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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
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馬車製造

 二週間後。セレーネは、馬型ゴーレムの四肢の胴体に繋がる箇所を【座標指定】による固定に変更して速度と継続走行時間と消費魔力の計測を行った結果、大きな変化はないという事で、組み立てのしやすさから【座標指定】を利用する事にした。

 そして、次に馬車の試作を始めている。こちらも設計機で設計図を引いてあるので、すぐに作り始める事が出来た。かなり大きな部品なども作らねばならず、苦戦を強いられていたが、それでもしっかりとした形の馬車を作っていた。

 今日はその組み立てである。今回も騎士団が手伝いをする事になる。五時間掛けて装甲以外の組み立てが終わった。


「枠組みの歪みは……なし。床板は……傾きなし。耐久性は……」


 セレーネは床板に乗って跳び跳ねる。セレーネが跳んでも問題ないくらいには天井が高く、床板の耐久性も問題なかった。


「内部の魔術陣と魔力線の繋がりは……うん。こっちも問題ないね」

「内部に入るものは軽量化するんだよな? 嬢ちゃんも軽量化されるのか?」

「ううん。人は軽量化の範囲から外してる。そもそも人を運ぶ用に作ってないし。そもそも学術都市と私の街の間はそこまで距離ないから必要ないでしょ。そのくらい歩いた方が健康的だよ」

「まぁ、そうだな。それなら普通に馬車を使っても良いしな」

「そういう事。そもそも条件起動が密閉だから、中に人がいたら酸欠になるかもしれないよ」

「なるほどな。軽量化を前提にしての運用となれば、人は乗せられないな」

「そういう事。よし。装甲を着けていくよ」


 内部の確認を終えたところで、騎士団の面々と共に装甲の装着に移る。


「こういう装甲は【座標指定】で着けないのか?」


 装甲を支えているベネットがセレーネに質問する。


「うん。そもそも装甲は重なるところもあるから、色々と干渉し合って、弾ける可能性があるんだ。ちょっと危険。繊細な調整が必要になるし面倒くさい。それならこうして直付けの方がマシ」

「そこは都合良く出来ないってわけか」

「それに【装甲結界】も刻んであるから、防御の面で言えば、大分良い方だよ」

「そうか。なら、これでも問題はなさそうだな」


 【座標指定】を使わない理由を知るための質問だったが、同時に装甲の強度や防御面に関する不安などが払拭されたため、ベネットは満足げに頷いて、作業を続ける。

 そうして装甲全てが着け終わったところで、セレーネは【空間転移】で馬車の上に移動する。そして、そこに馬車用のコアを接続する。


「浮いた?」

「ああ、十センチ程な。予定通りか?」

「うん。輸送用魔動列車と同じ感じだね。車輪は、接地した時の備えね。こうしている状態が、一番馬車への負担が軽いから。【装甲結界】は……うん。起動する。次は内部だ」


 セレーネは【空間転移】で地上に降りて、馬車の内部に入り、入口を開け閉めする。そして内部で魔術が発動しているかどうかの確認を進めていく。


「うん。起動も問題ない」


 魔術陣や魔力線の乱れなどがなかったため、確認せずとも問題はないと分かっていたが、こうして確認を取らなければ万が一があり得る。そこを考慮した故の確認だった。


「よし。次は接続だね」


 馬車から出たセレーネは、【空間倉庫】から馬型ゴーレムの部品を取り出していき、組み立てる。【座標指定】による四肢の固定により、格段に組み立てやすくなっている馬型ゴーレムは、三十分もしない内に組み立てが終わる。

 馬型ゴーレムは、馬車との接続を始める。この接続をセレーネ達が手伝う事はない。何故なら、ここの固定は【座標指定】による接続になるからだ。


「繋がりに問題はない。【座標指定】の便利さが出たかな。馬型ゴーレムの【座標指定】と干渉はしてない。ここも想定通り。このくらいなら干渉はしない感じかな。十メートル前進」


 御者台に座ったセレーネが指示を出すと、馬型ゴーレムが十メートル前進する。その前進には、馬車も付随している。【座標指定】により固定されているためだ。


「ズレ無し。馬車の方にも問題なし。接地もしてないね。それじゃあ、わざと接地させてっと。十メートル前進」


 車輪の状態を確認するために、馬車をわざと接地させて移動させる。すると、車輪は問題なく回転した。馬車に組み込まれた機構により、振動はある程度抑えられている。

 御者台にいるセレーネは、その事を実感していた。


「ここも問題なく機能したね。まぁ、移動中に落ちたとなると、この機構もちゃんと働くか分からないけど。よし。走行試験に移ろう。この前と同じようにやるよ。壁沿いを魔力が切れるか止めるまで走って」


 セレーネの指示に従い、馬型ゴーレムが馬車を牽いて走り出す。浮いた状態での試験となるため、車輪が回るような音は聞こえない。馬型ゴーレムの速度は単体であった時とあまり変わらない。


「速度の変化はないね。まぁ、中に何も入れてないから、馬車だけの重量の問題だけど、【座標指定】で浮いてるから、車輪の摩擦とかは関係ない。空気抵抗も【流線結界】があるから、あまり関係なくなる。馬車の分増えた重量でも問題ないって考えで良さそうかな。

 そうなると、消費魔力とかの諸々の問題も特になさそうかな。馬車にも魔力結晶と魔力吸収機構は付けてあるし」


 セレーネの考えでは問題は一つもないが、実際に見てみなければ分からない事はある。そもそもこの結論も実際に見なくては分からない事だった。

 そのため、このまま走行試験は続ける。前と同じようにカノンが用意してくれた椅子に座り、お茶を飲みながら通り過ぎて行く馬型ゴーレムと馬車から得られる情報をメモに書き込んでいく。


「【座標指定】の設定は見直した方が良いかな。馬型ゴーレムの足が時々浮く」

「馬車の【座標指定】が地面の凹凸で馬型ゴーレムの方が浮いてしまうからですね」

「うん。それでも慣性で進んでいるから、また馬型ゴーレムが地面を掴めれば普通に走る事が出来るけど、ちょっと問題だからね。設定は……接続時に基準が切り替わる形にするのが良いかな。でも、基準を馬型ゴーレムにすると、ちょっと問題が出て来るから……臨機応変に切り替えられるようにする。コアの調整も必要かな。色々と難しいけど」


 次の課題を見つけたセレーネは、記録を続けながら課題の解決のために動く。馬型ゴーレム及び馬車は、最終調整の段階に入った。

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