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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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鍛冶場の見学

 翌週。セレーネの姿はミカエラの工房にあった。セレーネはニコニコとしており、その後ろでカノンとフェリシア、マリアは苦笑いしていた。ミカエラは予告なしで来たセレーネとフェリシアに驚いていた。


「おはよう。今日はお願いがあって来たんだ。ミカエラの鍛冶見せて。生産魔術の参考にしたいから」

「え、えっと……では、鎧を作るので見学されますか?」

「うん!」


 許諾を得たセレーネは嬉しそうに頷いた。


「では、セレーネ様。お着替えです」

「は~い」


 セレーネはマリアに呼ばれて、マリアの【空間倉庫】の中でフェリシアと一緒に耐火の服に着替える。

 その間にカノンは、ミカエラと話す。


「セレーネ様の研究の参考にしたいらしくて、今朝唐突にね。問題なかった?」

「う、うん。まさか、フェリシア様も来るとは思わなかったけど」

「お目付役みたいな感じ。取り敢えず、色々と質問攻めにされる可能性もあるけど」

「まぁ、今日は鋳造だから問題はないかな。準備してくる」

「ありがとう」


 ミカエラが準備をしている間、セレーネ達は長袖の耐火性の服と革の手袋とエプロンを着けている。


「あれ? ミカエラは半袖なの?」

「あ、はい。結構身体を動かしますので、動きやすい服装の方が良いんです。この上からセレーネ様やフェリシア様のような革手袋なども着けますから、基本的には問題ありません。魔術的な治療を受ければ火傷も跡は残りませんから」

「ふ~ん……生産魔術だと、そこまで動かないから関係ないかな。どんな作業をするの?」

「防具の鋳造です。セレーネ様が知っている鍛冶はどのようなものですか?」


 ミカエラから訊かれたセレーネは少し考えてから答える。


「う~ん……金槌でカンカンやるやつかな。絵で見たのはそんな感じ」

「なるほど。それは鍛造ですね。今からやる鋳造は、こうした型にドロドロに溶かした金属を流し込み固めるという方法ですね。本日は金型を使います」

「金型? 溶けない?」

「はい。こちらは耐火金属となっていますので、こちらの鋼鉄の温度では溶けません。そういった特殊な合金で作っているんです。金型は、再利用がしやすいという点で優秀です。鍛造よりも大量生産がしやすいですね。私としては、こうした鋳造による大量生産は工場で機械的に出来るようになると効率が良くなって良いと思うんですが、その反面品質的な問題がある気がしてしまいます」

「工場での大量生産……インゴットを作ったり鉄板にしたりの機械は作ったけど、こういう鋳造でやるものってなると金属を溶かして型に流し込む機構が必要になるかな。魔術で熱を加えて溶かせば、直接的な火は必要ないから、そこの機構を組み立てられればどうにかなるかな。鋳造のための型はミカエラに作って貰うとして、溶かした金属を丁寧に冷まして固めるための諸々も用意……急激な冷却は金属を弱くしそうだから、ゆっくりと熱を奪っていく感じ。フェリシアの冷たい結界を改良すればどうにか……」

「セレーネ」


 ミカエラの考えを聞いたセレーネが、それを実現するための方法を模索し始めて熱が入り始めたところで、フェリシアがセレーネの頬を摘まむ。それで我に返ったセレーネは、フェリシアをジッと見る。


「今日は見学に来たのでしょう? ほら、ミカエラも驚いているわよ」


 唐突に自分の世界に入り始めたセレーネを前にして、ミカエラはどうしたら良いのか分からずオロオロとしていた。


「あっ、ごめん。面白そうだし、私の研究にも使えそうだからナタリアに許可を貰って開発するね」

「あ……はい。ありがとうございます」


 ミカエラは戸惑いつつも、いつも通りの作業に移る。セレーネは鋳造の様子を見て、ミカエラになぜ筋肉が付いているのかやどれだけ鍛冶場が熱いのかなどを学んでいった。

 その中でミカエラが試しに鍛造の方の作業も見せると、ミカエラの声が大きくなる理由も納得する事になった。


「結構金属の音が響くね」

「金属同士のぶつかり合いですから。これが複数箇所で響くので、大人数がいる工房ではもっとうるさいですね」

「そっか。さすがに、ここの音を制御する方法はなさそうかな。そうだ! さっきの鋳造の話の他に何か欲しいものとかある!? 大量生産なら工場って話だったから、その方向性で進める予定だけど、ここで使うものでこういうのがあると便利とか」


 セレーネは新しい研究内容にするために、ミカエラから要望を訊いていた。それが自分がこれからしていく研究の役に立つだろうという考えがあるからだった。


「えっと、炉の熱が維持できるようになると有り難いです。自分でふいごを操作して維持するというのは結構大変ですので」

「炉の維持……炎を保てば良いんだけどね?」

「はい」

「熱……火……維持……うん。それくらいならすぐ出来るかな」

「え? そうなんですか?」

「うん。魔力結晶を付けて魔力を維持させつつ火力調整を出来るようにすれば良いから。ナタリアに開発許可を貰わないと。」


 炉の調整くらいであれば、セレーネも即座に頭の中で仕組みを組み立てる事が出来る。現在使っている通常の炉とは違い、魔術道具としての炉になるため、設置のし直しが必要になるが、これ自体の研究などはしておいた方が今後のためになると考えて、ナタリアに許可取りをしなくてはいけない。

 これらの研究は総合研究室主導でやった方が国に広げやすいというものがある。総合研究室は一応国の研究機関だからだ。


「そうだ。この鍛冶場にゴーレムを配置しても良い?」

「ゴーレムですか……? えっと……大丈夫なんですか?」

「安全面は保証する。現状問題はないからね。ここでの用途は、さっき運んでいた金型とか金属が入った箱とか重い物を運ぶ事かな。ミカエラも大変でしょ?」

「確かにそうですね。いてくれると嬉しいですが」

「じゃあ、決まりね。安全性検証にもなるからね。これで一般販売に一歩近づく」

「はぁ……なるほど?」


 まだゴーレムの実物も見ていないので、ミカエラはあまりピンと来ていなかった。だが、セレーネからのお願いを断れる程ミカエラの立場も高い訳では無いので、若干不安を覚えつつも頷くしかなかった。

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