次のゴーレムの構想
一週間後。セレーネの傍にはマリアがいた。カノンから引き継ぎの資料を受け取り、セレーネが何をするのかやセレーネが仕事をしている間に何をすれば良いのかなど、事細かに情報が載っていた。
それらを把握して、直前の引き継ぎなどもしてから今日初めての入れ替わりである。
領主としての仕事は、基本的に確認事項を確認していくだけなので、現在はあまりやる事はなく、セレーネの研究を手伝うだけだった。
「今日は何をするの?」
「鳥型ゴーレムの調整と新しいゴーレムの試作かな。新しいスライムも欲しいけど、どういうスライムを作るかが思い付かないから保留してるかな。後は魔術薬も新しいものが作りたいけど、今は思い付かないから、ゴーレムの方にするって感じかな」
「へぇ~、どんなゴーレム?」
「荷運び専門。倉庫を整理してくれてるゴーレムとは違って、荷物を運ぶ専門。大型のゴーレムになるかな」
「?」
マリアは、セレーネが考えているゴーレムの構想を理解するために少し考え始める。
(荷運び……荷物整理とかをしてくれる子達とは違って、荷物を規定の場所に運ぶ輸送を担うって事なのかな? そうなると魔動列車みたいな形なのかな。セレーネは生き物を模して作っているから、もうちょっと旧式かな)
マリアは、そうして答えを見出した。
「馬車?」
「あっ、正解。正確には馬車一体形の馬型ゴーレムかな。魔動車っぽい状態にさせておくと動き出しが分からないかなって思って」
「ああ、なるほどね。緊急停止機能を付けるとしても、そもそも動き出すという事を周りに伝えられるようなものにしておいた方がより安全性を確保出来るって事になるもんね」
「うん。魔動車による事故とかもあるからね。その事故を減らせると良いなって感じ」
「どこで使うの?」
「ここと学術都市の物資のやり取りをサポート出来れば良いなって感じ。魔動車を使っても良いんだけどね。大型の物資搬送用魔動車は値段がね……自作しても良いんだけど、それだと色々と問題があるから、ゴーレムで誤魔化す!」
「ああ……内部機構の権利問題とかね。論文とかの他にも権利申請されていたら面倒くさい事になるよね。まぁ、セレーネの魔術とか諸々もそういう権利申請されているんだけど」
魔術道具の機構など様々なものを自身の権利として申請する事が出来る。セレーネの場合は、ナタリアなどがしっかりと申請を出している。
「お金払えば使えるけどね。それで沢山お金入ってるし。まぁ、そんな感じでゴーレムで作れば人件費も節約出来るしね。整備の人員が必要になるけど」
「まぁ、そうだね。整備員を雇う必要はあるだろうね。育成も含めてだけど。ゴーレムの整備って結構難しいから」
マリアの【空間倉庫】にいるゴーレムは、マリア自身で整備している。セレーネから整備方法を習ってしっかりと整備している。そこから整備の細かさを理解しているので、その育成には時間が掛かるだろうと考えていた。
ゴーレムを事業の一環として利用するとなれば、整備はなるべく完璧にしたいので、整備内容をしっかりと把握するまで時間を掛けなくてはいけない。適当な整備で事故を起こさせる訳にはいかないのだ。
セレーネは、鳥型ゴーレムの最終調整を終えて、新しいゴーレム製作のために設計図を引いていく。マリアはそれを後ろから覗き見ていた。
「完全に一体化するわけじゃないの?」
「うん。あくまで馬車ってコンセプトは崩さないようにっていうよりも整備のしやすさを上げるためかな。馬部分と馬車部分で分けた方が整備のしやすさは上がるでしょ?」
「まぁ、そうだね。馬の身体の構造は理解してる?」
「うん。カノンに馬の図鑑を買って貰ったから。馬の絵をいっぱい見たし大丈夫なはず。実際に馬の動きとかも見た事あるし」
「う~ん……確かにセレーネならそれでどうにか出来ちゃいそうだね。大きさの想定は?」
「普通の馬と同じくらいかな」
「牽引する馬車の大きさと重さは?」
「あぁ……そっか。重さは想定してなかったかも。馬車そのものの重さというよりも貨物を載せた状態での重さでしょ?」
「うん。ゴーレムがどれだけの力を出力すれば良いのかの計算も必要になるかなって感じ。倉庫整理をしてくれる子達は、かなりの重さを持つ事が出来るけど、セレーネが考えている馬型ゴーレムがどれだけ力を出せるかが運搬に使えるかに繋がってくるよ」
マリアの意見を受けて、セレーネは自分が考えていなかった事に気が付いた。こういう時、カノンの場合は入口に控えて、セレーネが相談した時に答えるという事をしているが、マリアの場合は元々妹のようにセレーネと接していたので、こうして近しい場所にいるので意見を出しやすいのだった。
カノンは、外に耳を向けて警戒している事もあるので、基本的に扉の近くで待機する事が多くなってしまう。マリアには、そこまでの聴力はないので、セレーネの近くにいる事で護衛をするという形だった。
「いっそ馬車も動力を付けようか」
「それって、魔動車で良くない?」
「う~ん……むぅ……」
根本的な問題に直面したセレーネは、隣にいるマリアに抱きついて唸る。マリアはそんなセレーネの頭を撫でながら、解決方法を考えていく。
「あっ、そうだ。軽量化は?」
「ああ、そっか。馬車とその内部に軽量化を与える事で、重さの問題は解決出来るか。なるほど、頭から抜けてたよ。これなら作れるかな。馬車は閉鎖空間になるから空間魔術で色々と出来そうだし……うん。よし! マリア! 馬車を見に行こう! もう一度しっかりと見ておきたい!」
「えぇ~……ちょっと待ってね」
マリアは有線式遠距離連絡用魔術道具である通話機を使ってマリアナに連絡する。セレーネの独断で行く訳にもいかないので、マリアナにはしっかりと報告しておかなくてはいけない。
そこで許可取りを済ませてから、王都に向かい馬車を学んでいく。魔動車の普及で使われなくなり始めているが、それでも王都にも馬車は存在したので、しっかりと学ぶ事が出来ていた。
馬車の動きや馬車を牽引する時の馬の動きなどから、馬型ゴーレムへと繋げていく。




