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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
領主

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ゴーレムの仮組み

 それから一週間が経過した。セレーネは、生産スライムの魔術陣をある程度完成させたため、最適化機で最適化を行っている。

 そのため、本格的に馬型ゴーレムの方に着手し始めた。そこにマリアナが様子見でやって来る。


「一応概要だけは、把握していましたが、思ったよりも大きなものになるようですね」

「もうちょっと小さい方が良いと思う?」

「物資を運ぶ量によりますが、私は良いと思います。問題はこれを置く場所ですね」

「あっ……」


 セレーネは、馬型ゴーレムを置いておく場所を全く考慮していなかった事に気付いた。


「う~ん……野晒しはマズいよね?」

「錆びないという事であれば、特に問題はないかと思いますが、その辺りはどうなのですか?」

「錆止めを使えば良いかな。そもそも、雨の日も使う想定だから」

「なるほど。取り敢えず、整備なども考えて整備場を作りましょう。そこに保管するのが良いかと。正確な大きさが分かり次第、こちらに連絡をお願いします」

「分かった。ひとまず予定では、そのくらいって思っておいて」


 セレーネはマリアナが読んでいる設計図を指してそう言う。そこには大まかの大きさが書かれているが、まだ予定でしかなく、実際にその大きさで確定するかは分かっていない。そのため、まだ設計図のままで完成とするかは決まっていなかった。

 そのため、ひとまずは予定という事で頭に入れるように伝えていた。


「はい。把握しました。スライムの方は完成しそうですか?」


 情報として聞いているが、まだ全てを把握している訳では無いため、こちらの確認もマリアナはしておきたかった。個人の研究とはいえ、領主がやっている研究という事もあり、ある程度は把握しておきたかったためだ。


「まだ最適化中。一応、新しい錬金術の魔術陣としては機能してたから、大部分は完成。これは一応論文にするつもりだけど、ナタリアは微妙な顔してたかな」

「そうですね……こちらの発表は、まだ控えた方が良いかと思います。そのくらい衝撃的な内容ですので。錬金術界隈が大騒ぎになりますよ」

「うん。確かにね。普通は法則を破ろうとは思わないだろうし、法則に囚われると思い付かないだろうし」


 この辺りは、セレーネも自覚していた。本来崩すべきではない法則を崩して、新しい法則を組み立てるというとんでもない馬鹿しかやらない事をやり、成功させているからだ。


「こちらはスライムは個人の研究ですので、総合研究室での発表は強制されません。ですが、ナタリアの判断で発表しても良いのですか?」

「うん。ナタリアなら的確に判断してくれるでしょ? 微妙な顔をしてたから、大分後になるだろうけど。そもそも錬金釜に使えるかは分からないし」

「なるほど? ふむ……ある程度理論がまとまっているのでしたら、私の方にも論文を渡して頂けますか? 私も把握しておきたいので」

「はい。これ」


 セレーネは仮で書かれている論文をマリアナに渡す。自分で読み直すために、一応用意しておいたのだ。


「ありがとうございます。こちらの報告書は、街建設の進捗です。壁は三分の二まで終えており、道路の舗装も始めています。総合研究室の研究棟と役所、月の桜桃の建設も始まっています」

「そういえば、そんな感じだったね。クロと遊んだり、聖域に行ったりした時に見た感じだと分からなかったけど」

「実際にしっかりと確認しなくては分からないでしょう。それと、ナタリアの家も建設中です。一気に進んでいますが、まだ初歩です。住人達のための家の用意が出来始めてからが本番です」

「うん。また報告をお願いね」

「はい。では、気を付けて研究をお願いします」


 マリアナは定期報告を終えて、建設現場に向かう。建設現場の様子を確認する事もマリアナの仕事の一つだからだ。

 そんなマリアナを見送って、セレーネは馬型ゴーレムの試作に入る。セレーネの集中時間が始まる。

 実験室で作るのは大まかな部品だけだ。本格的な組み立ては外でやらなくてはならない。そうしなければ起動試験も行えないからだ。

 大まかな部品を作り、仮組みをして魔力を通す箇所に魔力線を描いていくまでが実験室での作業だ。

 生産魔術で形を整えつつ、同じく生産魔術で溶接していく。


「ふぅ……」

「お嬢様。水分補給を」

「ん」


 カノンに水を飲ませて貰いながら、セレーネは作業を続けていく。熱さによる体力の消耗と喉の渇きがあるが、それだけでセレーネの集中力が途切れる事はない。

 二時間に一回カノンによる強制休憩を挟みつつも、馬型ゴーレムの試作が本格的に始まった。

 試作が始まって二週間。時折、聖域の様子を見に行く仕事はしているが、それ以外は試作を続けていった。

 そうして部品を完成させたセレーネは、外にて組み立てを始める。大型の魔術道具という事もあって、ベネット達騎士団も総動員で手伝う事になった。

 騎士団が部品を押えて、セレーネが手早く固定していく。滑りを良くするための油などで汚れていくが、セレーネは全く気にしていなかった。服の汚れは、カノンが汚れても構わない作業着を用意しているので問題は無い。自分の身体もカノンが洗ってくれるから問題ないという考えだった。


「次はこっちか?」

「うん。首部分。しっかりと押さえておいて。もうちょっと浮かして。行き過ぎ。そこ」


 ベネットが所定の位置で押さえている間に、セレーネが接合していく。


「これ量産するのか?」


 組み立てがかなり大変という事もあり、ベネットはこのまま量産していくのは難しいのではと感じていた。


「まぁ、実際には整備場を用意する事になるらしいから、そこで部品を固定するための道具を作る感じかな。今は仮組みだから」

「なるほどな。それならまだ何とかなるか」


 そんな会話をしながらしっかりと組み上げた馬型ゴーレムを、セレーネが隅々まで見ていく。


「…………う~ん……この辺りが干渉するなぁ……」


 実際に組み上げて、部品と部品が接触する可能性が高い場所を改めて確認する事が出来ていた。コアを入れるハッチなども、しっかりと調べていく。そうして調整するべき箇所のメモを取っていった。


「魔力の通りは……こことここで途切れてる……こっちもか。大型だとズレが大きくなるなぁ。ここも調整っと……内部は、こんな感じで大丈夫そうかな。ベネット、装甲持って来て」

「おう」


 騎士団達が装甲を持ってくるので、セレーネがしっかりと固定していく。


「セレーネ様。こちらの装甲が他の装甲に干渉して装着出来ません」

「セレーネ様。こちらもです」

「う~ん……ちゃんと合わせて作ったつもりだったけど、合わせただけだもんなぁ。そこがハマらないと次の装甲が着けられないから、全体的に調整が必要だね。よし! 解体するよ~」


 セレーネの号令に騎士団の面々の表情が固まった。唯一固まらなかったのは、ベネットだけだった。


「ぼさっとするな。嬢ちゃんが解体するために支えるぞ」

『うっす……』


 騎士団の協力を得て、セレーネは仮組み状態の馬型ゴーレムを解体していく。まともに起動試験が出来る状態ではなかったため、ここから先には進むことは出来ない。そのため、ここからは調整後になる。

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