますし、錬金術であればミーシャがいます。鍛冶の部分だけはどうにかしてもらう必要がありますね」

「なるほど……ちょっと作ってみようかな」


 セレーネは、部品作りの片手間で魔術薬特化のスライムを調合する。この辺りの錬金術は片手間でも失敗しないくらいに上達していた。そのくらいスライムを大量生産していたからというのが大きい。


「治癒薬を作って」


 セレーネは素材を渡して魔術薬スライムに治癒薬を作らせる。すると、素材を取り込んだ魔術薬スライムの身体の内側が高速で回転する。

 その傍に瓶を置くと、魔術薬スライムがそこに吐き出す。その魔術薬をリーシアが確認していく。


「良い治癒薬ですね。セレーネが作るものよりは品質が劣りますが、十分に効果を発揮するでしょう。生産スライムが作ったものはありますか?」

「うん。ちょっと待って」


 セレーネは【空間倉庫】を開いて、ゴーレム一号に持って来てもらう。それをリーシアに渡す。


「特化型の方が一割ほど品質が良いですね」

「何でだろう。思考が魔術薬にだけ注がれるから?」

「迷いが生じる分影響しているのかもしれませんね」

「生産スライムもクビ?」

「いえ、生産スライムには生産スライムで良い点があります。それぞれの技術を同時に扱う事が出来れば、また新しいものを作れるかもしれません。あるいは、その方が品質が良くなる可能性もあります」

「じゃあ、新素材スライムが作ったものを再現するには生産スライムが必要な可能性があるんだ」


 新素材スライムは、様々な法則を崩す存在である。そのため複数の技術を扱う可能性は十分にあった。そこに対応出来る存在は生産スライムしかいない。


「新素材スライムというのは、確か法則を崩したスライムでしたね。確かに再現するのに必要になる可能性はありますね」

「じゃあ、必要だね。ひとまず特化型を増産して、魔術薬を安定して供給出来るようにしておこうかな」

「そうですね。学術都市のために使いましょう。そうでなければ、薬剤師が職を失います」

「あっ、そっか。じゃあ、市販薬は普通に住人の薬剤師に作って貰う方が良いって事だね。雇用的な面で」

「はい。その通りです。良く出来ました」


 リーシアに撫でられるとセレーネは嬉しそうに笑う。


(この辺りはいつまでも変わりませんね)


 リーシアはセレーネを可愛がりながら作業を続けていった。

 リーシアとの会話はセレーネにも新しい気付きを与える。それはセレーネにとって必要なものでもあった。

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