新しいスライムの構想
王都で馬車の観察をし、カルンスタイン領内でも、ベネット達が乗っている馬の観察をしていきながら一週間が経過した。セレーネは、ミュゼルに手伝って貰い、撮影機で馬の動きを写真に撮る。
更に、セレーネが開発した映像撮影機能を付け加えた撮影機を使って映像として残す事で、いつでも見返す事が出来るようにもしていた。
セレーネは今日も映像を見返して馬や馬車の動きを確認していた。そこにはカノンの姿がある。マリアと交代交代で担当する事になったが、それでも頻度はそこまで高くなかった。
「う~ん……うん。馬車の方は魔動列車を作ってた経験が活きそう。なるべく頑丈に作っておこうかな。馬車は幌じゃなくて密閉式でいくかな。そうしたら、条件起動の条件にする事が出来るし。問題は動力になる馬型ゴーレムか……う~ん……良し!」
セレーネは机に紙を広げて設計図を描いていく。
「大体の形を仕上げたら設計機に読み込ませて、しっかりとした設計図にして貰えば良い。細かいところは気にせず、大まかに描いていこう」
セレーネが開発した設計機に大まかに描いた設計図を読み込ませれば、更に細かく作られた設計図を描いてくれるようになる。必要なのは
、セレーネが描く完成図だ。
鳥型ゴーレムよりも遙かに複雑になるので、設計機に頼るのが一番良かった。ある程度描いたところで、セレーネは設計機に読み込ませて設計図を描いて貰う。基本素材を設定しておく事で、これが金属製の魔術道具である事を読み込んだ設計機が稼働していく。
「これで放っておいて大丈夫。それじゃあ、別のゴーレムを考えてみようかな」
「まだゴーレムを量産されるのですか?」
「うん。スライムは思い付かないし、新しい魔術を開発しようにも、それも思い付かないし。何か良い考えある?」
「私に言われても困りますが。属性魔術の研究は如何ですか?」
「属性魔術の研究かぁ……闇魔術の複合は難しいって分かったしなぁ。多重魔術陣にすれば割と簡単に複合魔術に出来るって分かったけど。結局うそれを活かす方法も思いつかないし」
「それであれば、他の複合魔術は如何でしょうか?」
「う~ん……単純な属性の複合じゃないものを考えてみるのが良さそうかな。生産魔術とかに出来るかもしれないし。パッと思いつかないけど」
セレーネは新しい研究内容を考えていく。カノンが出した複合魔術や新しいゴーレム、新しいスライムなど多種多様なものを同時に並行して考えていく。
「う~ん……どうしようかな。う~ん……私だけが使う用ならいくつか思い付くかな」
「【空間転移】などと同じく自身が使う事だけを考えた研究でも良い気がしますが」
「まぁ、自分で材料を買ったりすれば良いか。ゴーレムは総合研究室の研究の一環に出来たけど、こっちは個人研究って事にして研究しよう」
セレーネはカノンを連れて、自分の実験室に移動する。そこで黒板に思いついた研究内容を書き込んでいく。カノンはそれを部屋の入口から見守る。
「新しいスライムの研究ですか」
「うん。ちょっと特殊なね。掃除とか色々としてくれるスライムを作ったけど、今回は本当に専門的なスライムかな。鍛冶とか金属の成形とか魔術薬の調合とかをしてくれるスライム。構想としては前からあったけど、それをしっかりと作ってみようかなって。生産魔術を上手く利用して複合魔術とかも含めれば良い感じで出来るようになるんじゃないかなって」
セレーネは、複数の黒板にどんどんと自分の考えを書き込んでいく。普段はメモ帳などにしている事だが、今回はやる事が多い事に加えて、書き込む内容が多いため、全体を分かりやすく見やすいようにするために黒板を利用していた。
「スライムが体内で調合などをしてくれるという事でしょうか。そのような事が可能なのですか?」
「う~ん……ちょっと厳しいけど、内容的には錬金釜みたいなものなんだよね。不定形の錬金釜かな。うん。そうだよ。錬金釜だ!」
新しい黒板に飛びついたセレーネは、夢中になって書き込んでいく。
「錬金術の真髄は、物質を組み合わせて新しいものを作る事。必要なのは、錬金釜の魔術陣と組み合わせる上で都合の良い形と熱。それが釜の形だった。でも、スライムの身体に取り込んで調合するのは、割と言い形だと思う。取り込むという点で言えば、スライムの特徴にも一致する。温調スライムの要領で熱の操作も可能。温度は上げようと思えば、いくらでも上げられる。
うん。後は上手く錬金釜の魔術陣を取り込ませるだけだ。これを上手くすれば、錬金術で鍛冶も魔術薬も出来ると思う。うん。うん。よし。ちょっと大きめのスライムになるかな。まぁ、そこは仕方ない。寧ろ、大きい方が都合が良い。その方がいっぱい素材を混ぜ込める。
いや……でも、結局スライムが取り込むって事は内部に溶かし込む事になる。大きさは関係ないか……いや、大きさは必要になる。結局、錬金術において素材とした物質に別の物質を掛け合わせるって手段を使う事もあるし、それが大きなものに対するものならスライムの大きさが必要になる。いや、それは錬金釜でやった方が良いか。スライムはあくまで補助的な役割と考えて小さいものを作って貰うようにすれば良い。
本職と並べようとは思わない。その領域に到達させるのは、無理だから。本職は発想力とかがものを言う訳だし。それで考えれば、最低限の大きさだけでも良い。うん。大きさに拘る必要はない。重視するべき点は、錬金釜の魔術陣を上手くスライムに取り込ませる事。
うん……ああ、でも、これだと魔術薬は普通に調合した方が品質的には良くなるかな。粗悪な魔術薬にはならないだろうけど、効能的になぁ。う~ん……悩みどころ……いや、逆か。ここをどうにかする事が課題だ。魔術薬に拘る必要はないけど、ここら辺を作れるようになるのとならないのでは差が大きい。
これが魔術薬以外にも繋がってくる。うん。ここまで出来たら、今度は魔術陣の構築だ」
セレーネは、自分の周りにいくつもの魔術陣を出して、新しい魔術陣の構築を始めた。カノンはその様子を見て微笑みながら、黒板の写真を撮っておく。仮に消してもこれで記録が可能だから。
(さて、集中しているから、夕食まではこの状態が続くかな。お嬢様が頭を酷使し過ぎない段階で止められるようにしておこう。あの数を処理するのに情報処理魔術を自分に使っているわけだし)
カノンは、セレーネの安全を第一に考えて、セレーネの様子を見守っていく。そんなカノンに見守られながら、セレーネは魔術陣の構築を進めていく。




