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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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生産スライムの製造

 それから二週間で、セレーネは試作品の部品を完成させた。かなりの大型機械になるので、試作品でも実験室で組み立てる事が難しい。

 そのため外で組み立てる事になった。細かい部品の組み合わせなどがあり、構造を把握しているセレーネが一人で組み立てる事になる。部品を支えるという手伝いでカノンが共に組み立てた。

 こちらの経過は良く、ナタリアも納得する出来のものになった。その設計図をセレーネが用意し、ナタリアが製造するという事になった。【思考演算】付きコアをどのように配置し、それをどのように管理するかは開発者であるセレーネでなければ分からない事が多いが、ここまで正確な設計図が出来上がれば、ナタリアでも作る事は出来る。

 そうして、その一つの仕事が終わったところで、セレーネは、生産スライムの研究に移った。

 こちらは既に魔術陣が完成しているので、新しい錬金術を利用して生み出すだけだった。

 セレーネは自分の前に六重の魔術陣を出す。その魔術陣に対して、セレーネはスライムの材料と錬金術に制御用の【思考演算】や熱する用の魔術陣等を組み込んだ生産スライム用の魔術結晶を放り込む。

 放り込まれた材料は、魔術陣の中央に寄せられていき、白い光になっていく。


「こちらは正しい反応なのですか?」


 新しい錬金術という事もあって、カノンもその反応がどこまで正しく、どこから危険なのかが分からなかった。


「うん。多分、そうじゃないかな。錬金術自体は問題なく進行してるし、普通に平気だとは思うよ。問題はこれでスライムが出来るかどうかって事かな。法則やらなんやらをねじ曲げて狂わせてあるから、これでスライムが出来るって法則も崩れてる可能性が高いんだよね」

「では、スライム作りには不適切なのでは?」


 カノンの疑問は当然のものだった。法則が崩れていて、スライムが出来上がるか分からないのなら、通常の錬金術の方が良い。

 だが、セレーネは首を横に振る。


「ううん。ぱっと思い付いた事だけど、ここにスライムを作る法則だけ加えたら良いんじゃないかな」

「…………それは大丈夫なのでしょうか?」

「さぁ? だから、ちょっと準備しておいて」


 セレーネに言われて、カノンが即座に動けるようにセレーネの背後に移動する。仮に爆発が起こっても結界を張りつつ、セレーネを抱えて逃げる事が出来る状態だ。


「それじゃあ、いくよ」

「はい」


 セレーネは、スライムが出来上がる法則を魔術式にして投入する。すると、白い光が細かく膨張と収斂を繰り返す。

 カノンの手がセレーネの腰に伸びる。これから爆発するという兆候の可能性もあるためだ。

 何度も繰り返していき、一際眩しく光り輝く。同時にカノンはセレーネを抱きしめて、背後に跳んだ。

 だが、爆発が起こるという事はなく、その場に黒いスライムが生まれていた。


「おっ、成功かな」

「まだ成功とは限らないのでは?」

「まぁ、そうだけど、スライムが出来上がったって点では成功でしょ。次に生産スライムがちゃんと錬金術とかを使えるのか調べよう。魔純鉄を作ろうか」

「では、素材を準備しましょう」


 カノンが素材を持って来て、スライムに投入していく。


「これで良いのですか?」

「うん。スライムに投入するだけで良いはず」


 材料が入っていくと、生産スライムの中央で白い光が膨張と収斂を繰り返す。そして、一際眩しく光ると生産スライムが結晶を吐き出した。


「…………」

「…………」


 セレーネとカノンは、生産スライムから出て来た結晶をジッと見ながら固まっていた。


「あっ……法則が崩れてるから、問題ないんだった。駄目だなぁ。通常の錬金術の癖みたいなのが付いちゃってる。何が出来るか分からないスライムなんだから、このくらいで驚いてたら身が持たないよ」

「なるほど。私も失念していました」


 カノンは、念のため革手袋をはめて結晶を持ち上げる。


「こちらは一体何なのでしょうか?」

「さぁ? 何の結晶だろうね。ちょっと分析してみようか」

「はい」


 セレーネとカノンは、分析魔術を使って結晶の正体を確かめていく。


「……鉄の硬さを兼ね備えた結晶?」

「魔力を潤沢に内包しているが抜けています。一体何に使えるのでしょうか?」

「う~ん……言ってしまえば、魔力結晶みたいなものだよね?」

「確かに、割れない硬さを抜けば、ただの魔力結晶と考えられます」

「つまり、割れない魔力結晶?」

「なるほど。確かに、その見方は出来ると思います。ですが、これを利用しようにも、この子は同じ物を作るか分からないのでは?」

「ふっふっふっ! 私を舐めて貰っては困るよ! こういうときのために、生産スライムには、こういう機能も付けているのさ!」


 セレーネはそう言って、生産スライムを見る。そして、その前に紙を置いた。


「これまでの錬成記録を転写」


 セレーネがそう言うと、生産スライムが紙の上に来て広がる。生産スライムが紙から離れると、そこには一つの魔術陣が刻まれていた。


「じゃん! こうして、錬金した内容を魔術陣で出してくれるの! これを使えば同一の物質を錬成出来るよ!」

「なるほど……思ったのですが、これでは新素材の開発がメインになってしまうのではないでしょうか? 同一のものを作れなければ、お嬢様の作業の手伝いにはならないと思いますが」

「…………」

「…………」


 完全に図星を突かれたセレーネは何も言えなくなっていた。そんなセレーネをカノンはジッと見る。


「う、うん……そうだね……新しい錬金術を作ったのは良いけど、私の手伝いをして貰うなら、普通の錬金術が良さそうだね。そっちでスライム作ろう」


 セレーネは、通常の錬金術の魔術陣を使って生産スライムを作る。通常の生産スライムをこちらにして、新素材を開発するスライムを新素材スライムと名付けた。生産スライムは量産し、セレーネの作業を手伝って貰う。生産スライムは、錬金術を使えるようにしているが、それだけしか取り柄がないわけではない。

 金属の成形から魔術薬の調合まで、錬金術以外も命じれば作業を行うようになっている。新素材スライムの方は、逆にその機能を取り除く事になった。基本的に素材を生み出して貰うようにするためだ。

 普段使いはしないだろうという事と勝手に色々なものを作られても困るという事で、瓶の中で命令があるまで待機する事になった。

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