ゼノビア工房見学
翌日。セレーネは、カノンとナタリアを連れてゼノビアの工房に来ていた。こちらには昨日のうちにセレーネが来る事を知らせてあった。知らせたのは、ナタリアだ。
「いらっしゃいませ。本日は私の作業を見たいとの事でしたが」
「うん。ナタリアが、せっかくだから裁縫の方も大量生産が出来るようにした方が良いだろうって事で、道具と作り方とかを見に来たよ」
「はい。ナタリアから聞いた通りですね。つまり、工場で作るような同一のものをもっと効率良く一気に作れるようにするとの事でしたね」
「うん。だから、ミシンの動きとかを見せて欲しいかな」
「はい。存分にご覧ください」
ゼノビアは、セレーネがジッと観察する中で普段通りの作業をしていく。その様子と機械の動きなどを確認していき、セレーネは細かくメモをしていた。
「裁断とかの動きは機械でどうにかなるよね?」
「はい。既に工場の機械で存在しますので、こちらの設計図は取り寄せましょう」
「私が作るべきは、デザインを投入したら、それ通りに縫製するようにするって感じだね。デザインの読み取りのために統一されたデザイン法が必要かな。ゼノビア、普通はどんな設計図なの?」
「そうですね。服の種類によって紙の大きさが変わってしまう事もありますが、このような形で型紙を用意します」
ゼノビアは、工房の奥にある棚からいくつかの型紙を取り出してテーブルに広げる。セレーネはその型紙をしっかりと見ていく。
「なるほどね。これに沿って切る感じかぁ……これって、切り取らないままに出来る?」
「はい。一から作れば出来ます。ただ問題があると思います」
「どんな?」
「裁断する範囲の設定です。線を全て裁断するものと判断されると服として成り立たなくなります。正確に外周の線を裁断するための線という風に判断して貰わなくてはいけません」
「うん。その辺りは大丈夫かな。細かい調整も十分に出来るしね。問題は縫製の方かな。確か工場でも、裁断は機械的に出来ても縫うのは人の手でやってるんだっけ?」
「はい。一応、ミシンを使っていますので、完全に手縫いという訳ではありませんが」
「縫うのはゴーレムを応用するか。それぞれの動きにゴーレムの一部を利用すれば、もっと使いやすくなるはず。そうだ。こっちにゴーレムはいる? 布も増えたら重いでしょ?」
セレーネはゼノビアが重そうに布を抱えていた事を思い出して、こっちにもゴーレムを配備するべきかという提案をしていた。
「ゴーレムは力仕事を任せる形なのですか?」
「今は倉庫整理が主な役割かな。偵察とか輸送とかを役割にしてるのもいるけどね」
「なるほど。それでしたらいてくれると助かります。工房内で布の持ち運びをしてくれると、私の作業も減るので」
「じゃあ、こっちにも配備するね。良いよね?」
「はい。ゴーレムの安全性検証のためという名目で配備しましょう」
「うん。じゃあ、諸々の設計図を描いたら提出するね」
「はい」
鍛冶工場と裁縫工場のための魔術道具の設計などを予定に加えたセレーネとナタリアは、設計図のやり取りをする事を決める。
「見学は終わりですか?」
「うん。ありがとうね」
「いえ。では、次の作業をさせて頂きますね」
「次の作業?」
「お嬢様の服を作るための採寸です。お嬢様の服を主に仕立てる事になるのがゼノビアになりますので」
「そうなんだ。前から成長してるかな?」
「真祖でなくとも、そろそろ成長が止まる頃ですので、少し成長していれば良い程度でしょうか」
「むぅ……」
セレーネの服を作るための採寸をした結果、特に成長しているところはなかった。逆にウエストが細くなっているくらいだった。
カノンは、セレーネのウエストを戻すために食事を工夫させる事にした。
翌日。セレーネは、大きなテーブルがある実験室を使って設計図を描いていく。そこにナタリアから工場で利用する機械の設計図が届く。それを参考にしつつ、裁断だけではなく、縫製全体を行ってくれる魔術道具と鋳造などを自動で行ってくれる魔術道具の製作を考える。
「鋳造は、インゴット作りの機械を利用するのが良さそうかな。金属を溶かすのは魔術的な熱で出来るから、安全に注ぐ事が出来るようにするだけかな。金型は取り外しを前提にして、色々なものに対応出来るようにしよう。この辺りの制御は出来るかな。という訳で、熱のやり取りをするからフェリシアの意見が聞きたいの」
そう言って正面に座っているフェリシアに意見を求める。フェリシアは呼ばれた時点で何のために呼ばれているのか察していた。
「急激に熱を抜く方法ではないのよね?」
「うん。徐々に抜く感じ」
「それならこの熱を金属を溶かす熱に再利用する形が良いわね。徐々に熱を移動させる魔術は作れるわ。速度の調整も可能だと思うわね。ここで曲げて戻ってくる形が良いと思うわ。下手に熱を外部に放出するよりも、こっちに利用した方が工場内の温度が高くならずに済むもの」
「なるほどね。工場内の温度が普通だったら、皆も活動しやすいもんね。ここら辺にもゴーレムの腕とかを使って細かい作業を出来るようにしようかな」
ゴーレムの技術をこういった機械に転用して、より正確で安定した製造が出来るようにしようとセレーネは考えていたが、利用の仕方などはまだ思い付いていなかった。
「縫製の方には使うのよね?」
「うん。ゴーレムの腕を使ってミシンを扱う感じかな。ミシンの使い方をコアに登録する形かな」
ミシンを扱う上で布の向きなどを細かく調整するには、ゴーレムのような人と似たような動きをする事が出来る手足が適している。これにはフェリシアも納得した。
「そういう事ね。取り敢えず、この機械は全部耐火金属で作る必要がありそうね」
「そうだね。全体的に熱には強くしよう。結構大きくなりそうかな。さすがに設計機も難しそうだし、しっかりと検証しつつ設計図を完成させよう。結構長くなりそうだなぁ」
「これまでが短すぎるのよ。ナタリアともしっかりと検証し合ってセ一計するのが良いわね」
「うん。そうする」
工場機械を新造する大規模計画が始動する。基本はセレーネが中心となって行うが、一応は総合研究室の主導という事になっている。
そのため最終的には国に広める形になると予想される。




