ナタリアによる設計図の確認
一週間後。セレーネは設計図をナタリアの元に持って来ていた。ナタリアから意見を聞くためだ。ある程度完成してからでなくては、貰いたい意見が分からないので、一週間掛かる事になった。
ナタリアは、セレーネから受け取った設計図をしっかりと確認していく。
「なるほど。熱を工場内に出す仕組みではないのですね」
「うん。その方が良いと思って。フェリシアが考えてくれた」
「確かに、ここの機構はフェリシア様の熱移動の研究が適していますね。全体の消費魔力量が多くなりますが、この辺りはどうお考えですか?」
「色々と考えたけど、魔力結晶を大きくして、魔力を溜められる量を増やす感じでやろうかなって思ってる。錬金釜無しで錬金術を安定して使えるようになったから、結構大きな魔力結晶も出来ると思うんだ」
「なるほど。耐火金属で全て作るとなると……素材を集めるのが大変ですね」
「こっちで調合する?」
耐火金属は、錬金術による産物なのでセレーネでも調合する事は出来る。耐火金属自体を購入するよりも素材での購入の方が安上がりになる可能性を考えて提案していた。
「素材の値段によっては、その方が良いかもしれません。ユリーナと確認してから決める事にします。縫製魔術道具に関しては、ほとんどゴーレムですね」
「うん。足はないけどね」
鋳造魔術道具に関しては、ゴーレムの腕などを使ってレーンの移動等をするが、縫製魔術道具に関してはゴーレムの上半身が作られている。ゴーレムがミシンや機織り機を操作するという形だ。
繊細な作業を機械任せにするには、繊細さが足りないというようにセレーネは考えていた。そのため縫う作業や布を作る作業に関しては、ゼノビアの動きを学習させて、しっかりと縫製作業をさせるという方式だ。
「これが一番色々な服を作れるかなって。どう思う?」
「そうですね。製造コストが高いですが、セレーネ様のお考えの通り、これが一番様々な服を作る事が出来るでしょう。凝った衣装はゼノビアに任せる事になりますので、肌着などをこちらで作るという形になりますね」
「仕事奪わない?」
「はい。寧ろ、ゼノビアには凝った衣装を作って貰いたいので、その方が助かります。一つ確認したいのですが、学術都市にて制服は作りますか?」
「制服?」
全く考えていなかった事を訊かれたため、セレーネは一瞬固まる。そして少し考えてから答える。
「特に考えてないなぁ。でも、制服があった方が小等部、中等部、高等部って分かりやすいかな?」
「私はそう思いましたが、問題は生徒の人数です。どのくらいの人数になるかで制服の枚数が変わってきますので」
「なるほどね。そうなるとゼノビア一人じゃ絶対無理って事ね。私が作る縫製魔術道具が制服も作れるかって話になるって感じ?」
「はい。実際のところ、どこまで出来るかがセレーネ様に頼るかどうかの基準となります」
「理論上は出来なくはないと思うけど、本当に理論上だけだね。こればかりは実際に試験をしてみないと分からないかな」
現状設計図が出来ただけであり、そもそも試作品を製造し、試験を通して調べなければ出来るかどうかも分からない。そのためセレーネの返事もはっきりとした答えにはならなかった。
「では、その辺りは試作が出来てから決めましょう」
「うん。それじゃあ、このまま進めて良い?」
「素材の用意ができ次第始めましょう」
必要な素材の量などから、すぐに作業に取り掛かるという事は出来ない。素材をセレーネに作って貰うかもしれないという事もあるためだ。それをセレーネも思い出して頷く。
「うん!」
設計図が認められたため、セレーネは笑顔になりながら設計図を【空間倉庫】に放り込む。
「それじゃあ、しばらくの間はミカエラとゼノビアのところに配備するゴーレムの製造をしてるね」
「はい。お願いします。それとは別に確認したいのですが、ゴーレムの学習内容に関してです」
「ん?」
開発から話題が変わっていく。内容はゴーレムに関する事なので、ある程度繋がってはいる。
「学習内容って、それぞれの倉庫でやる事が違うから、それぞれの成長をしてるとかって話?」
「それもそうですが、基礎的な学習内容の話です。最初に覚え込ませているようですが、その後はセレーネ様のゴーレム一号の学習内容を利用しているとの事ですが、問題はありませんか?」
「うん。物を大切に扱うって点での共有をしておきたいだけだから、そこまで大きな影響はないしね。コアの改良で何度か【記録媒体】とかも弄る事があったから、全体に共有させられるようにメインになる【記録媒体】は転写で作る事にした感じかな」
セレーネはコアに収納するメインの【記録媒体】にゴーレム一号が学習した内容の中から一般的に必要な内容を集めてある。他にもセレーネと所有者となるマスターの情報を記録する。メインの【記録媒体】にはこれ以上の記録をしないように調整を掛けてある。根底が変わらないようにするためだ。
「これはセレーネ様が自分の手で転写しなくてはならない事で間違いありませんか?」
「うん。そうだね。手動で転写しないと出来ないよ。そもそも同期させてあるわけじゃないしね」
「一つ提案なのですが、一部の【記録媒体】を同期させる事によって、複数のゴーレムに連携を取らせるという事は出来ないのでしょうか?」
「それなら同期無しでも出来るよ。そこまで考える力がない訳じゃないから。まぁ、だからこその怖いところも残ってるけどね。ある程度の思考制限は掛けてあるから、人を害する事はないはずだけど。因みに、偵察ゴーレムと馬型輸送ゴーレムは、がっつり制限掛けてあるから、私の指示通りにしか動かないよ。まだ運用方法が完全に決まったわけじゃないからね」
「なるほど。意思疎通が出来るなら、態々同期も必要ないという事ですね。それなら同じ倉庫での作業も可能ですね。色々と素材を買い集める事になりますので、総合研究室の倉庫の整理をお願いしたいのです」
「ああ、そういえば総合研究室の倉庫は設置型空間倉庫にしたんだっけ。一体でも十分だと思うけど、三体くらい用意するね」
「はい。お願いします。そのための素材は用意してありますので」
「じゃあ、それを回収して戻るかな」
セレーネはカノンに素材を運んで貰って【空間倉庫】に収納し、屋敷の実験室へと戻った。そして、ミカエラ、ゼノビア、総合研究室用に五体のゴーレムの製造を始めた。




